桜目指して！　入学試験｜リアクション

桜目指して！　入学試験

☆試験開始！

　試験中の麗仁の担当は、ストップウォッチ係だ。
「問題用紙は合図をするまで裏返さないように。それでは合図をしたら試験を始める」
　桐島義弘先生の声に、絶対に測り間違えてはならないと緊張しながらストップウォッチを見つめる麗仁。
「用意、始め！」
（いつもよりも開始の合図で鼓動が大きく聞こえるわ。他の受験生のみんなも同じ感じなのかしら……？）
　胸のドキドキを抑えながら、衿花はざっと問題に目を通す。
　特に悩むものはなさそうだ、と問題を解き始めた。

（……あっ、ここ、お気に入りのカフェ（店員さんの制服がかっこいいのだ！）で勉強したところだ。うむうむ）
　制服大好きなパトリシアは、問題を制服の記憶と共に覚えていた。
（はっ、ここは教科書の隅っこに軍服お兄さんを落書きしたページだね……！　覚えてるよ……！）
　気分よく回答用紙を埋めていく。

　桜は、過去問と同じ問題が出ていてラッキー、と喜んでいた。
　しかし次の問題には逆に一瞬フリーズした。
（何これ……話が全然違うじゃない！）
　と嘆いたが、すぐに自分の勘違いに気づいた。
（落ち着かなきゃ）
　よく考えてみればなんてことはない問題だった。
　だが、答案用紙を埋めても、不安なので何度も答え合わせをしたり、名前の書き間違いがないか神経質にチェックしたりを続けた。

　麗仁はストップウォッチを手に受験生の真剣な姿を見ていた。
　ちょうど1年前の自分の受験を思い出す。
（どうしても寝子高に来たかった僕。そのために必死で勉強して、試験本番中も必死だった）
　念願叶って寝子高生になった今、毎日がとても充実している。
（本当にこの学校に来たいと思っている受験生みんなが良い結果を出せますように）
　心の中、密かに祈った。
　ストップウォッチの時間は刻々と終わりに近づいていく。

「そこまで！　鉛筆を置いて」
　怒涛の試験が終わった時には、桜はすっかり疲れ果てていた。
「終わった～！」
　パトリシアが伸びをし、帽子を取り出した。
（後は発表を待つばかりね）
　衿花は、そんな周りの様子を眺めながら考えていた。

　受験生が帰った後の教室をチェックし忘れ物の確認を終えると、麗仁はバイト代を受け取った。
（人の役に立てた後に給料をもらうと、言い知れぬ達成感があるなあ）
　新入生たちが入学してくるのがいまから楽しみだ。