Extension round
寝子島に広がった感染は、三日経った今でも尚、その勢いを止めていない。
島を埋め尽くさんばかりに、鼠算式に増え続けた感染者達。
それらは次の標的を探すべく、虚ろな目を周囲へと向けながら寝子島内を歩きまわっていた。
そんな中で、一部の生存者達はこの三日を生き残り、寝子島高校屋上で来るはずであったヘリを待っていた。
だが――そんな彼等の視線の先で、ヘリは無常にも高校敷地内の第2グラウンドに墜落していた。
原因こそ分からないが、それでも彼等にとっての希望は目の前で打ち砕かれていたのだ。
――このままここに居ても助けは来ない。
彼等は屋上から市街へと出る為、高校からの脱出を決意する。
「ったく、キリがないねぇ!」
高校の敷地内から道路に到達した不良風の女生徒が、近くで感染者に対応している、共に逃げてきた寝癖を付けた男子生徒に声を掛ける。
生存者達にとって唯一幸いであったのは、墜落時の音に引き寄せられる形で感染者達がそちらに向かった事。
そのおかげで校舎内からも多くの感染者達が姿を消しており、生存者達の何名かは既に脱出に成功していた。
「待って、まだ一人逃げ遅れてる!」
自身に迫った感染者を校内から持ち出したモップの柄で突き飛ばし、男子生徒がその視線を背後に向け、女生徒にも聞こえるように声を上げる。
――遅れて逃げた生存者の一人が、感染者達に囲まれている姿を伝える為に。
「っ! 前を向きな、バカ野郎!」
再度視線を背後に向けた事で、男子生徒は先ほど突き飛ばした感染者が近づいてきた事への対応が遅れる。
だが――感染者が襲うよりも早く、女生徒は手に持った木の棒切れで感染者の頭を殴打し、体ごと地面に叩きつけていた。
「ごめん、助かったよ……」
「まだ感謝にゃ早いさ。タダでさえ、逃げ切れちゃいないんだからね」
起き上がれないように、意識を失った感染者の頭を踏みつけながら、女生徒は近くの民家を指差し先に逃げた者達との合流を男子生徒に促す。
「でも、あの人は!」
「あたしとあんたが近くの家に逃げ切れるのと、あそこの奴を助けた上で三人で逃げ切れるのと、どっちの確率が高いと思う?」
なお助けようと口にする男子生徒に、女生徒はその一言を冷静に口にする。
――そんな事は分かっている。だからと言って、簡単に切り捨てられるものではない。
だが、無常にも大きく聞こえた悲鳴は、それが既に手遅れな事を二人へと伝えていた。
「こいつが答えさ。分かったんならさっさと逃げるよ、このままじゃ連中がこっちに来ちまう」
「……わかったよ。絶対、逃げ切ってみせるから!」
他人を心配するよりも、今は生き残る事を選ぶように。
ただきつく口を閉じ、決意だけを持って男子生徒は他の生存者が待つ家屋へと走り出す。
「……すまないね」
――これがどちらに向けられたものかは分からない。
本心は誰にも分かりはしないが、聞こえる悲鳴を背に、女生徒も全力で走り出していく。
散り散りになりながらも生存者達は高校からの脱出を果し、付近の民家への避難を成功させる。
そして――彼等にとって最後の希望となる声が、上空から聞こえていた。
寝子島高校の教室内で広げられたゲーム――マイスターは静かに光を放っていく。
escape from deadの拡張版【Survivors】
それがこのゲームの名前であり、高校内から逃げ切れた生存者達は今度は脱出の為の船に乗るべく、多くの感染者達を突破し寝子ヶ浜海浜公園を目指すことになる。
隣の誰かを利用するのか、それとも信じた上で協力するのか。
【Let the game begin(さぁ、ゲームを始めよう)】
まずはご覧いただきありがとうございます。
ガイドで使用させていただいたイラスト、及びイメージとして登場していただいた桜崎 巴様、日暮 ねむる様にはこちらで感謝を述べさせていただきます。
ガイドに登場しているマイスターとNYARO区分の詳細については各リンク先をご参照ください。
以下より、本シナリオにおけるPCの状況を整理します。
【1】ボードゲーム「escape from dead拡張版:Survivors」(以後Survivors)の世界に、
PCの「意識」が引きずり込まれました。
PCの「身体」は、元の世界で眠っています。
【2】PCの意識は、聞こえてきた声から「Survivors」のルールや自分の状況を把握しました。
PCの身体は、元の世界と酷似した「身体」が再現されています。
身体的な障害を持っているPCは、望んだ場合それらの障害が無い状態で再現されることも可能です。
【3】「Survivors」のプレイヤー兼キャラクターとして、行動してください。
ゲームが完結すると、PCは元の世界、元の自分に戻ります。
【4】拡張版としては、同タイトルシナリオの違った結末を迎えた最終ラウンド終了後の状況となりますが、
直接の繋がりはありませんので、そちらを読まずとも問題はありません。
▼「Survivors」の基本
参加PCの意識は、ゲーム開始から終了までの間、配役そのものになっています。
参加が確定したPCのプレイヤー宛てにメールにてお知らせします。(詳細は後述)
配役
1種類【生存者】
目的
手段を問わず、多くの感染者の中を突破し、脱出の為の船がある寝子ヶ浜海浜公園に到達する
NYARO区分
区分:C
▼「Survivors」の舞台
ゲーム用に再現されたシーサイドタウン西側(以下を参照)
※各グループの初期位置はマップ上に記載された位置(第一~第五)から
※各ブロックの色に応じて、ブロック内の感染者数及び危険度を設定(後述)
※寝子島街道には放棄車両が多数有り
※C3はマップ上でD3と途切れているが、実際には砂浜が繋がっている状態として扱う
※電気の供給はほぼ全て止まっている状態
(大型店舗・キャットロード内のみ、添えつけの発電機により電気の供給有り)
※商業店舗は寝子島街道沿いかキャットロード内(A2・B2・C2・D1・D2・E1)
にのみ存在するとし、それ以外のブロックでは民家のみがある状態とする
※店舗情報
A2:小型食料品店中心
B2:衣類・装飾品店中心
C2:雑貨・工具店中心(大型ホームセンター・薬局有り)
D2:衣類・装飾品・食料品店中心(大型スーパーマーケット有り)
D1・E1:全ての店舗有り(キャットロード内)
▼「Survivors」の進行
・PCは「ラウンド」ごとに行動
・ラウンド数は全6回(シナリオの状況によっては早期終了の可能性有り)
・ラウンド数の増加はできない
・ラウンド時間は、午後18時~午後21:00分まで(1ラウンド30分間隔)
・1~2ラウンドまでは光源無しで視界が確保出来るが、3ラウンド開始と同時に日が落ちる為、
以後のラウンドでは光源が無い場合は視界の確保が困難になる
配役行動
・ラウンド内で移動と行動を繰り返し、最終ラウンド終了までに海浜公園(E3)に到達する
・全てのグループがリタイアした時点でラウンド問わず強制終了
・グループは三人で一組とし、最大五組まで(表記は第一~第五グループ)
・各グループ共通として、初期位置(マップ内第一~第五)内の一軒家からスタート
・取得アイテム以外にもアイテムを自作する事も可能(後述)
▼「Survivors」の勝利条件
判定勝利:グループ内で2人以上が未感染状態でE3に到達
完全勝利:グループ内で2人以上が未感染状態で、尚且つ未感染状態の要救助者(後述)を
1人以上連れた状態でE3に到達
▼ラウンド内での行動
移動と行動に関する注意
どちらも同時にラウンド内で行えるが、ラウンドの規定時間(今回は30分)を越える行動を行った場合、
処理の優先順位は【行動】とする
この為、移動を優先させる等のアクションが無い場合、時間が掛かる行動は移動をせず継続する可能性がある(アクションの不採用)
移動
・1ラウンドに着き、1ブロックのみ移動可能
・移動時は現在地から縦・横のブロックからどれかを指定し、移動を行う
(例:A1の場合は、B1・A2のいずれか)
行動
・移動と同時に行動可能
・NAYRO区分:Cの為、PCを含め対象を問わず、ほとんどの暴力行為を解禁
・アイテムの取得や作成、家屋・店舗内の捜索、感染者(後述)との戦闘等はこちらに含まれる
・街道にある車両の運転及び操作は、免許を所持している18歳以上のPCのみが可能
但し、街道内に多くの車両が置かれている為、まともに走る事は難しい状態
▼感染者及び感染率
感染者(敵NPC)
・ほとんどは徒歩~競歩程度の速さで歩き、一度捕まれると簡単に引き剥がせない程に力は強い
※一部の感染者は走る事が可能(後述の初期配置に位置を記載)
・五感は働いており、生きているPC・NPC(感染・未感染関わらず)を狙う
・噛まれる、引っかかれる等の血液感染により、PCも感染する可能性有り
・1PCに付き、素手の状態で1人、近接武器がある状態で2人まで対応可能
それ以上に囲まれた場合は、負傷(感染)・死亡によるリタイアの可能性が高くなる
※小・中学生PCは素手の状態では対応出来ず、武器を所持している場合のみ1人だけ対応可
※遠距離武器はこの条件に含まれず、発見されていなければ弾が有る限り一方的に攻撃可
ウィルス感染率
・感染後はラウンド進行と共に感染率が上昇する
・感染が進行すると、アクションの不採用及び感染者として裏返る可能性有り
・要救助者(後述)のNPCにも適用される
※進行目安(感染した時点から1ラウンド毎に35%増加)
0~39% :アクションに影響なし
40~79%:戦闘及び特殊行動の一部アクション影響有り
(感染進行により、体の自由が利かなくなる為)
80% :特効薬の効果判定限界
81~100%:アクションの全不採用、及び感染者として行動開始
(この時点でプレイヤーとしてリタイア判定)
感染者の初期配置情報
・舞台マップの色分けにより、危険度と感染者数を設定
緑:危険度少・感染者数10~50(走る感染者無し)
青:危険度中・感染者数100~200(走る感染者は約半数)
赤:危険度大・感染者数300以上(走る感染者は半数以上)
・ゲーム進行・プレイヤーの行動により、感染者の位置状況は変化する
・各グループの初期位置となる一軒家には感染者無し
・ゴール地点の海浜公園内(E3)は、防疫対策隊が制圧している為、感染者がいない状態
・大型店、及びキャットロード内は【赤】の状況が適用され、一般的な家屋及び店舗では【緑】が
適用される
・寝子島街道には多くの感染者が配置されており、通常の方法では突破は難しい
・駅前(E1)の感染者数は計測不可であり、こちらから他ブロック内への流入の危険性有り
要救助者情報
各NPC共に、ブロック内を捜索する事で発見可能
捜索時には時間が経過し、手段次第では捜索失敗もしくは捜索のみでラウンドが終了する
合流時の経過ラウンドに応じて状況が変化
1~2ラウンドまでは未感染状態、3~4ラウンドで感染状態(ここまで救助可)
5~6ラウンドでは感染者側になる為、救助不可
合流後は、PC側から指示を出す事で移動及び行動が可能
・要救助者1
七夜 あおい(キャットロード内)
他の生徒達と逃げ込んだが、現在の生き残りはあおい一人のみ
キャットロード内の店舗(D1・E1のどちらか)に隠れている
ろっこんは既に使用済みの為、ゲーム中では使用不可
・要救助者2
桐島 義弘(線路周辺:C2)
生き残りの生徒達の一部を海浜公園まで逃がした上で、逃げ遅れた他の生徒を探す為に戻ってきている
現在は線路周辺の家屋を捜索中
・要救助者3
北風 貴子(家屋内:A3)
義弘とは別に生徒達を誘導する形で行動していたが、現在の生き残りは貴子のみ
ブロック内の家屋内に隠れている状態
▼アイテム関連
※1PCに付き、種類を問わず所持出来るアイテムは最大3つまでとする
※重いものや動きを阻害するような物等を複数持ち歩く場合は、移動や行動に
制限や行動不可と言ったデメリットが発生する
・初期所持アイテム
学校内から持ち出したアイテムを1つのみ所持可能
持ち出せるアイテムは【南・北校舎内に存在する物】に限定し、
特効薬は初期所持不可
ろっこんに必要なアイテムについては、ゲーム中に取得出来ない物
に限り、こちらで所持可能
・取得アイテム
舞台内にあるであろうアイテムであれば、制限無しで全てが取得可
但し、場所に応じてアイテムを取得する為、明らかにその場に無い物については取得不可
(例:民家であれば包丁やライター等、店舗であればそれに応じたアイテム等)
拳銃のみ、交番があるB2に存在する警官の感染者のみが所持しており、残弾は必ず5発のみとする
(警官の数は最大で5人まで)
※取得したアイテムに応じて自作アイテムも作成可能
※自作アイテムに関しては、包丁+棒切れ+テープ(クラフトやガム、ダクト等)を組み合わせ簡易の槍、
等と言った形で作成可能
※自作アイテムは完成後、一つのアイテムとして所持する
・特効薬
特効薬は、薬局が配置される二つの箇所で入手可能(ゲーム中で4個のみ存在)
D1:キャットロード内薬局で、2個取得可
C2:街道沿いの薬局内で、2個取得可
※特効薬(使いきり万年筆型注射)
感染率80%までなら、注射器内の全ての薬を投与する事で未感染の状態に戻す事が出来る
但し免疫は出来ないので、使った後に血液感染があった場合は感染有り
薬の半分を使用する事で感染率を下げる事は可能だが、未感染状態には戻らない
▼配役の告知方法
各PCの配役は、参加申込み期限(シナリオガイド公開から49時間後)から、
12時間以内にプレイヤー宛てにメールにてお知らせ。
参加申し込み期限で定員に達していない場合は、あとから参加したPCに対して、
参加後24時間以内にメールにてお知らせ。
▼各配役の告知内容
生存者(全PC)
・グループ(第一~第五)のどれに配属されたか
・配属されたグループの自分以外のPCの名前
▼その他注意
※今回のシナリオは拡張版という事で、前回の持久戦から突破戦に変更されています。
マイスターの共通設定として他PCを騙す事は許可されますので、それらを理解した上で
PL同士仲良くお楽しみください。
※コメントページの使用が推奨されます。
相談や相手グループへの探りあい等、シナリオ外でも楽しんでいただければ幸いです。
※GAの利用は可能ですが、GA時であっても相手を騙す事は許可されます。
GAを組む場合には騙されることもあることを理解した上で、PL同士は仲良くお楽しみください。
※今回のゲームでは、ろっこんの使用が【1度】のみ許可されます。
ゲーム世界である為、人前やひとを対象にしても能力が減衰することや未発動になる事はありません。
※ろっこんの効果範囲は、最大で1ブロック内が限界となります。
※自作アイテムの一部(犯罪等で使用する危険物、らっかみにおける日常にそぐわない危険物等)を作った事や銃を使った記憶は、全てゲーム終了後に必ず消去されます。
※今回はNYARO区分:Cの為、男女の区別なくある程度の暴力行為はリアクションに反映されます。
それらを覚悟の上で、ご参加をお考えいただきますようお願いいたします。
以上が今回のシナリオ設定です。
行動等の書き方は、下記サンプルを参照いただきますよう、よろしくお願いいたします。
それでは、よろしければご参加をお待ちしております。