何でも屋を営む
佐藤 敏夫は、駅前のベンチで休憩をとっていた。
「いやー、今日も暑くて嫌になるなあ」
午前中にくらべ空は薄曇りになってきたが、
日が照ったあとに湿気がまじるとじめじめ不快な暑さになる。
敏夫は夏の暑さが大の苦手だ。
水滴のつくほどキンキンに冷えた缶コーヒーでさえ、
この暑さを吹き飛ばすには至らない。
動くのも億劫になってぼんやり雲の動きを眺めていた時、
敏夫はぐにゃりとあたりの景色が歪むのを感じた。
「なんだあ、今のは」
とうとう暑さが体にきたのだろうか。
涼しい場所に移動しようと敏夫が足に力をいれた途端、
履いていた靴がつるーっと横滑りしてしまった。
砂利がしかれているわけでもないのに、
歩道のアスファルトは摩擦をうしなっていて踏ん張りがきかない。
まるで氷上に立たされているような感覚だ。
異変が起きているのは歩道だけではない。
「おわっぷ!」
バスのステップを降りようとしていた男性が足をすべらせ、
スピンを決めながら噴水に顔面ダイブ。
制御を失ったおばあちゃんの手押し車が男性の足をひいて遠ざかっていき、
ついでにカップルの片割れ・イケメン彼氏をかっさらっていく。
そして水着の売りつくしフェアをやっていたデパートの催事場から
クラッシュ音が聞こえたかと思うと、女性の甲高い悲鳴があがった。
「サイテー! どーしてくれんのよっ!」
「ち、ちがう、手……もとい足がすべったんだ! 俺がそんなことするわけ……!」
「誰か警察呼んでー!」
「誤解だああああ!」
なんて叫びが聞こえてくるからには、よからぬ事が起きたのだろう。
屋内外を問わず、あらゆる床面がすべりやすくなってしまったらしい。
あちこちで人間同士の玉突き事故が起こり、町中がパニックになっていた。
「……まるで人間ビリヤードだなあ」
一部始終を視界におさめながら、敏夫はコーヒーの残りを一気に飲み干す。
観察するうち、床面には「すべる床」と「安全圏」があることがわかった。
床のすべらない安全圏ではいつも通り人が歩いていて、
街でおこっている騒ぎを「何が起きてるんだろう」と不思議そうに眺めている。
安全なところを探して歩くようにすれば、少しは被害を抑えられるかもしれない。
敏夫は缶を握りしめ、苦笑まじりにため息をついた。
――さーて、まずはどうやって立ち上がろう。
ガイドをご覧いただき、ありがとうございます。
◇どんなシナリオ?
神魂の影響で、地面や廊下がつるつる滑るようになっちゃった!
そんな状況での珍プレー好プレーを楽しむシナリオです。
神魂の影響は日が沈むまでには自然に消滅します。
それまでの短い間ですが、存分に氷上気分をお楽しみください♪
◇すべるエリアについて
島のいたるところにできた「つるつるすべるエリア」では、
まるで氷の上のように踏ん張りがきかなくなっています。
また人間だけでなく、上に置いてあるものがふとした衝撃で
すべって動いてしまうかもしれません。
「すべるエリア」と「すべらないエリア」は見た目だけでは区別がつきませんが、
だれかが歩いてみて平気だった場所=セーフゾーン
という風になら見分けることができるでしょう。
◇起こるハプニングの一例
・バイト中にお客さんにジュースをバシャー!
・坂道でブレーキが効かず川にドボン!
・勢いよくこけた拍子にランドセルの中身がポーン!
といった事が起こるかもしれません。
・校庭の端から端まで滑ってみる
・おもいっきりヘッドスピンを決めてみる
みたいに状況を楽しむこともできます。
◇ミッション
・桃井 かんなちゃんが、仕事中の母親に頼まれて書類を運んでます。
「お母さんが忘れ物しちゃったんだってさ。オトナなのにね」
なんて言いながらトコトコ歩いていきます。
・以下の行程で動いてるので、途中で出会ったら助けてあげてください。
1.自宅の旧市街(マップK-4)から寝子島駅まで徒歩
2.寝子電に乗って星ヶ丘駅まで
3.星ヶ丘駅からステッラ・デッラ・コリーナ(A-8)まで徒歩
・母親は建物内の結婚式場でフラワーデザイナーをしています。
※このミッションには関わる必要はありません。
自分のトラブルを解決したり、ただ滑るのを楽しんでもまったく問題ありません。
◇そのほか
お色気路線のハプニングはちょっと……など、
避けてほしい描写や展開があればお書き添えください。考慮いたします。
ほかのキャラクターさんと絡む確率が高いお話となりますので、
絶対にこの人と一緒に行動したい! という希望がある方は
【GA】で指定しておくことをオススメします。
なお、当シナリオでは人が大怪我をするような重大な事故は起こりません。
それではご参加、お待ちしております!