「猫又川灯篭流し、かあ」
七夜 あおいは、街の案内板に貼られたチラシに目をとめた。
八月中旬、暦の上では一応秋だ。
でも、そんな実感が微塵もわかないほど、今年は暑い。そんな時節、夜風に吹かれながら、流れていく灯篭を眺めて幻想的な気分に浸る―――
「うん、悪くないかも」
何年前から続いているかは知らないが、粋なイベントだと思う。
あおいはチラシに近づいて、日付を確認する。もう明日だ。ついでに、チラシの下の方に書いてあった「灯篭流しの由来」も読んでみる。
「お盆が終わる時、この世に戻ってきていたご先祖様の霊を送る意味を込めて、灯篭を流すんだ。知らなかったなあ。ん?」
さらに下には、寝子島独自の風習についても書いてあった。
灯篭流しに来た人は、一人で来ている人も、家族やカップル、友人など内輪で来ている人も、必ず一言以上知らない人と言葉を交わしましょう。昔、だれかの霊がなかなかあの世へと帰りたがらなかったということがありまして、困った島の人が知恵を絞って、こんな風習を作りました。こちらの世界の人間同士が言葉を交わしているのを見れば、自分はこの世のものではないと納得して、霊は帰って行くだろうと考えたのです。
「ふうん、困ったご先祖様もいたものね」
あおいは心の中でつぶやいた。あの世に帰ってもらうために生きている人間が気を使わないといけないとは、なんともおかしなご先祖様だ。
「ま、いっか。その日誰かとお話すればいいんでしょ? べつに難しいことじゃないし」
あおいは案内板に背を向けると、街に向かって歩きだした。明日にそなえて、虫除けスプレー、買わなきゃ。
お盆の風物詩、灯篭流し。実は寝子島でも行われていたのでありました。
友人や恋人と非日常な時間を楽しんでいただければ幸いです。
島外からの参加者も大歓迎です! 手先の器用さに自信のある方は、お手製の凝った灯篭を作ってみてもいいかもいれません。あとは、自慢の浴衣姿を披露してみたり……。また、寝子島観光協会ではお手伝いをしてくれるボランティアスタッフも募集しております。(灯篭を作ったり、配ったり。あとは環境のため、下流で灯篭を回収したり)
なお、寝子島独自の風習については、誰とどんな話をするか、希望をアクションに書いてもよし、書かなくても構いません。
では、ご参加、お待ちしています!