クラスメイトの笑い声。カチャカチャ聴こえるこれは、だれかの弁当の箸の音。
落ち着きなく誰かが足裏で、サッカーボールをこねくり回しているのは、窓際の方の席。
ガラガラと誰かが扉を足で開け、入れ替わりに数人の上履きの音が教室を出ていって。
そのたびに教室の空気が、すこし動く。
(ん……、じきホームルーム……か。起き……なきゃな)
眠たげな目をしばたたかせながら、
志波 拓郎が、もぞもぞと身を起こした。いつもよりちょっとだけ、教室の雰囲気がちがうことに、遅まきながら彼も気付いたのだろう。
ちょっと、そわそわした感じ。すこし緊張して、でもどこか、ワクワクもした空気。
今日のホームルームは、委員決めなのだ。
「にゃはっ♪ よだれ志波君、激写☆」
ピロりん♪と聞き慣れたシャッター音がして、ようやく拓郎の意識がはっきりする。ぼんやりと上げた視線の先で、にゃははー、と笑っているのは隣のクラス、1年10組の
七音 侑だ。
「よだれ……垂れて、ないし……」
できるだけ毅然と拓郎は言ってみるが、侑にまじまじと覗き込まれると口許が気になる。
「垂れてない? ホントにー?」
「そんな、ことより……じき、ホームルームだぞ。クラスに戻らなくて、いい……のか?」
「そうそうそう! いよいよ委員決めなんだよにー♪ どう? 9組は学級委員とか、すんなり決まりそう?」
教室の隅で聞いてないようで聞いている、拓郎にはいくつか耳にしている噂もあった。だれかが立候補するとか、しないとか。しかしあまりうかつなことを言うのは、好きではない。
それに、こういう時の
七音 侑は、きっと自分がしゃべりたがっている。
それとなく水を向けると案の定、侑は隣りの10組の様子をぺらぺらと話し出した。
「それでねー、立候補も推薦も多そうで、すごい盛り上がっちゃいそうな予感ー☆ 体育科だから、体育委員とかもやりたがる人多そうだしー。そんでね、そんでね……」
リズミカルな侑の報告をBGMに、また拓郎はにこにこと眠りにつくのであった。
◆ ◆ ◆ ◆
桜の花びらの吹き込む渡り廊下。こちらには南校舎に向かう、2人の先生の姿があった。
どちらもジャージ姿だけど、背が高くてすらりとした方が、
高野 有紀先生。
「カカカカカ! そんなに心配しなさんな! そっちの10組だって、自主性たっぷりな生徒が、いっぱいいるみたいじゃないか!」
出席簿で背中をハタかれ、イテテテと童顔の顔をしかめるこちらは、
浅井 幸太先生。
「うまかったぞ、おにぎり! 後で聞いたらあれは、10組の
八重垣 カナエがウチのクラスに、わざわざ炊き出しに来てくれたんだってな!」
「そうそう、炊飯器を教室に置かせてくれ、と言い出したのもその八重垣なんですが」
と言いながら、どうも浮かない顔の浅井先生。
「なんだい、許可したことを後悔してるのかい?」
「いえ、そうじゃないんです。体育科なんですから、よく食べるのはいいことです。ただ……どうも俺、この数日でなんか……早くもナメられ始めてるんじゃないかって……」
爆笑する高野先生。ばしばしと出席簿で、この青い同僚教師をたたきまくる。
「イテテテ。今日の委員決めも、無事に終わってくれるのかな、って。正直、波乱の予感しかしないんです……」
「なに言ってんのさ! いつもの熱血はどうした、教師浅井!」
くしゃくしゃ、と出来の悪い弟にするように髪を乱暴に撫で、高野先生が同僚の顔をのぞき込む。
「大丈夫! もっと生徒を信用しな! 10組の生徒はきっと、あんたが思ってるよりずっと、自分たちでうまくやるよ。背筋を伸ばして、しゃんとしてりゃいいのさ!」
ドン、と最後に背中をたたき、カカカカと笑いながら去っていく高野先生。
残された浅井先生は、自分の両頬を思いっきり叩き、ひとつおおきく息を吸って。
そう、もう教室は目の前だ。彼の生徒たちが、待っている。
ガラガラガラ……
「さあみんな、席に付け! ホームルームを始めるぞ!」
みなさま、はじめまして。
体育科のリアクション作成を担当いたします、マスターの鈴木二文字と申します。
こちらのシナリオでは今回、1年9組と10組の学級委員と各委員の皆さまを、アクションを通じて決定いたします。よろしくどうぞ。
具体的な詳細につきましては、運営部からの説明に目を通していただければと思います。
各クラスごとのホームルームの進行は、以下のような流れになるかと思います。
・先生からの挨拶
・学級委員の立候補と推薦を募る
・自己紹介&アピールタイム
・投票(無記名の投票用紙に、候補者1名の名前を書く)
・学級委員以外の委員の募集(挙手して簡単に理由を述べてもらう)
・信任不信任の確認(賛成の人は拍手〜、みたいに盛り上げる?)
・先生からの締めの挨拶
投票以外の場面でも、茶々や野次入れ、応援演説や飛び交うワイロなど、「あなたのPCさんならきっとそうする」と思われることを、アクション内でお書き下さい。「投票、関係ないや!」と思われるPCさんだって、ならば白紙で棄権票を投じてみる。それも「あなたのPCを表現する」立派なアクションです。
鈴木は高校時代は、演劇部の所属でした。
体育館のステージから長い発声練習をして、よくバレー部やバスケ部の皆さんには、うるさがられていたものです……。
今回体育科の担当ということで、非常にどきどきしております。
みなさま、どうぞお手柔らかにお願いします。