「うわーっ!?」
ここは星幽塔第一階層、サジタリオの城下町の一角。
どこからか響いた叫び声に、
稲積 柚春と
ウォルター・Bは足を止めた。
「今の声、ワットも聞こえた?」
「うん。何かあったのかなぁ?」
二人が顔を見合わせていると、声がしたのと同じ方から、いくつもの足音が近づいてくる。
「柚春」
何かに気付いたウォルターが、柚春の手を引いた直後だった。
「……甘い?」
柚春の鼻を、甘い香りがくすぐる。それも一種類だけじゃない、まるでお菓子の詰め合わせか何かみたいな……。
その時、通りの向こうから、キーキーと甲高い声が大合唱で聞こえてきた。
次の瞬間、通りにいくつもの小さな影が押し寄せる。
「な……なにこれ?」
「お菓子の……お化け、かなぁ?」
それはウォルターが口にした通り、意思を持って動きまわるお菓子のような何かたちだった。
爆速で先頭を駆け抜けるのは、デフォルメされた人型のビスケット。いわゆるジンジャーブレッドマンのような姿かたちをしている。
その後に続くのは、全身緑の透き通る身体をたぷたぷ揺らした、大きな口をしたお化け。
その後ろに続くのは、丸チョコレートに手足が生えたような奴ら。
手には板チョコを銃っぽい形に割ったような何かを持っていて、そこから茶色い液体を水鉄砲のようにそこら中へぶちまけている。
甘い香りがしているところからすると、液状のチョコレートなのだろう。
最後尾を比較的優雅に行くのは、キャンディの杖をついたキャンディの紳士だった。
現れたお菓子なお化けたちは、めいめい好き勝手に城下町を暴れまわる。
「ま、待て~!」
「う、うちのお菓子がぁ……!」
二人があっけに取られていると、研究者風の男性が一人とコック帽を被った女性が一人、通りの方へ走って来る。
二人とも息は切れ切れで、着ている服はくたくた。よほど慌てて、大急ぎで走ってきたのだろう。
体力の限界を迎えて足を止めた二人が、柚春とウォルターに気付いてハッと顔を上げた。
すがりつくみたいに、残りの体力を振り絞って二人の方へ駆け寄ってくる。
「もしかして、冒険者の方ですか!?」
「助けてください、うちのお菓子たちを止めてくれませんか!?」
「え、えっと……?」
「……とりあえず、話を聞いてみようよ」
なんでも、二人は城下町に住むお隣さん同士。
研究者風の男性は魔道具の研究者で、コック帽の女性はお菓子屋さんを営んでいるらしい。
「自分が研究していた魔道具が、誤作動をおかしまして……」
どうやらその魔道具は、非生物に仮初の命を吹き込んで魔法生物化させる代物だったらしい。
何の因果か、誤作動によって放たれた魔力が向かった先は、コック帽の女性のお店だった。
「星の力にあてられたうちのお菓子が、あんな風に魔法生物になってしまって……」
「つまり、今暴れまわってるあのお菓子のお化けたちは……」
「そういうことだろうねえ」
「お願いします! あいつらを止めるのを手伝ってください!」
「私からもお願いします!」
拝み倒してお願いしてくる二人に、柚春とウォルターはまだ顔を見合わせた。
軽いアイコンタクトがあって、互いに小さく頷き合う。
ここまで話を聞いたのだ、力になってあげてもいいだろう。
「できるだけのことはやってみるよ。あなたたちは、しばらく休んでて」
「他の冒険者も手伝ってくれるだろうしねえ。任せてよ」
これは、そんな星幽塔のとあるふつうの日の出来事。
ハローワールド、風雅です。
大変お待たせ致しました、プレゼントシナリオのお届けです。
稲積 柚春さんはご参加の際、ガイドに関わらず自由にアクションをかけてください。
魔道具の誤作動により、お菓子な魔法生物たちが誕生してしましました!
寝子島なら大変な事態ですが、ここは星幽塔。このくらいの騒動ならギリギリふつうの範疇でしょう。きっと、多分。おそらく。
そんなわけで、お菓子な魔法生物を大人しくさせるためにわちゃわちゃするシナリオです。
概要
星幽塔の第一階層は城下町で、とある魔道具が誤作動を起こしました。
その魔道具は、ゴーレムなどの作成の仕上げに用いる、非生物に仮初の命を吹き込んで魔法生物化させる代物。
誤作動した魔道具が命を吹き込んでしまったのは……近くのお菓子屋さんに並ぶお菓子たちでした。
かくして魔法生物となったお菓子たちは、無邪気に大暴れを始めてしまいました。
KOしたり捕まえたり、思い思いの手段で大人しくさせましょう!
お菓子な魔法生物たちについて。
今回誕生し、騒動を起こした魔法生物たちは以下の通りです。
〇ビスケットマン
ヒト型のビスケットがそのまま巨大化したような姿の魔法生物です。
身長60cmくらいでそれなりにたくさんいます。
すばしっこい動きで走りまわりながら、出所不明の生クリームを投げつけてきます。
生クリームなので痛くはありません。
〇キャンディジェントル
キャンディケイン(杖の形をした硬いキャンディ)を持った、身体がキャンディで出来た紳士のような姿の魔法生物です。
魔法生物たちの中では一番大きいですが、それでも身長100cmほど。大きいせいか、他よりも数は少ないようです。
キャンディケインを剣のように振るって攻撃してきます。
硬いとはいえしょせんはキャンディなのでそんなに痛くありません。でも打ち所が悪いとちょっと痛いかもしれません。
〇ゼリービースト
大きな口のある頭に小さな身体と手足がついた、デフォルメしたワニのような姿の全身ゼリーの魔法生物です。
大型犬くらいの大きさがあります。
大きな口で噛みついてきますが、ゼリーなので痛くはありません。でもゼリーなのでベタベタします。
〇チョコレートガンナー
丸いチョコレートに手足が生えたような姿の魔法生物です。
身長30cmくらいでいっぱいいます。
板チョコを銃っぽい形になるよう割った風の何かを持っており、そこから液体のチョコを噴射してきます。
べたつくし服は汚れますが、チョコなので痛くはありません。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
※オーダーメイド装備品について
鍛冶工房のトピックを経る(またはシナリオなどで得る)場合のみ
アクション冒頭で指定した星の力とは別に、装備品固有の《特殊効果》が認められます。
アイテム説明欄に、トピックでの完成時の書き込みURL・シナリオ入手時のURLを記載してください。
例:http://rakkami.com/topic/read/2577/2116
NPCについて
登録済みのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、基本的に誰でも登場可能です。
また、Xイラストのキャラクターも描写することができます。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
以上になります。
それでは、皆さんのご参加お待ちしております!