誰かにとっての「たった一人」になりたい。
そう願うことが人生に何度あるだろう。
たった一度かもしれない。
その一度すらないこともあるかもしれない。
倉前 七瀬は自覚した。
そして更なる問いを発する。
――そうだとして、たった一人の「何」になら、なれるのか?
彼はある種の哲学者であった。問いは次から次へと湧いてくる。
――「友人」は、先生にとって親友の存在が強いだろうから無理な気がする。
――「恋人」も無理だろう。そもそも自分の好きはそういう好きとは違う気がする。
――「生徒」は……たった一人どころじゃないし。
――うーん、何にならなれるんだろう……。
わからない。
わからなくてもいい、という人もいるだろう。
しかし七瀬は知ることへの貪欲さを持ち合わせていた。
わからないことをわからないままにしておくのは性に合わなかった。
――先生と過ごしてみたら何かみえてくるかも……?
「奇遇ですねぇ」
思いがけない僥倖に、心に決めた言葉を発して。
「よければどこか遊びに行きませんか」
勇気を出して誘ったことがきっかけとなって、一緒に出掛けることになった9月の休日。
寝子高前で
ウォルター・Bと待ち合わせ、向かった先は旧市街。遊園地みたいに人の多い場所はあまり好まないし、街中でのショッピングや九夜山登山も考えたけれど……旧市街に流れるゆるりとした時間感覚が落ち着く気がしてそちらへ歩き出す。
方向はなんとなくそちらと決めたが、明確な目的地は決めていなかった。
自分の心の行き先と同じように。
そうして気づけば、そこにいた。
「――
絶滅動物園……?」
またたび市動物園とは違う佇まい。
寝子島のどこに、こんなにも広い平野があったというのか。
平原の向こうに広がる青い海。反対側には深い森。
見たこともない動物たちが群れを成して駆け、空を飛んでいる。
まるで地球の原始の姿を見ているかのような圧倒的な景色。
「噂で聞いたことがあるとですよ。寝子島のどこかに、時の流れに取り残されて姿を消してしまった、儚くも美しい絶滅動物たちが暮らす最後の楽園、『絶滅動物園』があると」
「ここがそうだっていうのかなぁ?」
「おそらく。どうしてかわからないとですが、僕たち迷い込んでしまったとですよ」
「うん、それはいいんだけどねぇ……」
気づいてる? とウォルターは頭のてっぺんにふさっと生えたものを指さす。
「僕たちも耳とか尻尾とか生えてるんだけど。もしかして僕たち自身が絶滅動物になっちゃってる?」
本当だ。どうして……、そう考えてすこしだけ思い当たる。
いまは存在しないもの。曖昧で儚きもの。あわいのもの。
どこか自分たちに掠る気がする。
「せっかくです、見て回りませんか。この奇遇で儚き楽園を」
こんにちは。
ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
倉前 七瀬さま、プライベートシリオの申請ありとうございます。
こちらのシナリオは「思ひ出語り、恋語り」(桂木京介マスター)の
続きのイメージでガイドを書かせていただきました。
お出かけ先はセカンドマップより「絶滅動物園」(セカンドマップH−5付近)としてみました。
なぜかおふたりもケモノになっています。
(イラストがステキだったのでつい……)
ケモノになっているから言えることとか、
自然と出来ることとか(人間より距離感近かったり毛づくろいしたり?)
もしかしたらあるかもしれません。
絶滅動物園は本当なのかどうか不思議な場所ですが、
このお出かけのことは、夢などではなく、記憶に残ると思います。
絶滅動物園について
ここは地球の歴史の中で、悲しくも絶滅してしまった動物たちが暮らす、秘密の動物園です。
園内には遥かな昔に姿を消した恐竜たちや、人間による乱獲のため死に絶えてしまった希少動物たちが、
豊かな自然の中で自由気ままにのんびりと過ごしています。
絶滅動物園の中には いくつかのエリアがありますが、今回は平原と森林のエリアが中心です。
恐竜や、絶滅したはずの動物が闊歩しています。
今はおふたりも半分動物なので、歩いて見て回れます。
スリルいっぱい追いかけられたり、もう世界のどこにもいない動物と触れ合ったりすることもできます。
<見られる動物の一例>
○ティラノサウルス(ご存じ恐竜の王さま)
○ランフォリンクス(空飛ぶ翼竜)
○マンモス(でっかいゾウ~)
○ニホンオオカミ(日本固有のオオカミ)
○モア(ダチョウのような飛べない鳥)
○ドードー(よちよち歩く飛べない鳥)
などなど。
そのほか、あの絶滅動物に会ってみたい、などありましたら出来る限り対応いたします。
絶滅動物園にはスタッフもいます。必要があればお呼びください。
とくに指定がなければおふたりのみの描写となります。
ひとまず以上ですが、
ガイドに縛られず自由にアクションを書いて頂ければと思います。
それではどうぞごゆるりとお楽しみくださいませ。