放課後。学校からの帰り道。
稲積 柚春はいつもとは違う道を通り、旧市街の方へ遠回りをしていた。
今朝見た夢のせいだ。
(先生……ウォルターさん……ワット……)
この夏はいろんなことが目まぐるしく起こり過ぎた。
(治療のためなら脱がすのは仕方なかったよね)
夢に対して言い訳し、現実も夢もまぜこぜの思考渦にしばし飲まれる。
真っすぐ帰っても落ち着きそうになかった。歩けば心臓の高鳴りも鎮まるかと思った。
のに。
「稲積?」
「うそ、どうしてこんなところで」
一気に頬が熱くなる。
図書館の裏手の、人通りのすくない、誰かとすれ違うことすら珍しいような道で。
胸の高鳴りの元凶である
ウォルター・Bと出逢ってしまった。
彼としても思いがけない邂逅だったのだろう。青い瞳を丸くしている。
「それはこっちの台詞だよぉ。稲積も興味あったの?」
ウォルターが斜めに視線を送った先には、小さく古びた門構えの寺があった。普段なら気づかず通り過ぎてしまいそうだが、今日は菊の花で飾られた白く大きな看板が出ている。
重陽節
秋の雛 展示中
拝観自由
「重陽節……?」
「3月3日は雛祭りで『桃の節句』、5月5日は子どもの日で『菖蒲の節句』、7月7日は七夕で『笹の節句』でしょう。奇数が重なる日を幸多い日と考えられていて、9月9日は重陽といって『菊の節句』。重陽節では菊を用いた行事をしたり、『後(のち)の雛』といって雛人形を再び飾って、無病息災や長寿を祈るんだってさ」
「知らない……」
「そうだよねぇ。どういうわけか9月の節句はあまり知られていない」
「ウォルターさん、詳しいね」
「案外、僕みたいに外国から来た人間の方が、日本らしい風習が珍しくて興味を持つのかもねぇ」
「これを見に来たの?」
「そう。秋の雛のほかにも、菊酒の振る舞いがあるんだ。菊っていろんな薬効があるそうだよ。稲積なら知ってるかもしれないけれど……」
いや、とウォルターは口ごもる。
「……それは夢の中の稲積だったかなぁ」
とくん。
胸が高鳴る。
夢の中で、柚春は薬の調合が得意な錬金術師だった。
(……まさか同じ夢を……)
熱っぽく見上げると、大人な彼に目を逸らされる。
どこか恥じらっているようにも見えるのに、彼が口にしたのは色気のない誘い文句だった。
「去年も来たから案内できるよ。後学のために一緒にどう?」
こんにちは。
ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
稲積 柚春さま、プライベートシリオの申請ありとうございます。
いろんなシチュエーションを考えてみたのですが
英国人であるウォルター先生と和の組み合わせは
あまりほかのシナリオでは見られないのでは、と思い
重陽節という(日本でもマイナーな)行事を舞台にしてみました。
近年は「大人のひなまつり」として9月9日に雛人形を飾り
女性が自分の幸せや健康を願ったりするらしいですよ。
今回登場とお伺いしてますのは、
NPC:ウォルター・B
Xキャラ:緑林 透破(вор)さんとなります。
お寺をのんびり散策してもいいですし
そのあとどこか行かれてもいいですし
ウォルター先生やворさんも絡めて
ご自由に行動なさってくださいませ。
旧市街のお寺と重陽節について
【お寺】について
・旧市街、寝子島図書館の近く、裏道に入ったところにあります
・この時間、ほかの参拝客はおらず貸し切り状態です
境内とお堂は自由に参拝できます
住職がひとり社務所にいます
・境内には黄色や白や赤紫色の菊の花が咲き誇っています
【秋の雛(後の雛)】について
・重陽の節句の行事のひとつです
長寿と健康を願うものとされていますが
雛人形の虫干しの意味もあったそうです
・お堂には立雛が飾られています。
古いもののようですが、品も仕立てもよいものです
お雛様とお内裏様の顔立ちは穏やかで仲が良さそうです
【菊酒】
・住職に声をかけると菊の花びらが浮かんだ菊酒を振舞ってくれます
ウォルター先生の目当てのひとつです
飲んだ後すこし酔うと思います
残念ですが、未成年は禁酒です
【菊のお守り】
・重陽節の朝、菊の花に綿を乗せて朝露と香りを移したものを
菊の花びらとともに包んだ魔除けのお守りをいただけます
※菊はじっさいにはもっと後の時期に咲くことが多いですが
この寺では咲いていることとします
ひとまず以上ですが、
ガイドに縛られず自由にアクションを書いて頂ければと思います。
それではどうぞごゆるりとお楽しみくださいませ。