絶海の孤島。
そこが寝子島のある世界ではないのは、島を闊歩する魔物の姿を見る限り容易に想像できる。
なぜかその場所に
アシュリー・アンダーソンはいた。
ことの次第を遡るは数時間前、彼女はちーあと仲間たちと共にコンビニから帰る途中であった。
適当なお菓子を買って仲良く会話しながら帰っていた所、突如発生した時空の裂け目に飲み込まれ、気が付いたらここにいた、というわけだ。
ちーあによれば、帰る為には時空を超える為の“この世界”の特別な素材が必要らしく、それは島内に三つほど散らばって存在しているらしい。
一つ目は
“黄金の腕輪”。それは島中央にある遺跡最奥に安置されているらしい。
だが遺跡には侵入者を妨げる様々なトラップがあり、容易に奥までは到達できないだろう。
二つ目は
“部族長の槍”。これは会話や意思疎通が不可能な魔物の集落、その最奥にいる部族長が使用している槍のようだ。
部族は戦闘能力が高く、安易な突撃は死を招くだろう。
三つ目は
“絶海の花”。気高い崖にあると言われ、見る者を魅了するほどの美しさだという。
アシュリーは時空間ゲート準備の為に拠点とした浜辺の洞窟から動けないちーあの代わりに、この花を取りに来ていたのだ。
「ここにあるっていう花だが……ちょっと見る限りだと見当たらないぞ?」
森から出て彼女が崖に出てみるとそこは草原であり、一見しても花があるようには見えない。あるのは緑の草ばかりだ。
少し歩いてアシュリーは崖に近づいてみる。下を見下ろすと、崖から海面まではかなりの高さがあるようで落ちたらひとたまりはないだろう。一発であの世逝きである。
「絶海の花……見てすぐわかるもんだってちーあは言ってたけどなぁ。これだけないっていうと場所が間違っている? いや、対物センサーで見てたしそう違うことは無い筈だけど……」
少々考え込んでいるアシュリーの背後でがさっと音がする。
はっとして振り向くと四つ足の狼に似た体躯の魔物が牙を剥いて走ってくる姿が見えた。
アシュリーは護身用にちーあから受け取っていたライジングソードを腰の鞘から引き抜くと飛び掛かってきたタイミングに合わせ、防御する。
牙と剣の刃がぶつかりあってぎしぎしと音を立てながらアシュリーは魔物に組み倒される。彼女よりも二回りほど大きいその体格差もあり、少しでも気を抜けば押し負けてしまうだろう。
「ぐぐ、こんな所で、負けるわけには、いかないっ!」
剣の柄にあるトリガーを思いっきり引くとライジングソードは凄まじい電流を放った。眩い蒼い閃光が迸る。
ぎゃんっと身体を硬直させた魔物の隙を突き、アシュリーはその身体を力任せに投げ飛ばす。
哀れ、魔物はそのまま眼下の海へと落下していった。ばしゃんっと打ち付けられる音が響き、それから海は静かになる。
「はぁ、はぁ……あ、危ない所だった。あんなものまでいるなんて。油断も隙もあったもんじゃないな」
額から流れる汗を手の甲で拭うと、アシュリーは剣を腰に下げた鞘に戻す。
「探すって言っても、ここには他に探すところが見当たらない。後は崖下しかないな。落ちないように気を付けながら、探すとするか」
ある程度呼吸を落ち着けてから、彼女は崖下を注意深く探してみた。
すると、崖下にある小さな足場に青い小さな花が生えているのが見える。
「あった、あれがもしかして“絶海の花”か!」
崖と聞いて降りることも考え、ちーあから受け取ったロープを森の太い木に括りつけると自分の腰に命綱代わりに巻く。少々不安だが今はこれ以上に対策がない。
上手くロープを伝いながらゆっくりと崖をアシュリーは降りていく。小さく突き出た岩を足場に降りていくとやっとの思いで小さな足場に降り立つことができた。
足場に生えていた絶海の花を採取すると無くさないようにしっかりとポケットにしまう。
「ふう……こりゃもう一回はごめんだ。さあ、花を持って帰るとしようか」
拠点へと戻ったアシュリーは唸っているちーあを見かけた。どうやら問題が起きているらしい。
「どうした? 何か問題でもあったのか?」
「アシュリー、戻ったのですか。ああ、問題が色々と……と、それはいいとして花はどうだったのです?」
不安そうなちーあに絶海の花を見せるとぱっと彼女の顔を明るくなった。
「良かったのです、それがあるなら後は二つなのです。と言ってもあと二つが難儀なのです……」
彼女が示すモニターを見ると、どうやら遺跡へ向かったメンバーと部族の方へ向かったメンバーの様子がモニタリングされているようだった。
遺跡へ向かったメンバーはトラップや魔物に苦戦し、最奥に辿り着けておらず、いったん遺跡の外へと脱出している模様。
部族の方へ向かったメンバーは思いの他、魔物の反攻に遭いいまだ村の入口で交戦中のようだった。
「これじゃ、どっちかに援軍に行った方がいいな。もしくは片方ずつ攻略するのもありかも知れない」
「ふむむー悩み所なのですよ、食糧や水の確保に行った方々も大丈夫なのか心配なのです」
唐突に始まった無人島サバイバル。辺りは魔物や不可思議な植物が生い茂る異世界。助けを待つなんてことは意味がない。
長引けば長引くほどに、食糧や水も大事となる。
果たして、見事残り二つのアイテムを集め、この異世界の孤島から脱出することができるのだろうか。
初めての方もそうでない方もこんにちわ、ウケッキです。
アシュリーさん、キャンペーンのご当選おめでとうございます!
ありがたくご指名をいただきましたので、ハロウィンキャンペーンのプレゼントシナリオを
作成させていただきました!
さて、今回は絶海の孤島でのサバイバルでございます。
集めなければならないアイテムは全部で三つ。
集まったのは絶海の花一つ。
残りは【黄金の腕輪】【部族長の槍】の二つです。
日にちが掛かることを想定するならば、食糧や水、拠点の状態なども大事となるでしょう。
◆予想されるルート
遺跡探索
:転がる球や針の床、振り下ろされる丸太など原始的なトラップが待ち構えている。
スケルトンやマミーなど遺跡特有の魔物も存在している。
最奥には集めるアイテムの一つ“黄金の腕輪”がある。
部族の村攻略 同行者:ツクヨ
:原住民のような姿をした意思疎通不可能な魔物の村を攻略。
槍で武装した原住民型の魔物が複数体生活しており、正面突破は難しい。
村の後方には迂回すれば行くことのできる高台があり、そこから村全体が見渡せる。
食糧、水の確保
:森や浜辺に行き、食べられる食料や飲料を探す。
森には川が流れており、異世界故か魔力のこもった淡水の為、安全に飲むことができる。
海には魚型の魔物がいたり、森には獣型の魔物がいるが狩ることができれば食糧が手に入る。
また、拠点の使いやすさ向上の為に使える資材が確保できるかも知れない。
◆予測される登場敵
スケルトン
:遺跡に出現する骨型の魔物。
朽ち果てた剣と盾で武装している。稀に弓を装備した個体もいるらしい。
マミー
:遺跡に出現するミイラ型の魔物。
動きは遅いがパワーがあり、耐久力も高い。よく燃える。
スピアラ
:硬い鋼製の槍で武装した魔物。
人に似た外観をしていますがれっきとした魔物で、意思疎通は不可能。
最奥にいる部族長のスピアラのみ、集めるべきアイテムの赤い槍“部族長の槍”を持っている。
デビルフィッシュ
:海に出没する人間サイズの凶暴な魚の魔物。なお肉食。
水棲だが、空さえも泳ぐという特性がある為、獲物を見かけると水から飛び上がり襲い掛かってくる。
ワイルドウルフ
:森に生息する獣型の魔物。
狼に似た体躯をしているが、人よりも二回りほど大きく、凶暴。
なお肉は美味と言われている。
◆拠点
:浜辺に近い洞窟。潮の満ち引きでも水が来ることはない。
簡易な焚火のみ設置されており、異世界へのゲート構築と情報収集の為、ちーあがいる。
◆ちーあの支給品
わくわく探検家セット
:ナイフやロープ、コンパスやツルハシなど探検家に必要と思われる様々なアイテムが収納された不思議なポーチ。
探検家に関する知識があれば、想定していないアイテムまで出るが、
ポーチ自体に探検家に関係ないと判断されたアイテムはなぜか全部【棒アイス】になる。
ライジングブレード
:電流放射機能を持った軽量な刀剣。
不慣れな人でも扱いやすいように軽く作られている。果物ナイフほどに軽い。
インスタント魔法カード
:炎、水、雷、風、土の五つのマークの書かれた五枚ひとセットのカード。
それぞれ使用することで一回だけ、その属性の魔法弾が放てる。
◆登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
サバイバル知識は無いに等しい。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。なお胸はFカップ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
サバイバル知識は並。