「ようこそ、いらっしゃいました」
"Antique doll 製作者の館"という、寝子島の九夜山に居を構えた、白く古びた大きな屋敷の外門が、来訪した
御剣 刀を客人として大きく出迎えるように開かれる。
そこには、過去に動き出した宝石をあつらえた人形シリーズの一体『ガネット』が神魂で動き出した時に、一般人として今の寝子島のフツウを叩き付けられた執事が、刀に向かい大切な客人として深々と一礼した。
「あの時は、御剣様におかれましては、ガネットの時には大層失礼を……!」
「――え? ああ、いいんだ。普通、人形が動くだなんて驚くに決まってるし」
挨拶の次に飛び出した謝罪に、刀は少し困ったように笑って腕に乗せているルヴィアを見た。
建物内に招き入れられながら、刀は答える。
「このルヴィアも、動いて……今もちゃんとこの話を聞いているんです。トキサダさんの作る人形は、みんな生きていて――」
「ええ、その話をご主人様からされた折り、使用人が薄気味悪いから辞めるという話も出たのです。
ですが、それを止めてくれたのがガネットでした――人形ですが、人と同じ心があるのだと。それを知る内に辞めるという選択肢はいつしか我々の中からは消えていたのです」
むしろ、主人の喋る人形を一目見て見たい。そんなことを思う使用人が増えたのだと――そう苦笑しながら、広い土地を雄大に使った屋敷の中を歩き、執事は刀を主人の下へと案内して、下がっていった。
「御剣さん、ようこそおいでいただきました。……ルヴィアも」
屋敷の主人、トキサダと名乗る体躯の良い人形師の男は、刀に頭を下げルヴィアを本当に我が子を見るのと同じ眼差しをもって見つめた。
「トキサダさん、こんにちは。今日も宜しくお願いします」
刀も静かに礼をして、調整のためにしばらくの間、ルヴィアをそっとトキサダに預けた。
トキサダの工房にまでは、流石の刀も足を踏み入れる訳にも行かず、いつもしばし待つ時間が続く。一度工房の見学がしたいと言ったところ、トキサダは非常に困った顔をして『ルヴィアが、非常に恥ずかしそうに怒っているので……』と断られたのだ。話によれば、確かにメンテナンスの状況によっては、裸どころか体内に巡るゴムの交換などで、全身がバラバラになったルヴィアを目にしたいかと言われると困る。気にならないわけではないが、それを口にしては悪趣味とルヴィアに怒られそうな気もして、無理に押し入ることは躊躇われた。
「御剣さん、今日はメンテナンスが終わりましたら、ルヴィアも伴って、一緒にアフタヌーンティーなどは如何でしょうか?
今日は甘いケーキなどのお菓子を使用人が用意しておりまして。
甘いお菓子を伴うお茶会というのも、若干私の柄でもないような気も致しますが……」
「いえ、ルヴィアも今は食べられないですが、きっと喜ぶと思います」
――そう言えば、最近高めの洋菓子って食べてないよな。食べたい。
刀は、ふと脳裏に浮かんだ己の本音を胸に押し留めつつ。そういえば旧市街の自分の家では置かれている菓子というのはせんべいなどの類が多いなと、ふと脳裏に思考をよぎらせた。
それならば今回は、ルヴィアが少し目新しいものを見られる良い機会なのかも知れないと思われた。
刀はその人形師の誘いに快く頷くことにした。
もしかしたら自分が知らないことを聞ける良い機会であろうと思えるし、こういう時であれば普段聞けない話も聞く事が出来るかも知れない。
そして、これがルヴィアと共に人形師が過ごせるという、一際特別に素敵な機会であるならば、それは尚更のことだろうと思われたのだ。
ゆっくりと過ごせる時間。共にあれれば、ルヴィアもきっと喜んでくれるに違いない。
こんにちは、冬眠と申します。
この度は、御剣刀様へのプライベートシナリオとなります。リクエストをいただきまして、誠に有難うございました。どうか宜しくお願い致します。
それでは、さっそく以下より状況説明を行わせていただきます。
状況と、できること
【状況】
○『宝石人形ルヴィア』の時より、今までずっと一緒であったルヴィアのメンテナンスの為に、製作者である人形師の屋敷を訪れた、御剣刀様の一日のとなります。
・屋敷内では、使用人が普通に働いており、動く人形の認識が落ち着いた使用人達の間で、ルヴィアが少し不思議な存在を見る目で見られています。
・ルヴィアのメンテナンス後は、人形師トキサダから、御剣様とルヴィアを招いてのアフタヌーンティーのお誘いが出ています。
【できること】
○完全にご自由に行動していただけます。
・ただ、作業に関しての工房にだけは入れてはもらえませんが、やましいことは何もなく、どちらかと言えばルヴィアが調整光景を御剣様に見せたくないという思いを、無自覚のもれいびであるトキサダが感じ取っているからのようです。
・待っている間も、執事が何かと気に掛けてくれます。待っている間に聞けば、様々な話を教えてもらえるかも知れません。
同じ話題は、ほぼトキサダからも聞くことが可能です。作り主当人の話題の為、話によってはこちらの方が詳しい事もあるかも知れません。
・かなり長い面識でもあるため、質問すれば殆どの質問には、隠すこと無く答えてもらえます。
【NPC】
○NPCと致しまして、当方NPCである『人形師トキサダ』が登場します。こちら、上記に関連し、ご自由にアクションをお掛けいただいて問題ございません。
【その他】
○NPCとのご関係について、事前にMSに知っておいて欲しいエピソードなどがございましたら、『そのリアクションの該当ページURL』をアクション内にてご記載いただきますと、大変嬉しく思われます。
それでは、せっかくのご機会であることより、精一杯執筆させていただきます。
こちら、本当にご自由にアクションを戴ければ幸いです。御剣様の素敵なアクションを心よりお待ち申し上げております。