ある日曜日の昼下がり、
七夜 あおいは寝子温泉へと向かう山道を歩いていた。
野々 ののこから「温泉行こう!」と誘われたのだが、七夜は今日の午前にちょっと別の用事があったのだ。そのため午後からの合流となり、ひとり山道を歩いている。
そんな七夜の耳に、突然キキーッという甲高い音が飛び込んできた。タイヤがすごい勢いでアスファルトを擦る音。ブレーキ音だ。
ただごとではないその音に、七夜はハッと顔を上げて辺りを見回す。と、次の瞬間、何かと何かがぶつかり合うすさまじい音が辺りに響いた。固いものが衝突する音、ガラスが細かく砕ける音、大きなものが倒れる音。そのすべての音がぐちゃぐちゃに混ざって辺りに響く。そのあまりに凄惨な音に、本能的に危機を感じた七夜は思わず耳をふさいだ。
「な、なに? 事故?」
両手を耳に当てたまま、彼女は音がした方へと小走りに向かう。
すると、寝子温泉へと向かう車道のカーブに差し掛かったあたりで、トラックが事故を起こしているのが見えた。大きなトラックは横倒しになっていて、積んでいた資材が道路に散乱している。交通事故だった。
「た、大変!」
運転手は無事だろうか。慌ててそちらに駆け寄ったとき、七夜はとんでもない光景を目の当たりにした。
事故を起こしたのはトラックだけではなかった。その大きな車体と資材の下にかろうじて見えたのは、まるで助けを求めるように弱弱しく光るテールランプ。
なんと、一台の乗用車がトラックと資材の下敷きになっていたのだ。
さいわい、車はまだ完全にはつぶされていないようだった。必死に覗き込んでみると、運転席にはハンドルにつっぷして倒れている女性、そして後部座席にはうずくまるように丸まっている小さな頭が二つ見える。
どうしよう、どうしよう。凄惨な現場を目の当たりにして顔を青ざめさせて震える七夜は、それでもハッと今自分にできることを思いつく。
「け、警察呼ばないと……あと救急車!」
そう言って震える手で携帯電話を取り出した七夜の目の前で、ぎし、と乗用車にもたれかかっていたトラックが嫌な音を立てる。車がつぶされるのは時間の問題だ。
助けを待っている余裕はなかった。
ぎりぎりまで心が追い詰められたそのとき、七夜はふと体の奥から言い様のない力がみなぎってくるのを感じた。湧き上がるその感覚の正体を七夜は知らない。けれど何をすべきかは次の瞬間にはもう分かっていた。まるで、前からずっと知っていたかのように……。
私がやるしかない。
覚悟を決めると、七夜は一歩踏み出した。
こんにちは、花村です。
今回は、みなさんがどのようにしてろっこんに目覚めたのかという様子を描くシナリオとなります。ガイドではその例として、七夜 あおいさんに登場してもらいました。
そのため、今回は特定の舞台はありません。時期もみなさんバラバラかと思います。時期を書く場合は、四月の入学以降から六月現在まで、ご自由にご指定ください。もちろんお友達と示し合わせた上でのGAも大丈夫です。
◆アクションについて
ろっこんという不思議な力を初めて発動させたとき、どういう状況だったのか。そのときみなさんはどう感じてどう受け止めたのか。以上のことを教えてほしいです。
もちろん、もれいびでない方の参加も大歓迎です。ろっこんの力を初めて目の当たりにしたとき、あるいは友人に相談されたとき…などなど、もれいびでなくとも、思うところはあるかと思います。
◆ご注意
ガイドの七夜は交通事故という大きな場面に遭遇していますが、これはあくまで一例です。
みなさんのろっこんを拝見していると、ごく日常的な場面で発揮できる能力の方も多くいらっしゃるようですし、必ずしも七夜のように大きなアクシデントに遭遇しなければ…という訳ではありません。
たとえば、現在の寝子島に影響を与えるような大事件や大事故という場合は、描写できかねます。事故にしても、ガイドで示した状況程度にしていただきたく思います。
世界観に影響を及ぼすような状況が頻発してしまったら、今後の進行で辻褄が合わなくなったりする事態も予測されますので、こちらご協力いただければ幸いです。
今回はみなさんひとりひとりのろっこんに対する心情をしっかりと描写したいと思っております。
何卒よろしくお願い致します。