「初めまして。お嬢様」
出会い頭にそう呼ばれ、
宮祀 智瑜は目を丸くした。
品の良い低音ボイスが、耳に柔らかく響く。
「……お、お嬢様?」
立っていたのは、バトラー姿の男だった。
黒い髪をきっちりとオールバックにし、目元は涼やか。手には艶のある黒い革手袋をはめ、靴はきれいに磨かれている。
にこりと微笑む姿には嫌みがなく、甘いコロンの香りは出会う者の胸を高鳴らせるだろう。
まるでゲームやドラマから登場したような人物を前に、宮祀はしばし、あっけにとられた。
「失礼、紹介が遅れましたね」
男はまっすぐ背筋を伸ばしてきれいにお辞儀をした。
「わたくし、『燕尾俱楽部』の白藤彰と申します。ふつつかながら、これからしばらくの間、お嬢様の執事として務めさせていただきたく、ご挨拶に参りました」
「えっと……、どういことでしょう」
「順に説明させていただきますね」
と言って、白藤の語るところによると。
『燕尾俱楽部』は、全国の執事たちが主人の許しを得て他人に仕え、執事としていっそう研鑽を磨くことを目的とした団体であるという。
今回彼らが修行の地として選んだのは寝子島で、一日限りの執事として出会った人にお仕えを申し出ているのだという。
あっけにとられる宮祀に、白藤は名刺を渡し、にこりと微笑んだ。
「もしよろしければ、わたくしに命令をください。買い物にいくことでも、珍しいものを探し出すことでも、宿題の手伝いでも何でも構いません」
宮祀は、ぽかんとして白藤と名刺を見比べていた。
宮祀さん、ガイドに登場してくださりありがとうございます!
ご参加いただく場合は、ガイドに関係なくアクションを提出いただければ幸いです。
『燕尾俱楽部』
「より多くの経験がより優れた執事をはぐくむ」をモットーに集う執事たちが、主人の許しを得て休暇を利用し、不特定多数の主人に仕えることを目的とした団体です。
多くのすぐれた執事を輩出する場として、業界では有名だとか。
執事自身の自主的な研鑽を目的とするため料金は一切発生せず、彼らと過ごす間の食事や買い物はすべて執事たちの支払いとなります。
白藤のような執事然とした男から、オラオラ系、おじい系、お兄ちゃん系、弟系、幼馴染系など、ありとあらゆる年齢層や性格の執事が在籍しており、寝子島のいたるところに出没しています。
民宿や旅館を利用している執事もいるようです。
男性執事だけでなく、女性執事、女性メイドも在籍しています。
好みに合う執事と、きっと遭遇できることでしょう。
素敵な執事と共に、ちょっぴりリッチな生活を楽しみましょう!
ご主人様として
一日の間、執事がお仕えいたします。
殺しや重度の犯罪に関係しないものであれば、どんなお願いでも喜んでかなえてくれることでしょう。
はっきりと言葉に出せない願いがあっても、それを汲み取ってかなえてくれるはずです。
一日執事無料体験
また、『燕尾俱楽部』では、執事を志す多くの方のために、一日執事体験や、一日メイド体験を提供しています。
寝子島のシーサイドタウンにある「ホテル・モンテテルロ」を訪れれば、受付が可能となります。
町の主なところに
『品性を磨く一日。執事として、メイドとしての体験を積んでみませんか?』
との文言が書かれたポスターが張られているので、広告を見る機会もきっとあるでしょう。