……不思議なことにいくら調べてみても、その廃墟が一体何であったのか、明確に説明できる者が一人とていなかったのです。
そこで私は、自ら調査を敢行することにしました。結局のところ、好奇心に抗えなかったのです。
当時付き合っていた彼女はオカルト好きで、廃墟のことを話したところ二つ返事で同行を承諾してくれました。
決行は深夜2時頃だったと思います。少し、記憶が曖昧です。
ともかく二人で廃墟へ向かいました。
場所はK山の北側、中腹あたり。
敷地に踏み込んだ途端、夏の盛りだというのに冷気を感じました。
彼女は肩を抱き白い息を吐いています。
そんな仕草に、その時、なんだか懐かしい思いにかられたのを覚えています。
見るからに古い建物は、しかし崩れもせずそこに残っていました。
正面から中へ入り、懐中電灯をつけました。
そこらに運び忘れた家具や砕けた調度品の類は転がっていて、内部は荒れ果てています。
かつてはホテルか。あるいは病院の跡地か。
中を散策すれば、それらしい痕跡を見つけることもできるかもしれない。
そう思い、踏み込もうとした時……しかしそこで、隣を歩いていた彼女に異変が表れました。
懐中電灯で照らした顔は、血の気が無く、はっとするほどに蒼白でした。
彼女はしきりにぶつぶつと何かをつぶやいていました。何と言っていたのかは、今でも分かりません。
突然彼女が走り出して、私は慌てて後を追いかけました。
やみくもに駆け、階段を登り、彼女の背中が消えた部屋のひとつに飛び込みました。
暗い部屋へ彼女はぼんやりと佇み、そしてくるりと私のほうを振り向きました。
私は息を呑みました。
朱に染まった瞳から、ぬるつく赤黒い雫を頬に伝わせていました。
その時、気づいたのです。
私がここへ来るのは、初めてではなかったことに。
何年も前に……彼女と一緒に訪れたことがあったのです。
なぜ忘れていたのでしょう。
私はおそらく……その時起こった何らかの現象に、とてつもない恐怖を刻み込まれたのです。
何があったのか、詳しくは覚えていません……胸をえぐられるような、頭をかきまわされるような、そんな恐怖だけが私の頭にこびりついています。
そして怯えた私は、逃げ出したのです。
彼女を置き去りにして。
あの時一体、何があったのだろう。
私は、確かめなければなりません。
ああ。彼女が呼んでいる。行かなければ……
「F.O.A.F 都市伝説研究室」へ寄せられた投稿は、そこで途切れていた。
「……それが、この廃墟でしょうか?」
花菱 朱音は首を傾げる。
目の前に建つ廃墟は、確かに投稿の内容と合致していた。
なぜ自分がここにいるのか、どうやってここにきたのか、正直に言ってわけが分からない。
しかしそんな状況や廃墟の恐ろしげな外観は、オカルト好きな朱音を興奮させるに十分だった。
「なるほど。語られなかった真実を、私が解き明かすのも面白いですね」
重なり合う枝葉の合間に、月が見えた。
時刻は深夜2時。
廃墟は静かに、来訪者を待っている。
こんにちは、よろしくお願いします!
花菱 朱音さん、ガイドに登場してくださりありがとうございました。
ご参加いただける場合は、ガイドに関わらず自由にアクションをかけてください。
概要
今回は、うち棄てられた廃墟を舞台に、心霊体験をするお話です。
九夜山の北側中腹にぽつんと遺棄された廃墟は四階建てで、看板や掲示の跡などもなく、
もともと何の建物であったのか、外観からは判断できません。
内部はすっかり荒れ果てていて、雑多に物が転がっています。
何らかの力が働いているのか、部屋や廊下の繋がりはめちゃくちゃで、
まるで迷宮のように入り組んでいます。
時刻は深夜2時頃。
皆さんはこの廃墟へ、ねこったーやオカルトサイトなどに投稿された情報を見て、
好奇心のために訪れたり、あるいは気が付いたらいつの間にか廃墟の中にいたり、
それぞれの形で足を踏み入れることになります。
体験する心霊現象は人それぞれ違うようです。
ご自分で詳しく指定することも可能ですし、マスターにお任せもOK。
自由にホラー体験をお楽しみください。
アクション
アクションでは、以下のどちらかから、主な行動を選んでください。
なお、廃墟には一度入ると出ることは困難ですが、なんとか自力脱出するほか、
夜が明けるか、廃墟の真相を解明することができれば、出ることができるようです。
◆A:自由に心霊体験
廃墟の中でどんな現象を体験するか、指定していただくことができます。
・恐ろしい悪霊に追い回される。
・奇怪な怪物とバトル。
・懐かしい故人との邂逅。
・かわいい動物霊に懐かれる。
心霊現象であれば何でも構いません。
現象のみ指定し、結末はお任せ、ということも可能です。
◆B:お任せ心霊体験
どきどきしたい方は、マスターにお任せも可能です。
アクションには、怖がり度や心霊現象が現れた時の反応などをお書きください。
<真相について>
廃墟が何のための建物であったのか、今のところ不明です。
ガイド本文に登場した男女についても、何らかの核心に関わっていたのか、
あるいは単に巻き込まれただけの不運な犠牲者であったのか、分かりません。
もし真相について何か予想などありましたら、ぜひアクションで教えてください。
面白いもの、説得力があるものなどがあれば、採用させていただくかもしれません。
NPCについて
・島岡 雪乃
・早川 珪
・七夜 あおい
上記の三名は、いつの間にか廃墟の中にいたようです。
それぞれにさまよったり、何かに追いかけられたリしています。
その他、登録済みのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、
基本的に誰でも登場可能です。
以上になります。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしております!