ぐす、と嗚咽を漏らしたとき、窓ガラスを叩く雨粒の音はいっそう激しさを増した。
しかし彼女にとって、外の天気などどうでもいいことであった。今はただただ悲しい。
(私は……こんなに好きなのに!)
理由は単純、失恋してしまったのだ。
一年間ずっと恋焦がれていた先輩に意を決してアタックしたのだが、「……あんたのことは後輩か妹にしか見れないよ」ともののあっさり断られてしまったのだ。
「なんで先輩! 私は先輩のためなら死ねるのに!」
彼女が慟哭したとき、鈍い雲を切り裂くような稲妻が閃いて轟音を響かせた。
生徒たちは梅雨時の大雨に浮足立っているようだった。
空を覆う分厚い雨雲は日の光を完全に遮っていて、窓の外は夜のように暗い。授業を進めようにもいちいち鳴り響く雷や強い雨脚に、生徒たちの気は完全に散っている。
「せんせー! なんでこれ大雨洪水警報でないのー?」
「もう帰ろうよー。電車止まっちゃうー」
「いやお前は寮生だろ!」
教室はどこも授業を続けられるような空気ではなかった。窓際の生徒たちはガラスに顔をくっつけるように外を見ている。
確かに警報が出てもおかしくない天気だった。しかしいくら待てど警報発令の連絡は入ってこず、それどころか天気予報でもこの大雨には触れていない。よほど局所的な大雨なのだろうか。
雨風をしのげる軒先に体を滑り込ませると、
テオドロス・バルツァはぶるっと大きく身を震わせて水気を飛ばした。
いくら梅雨とはいえ、この大雨は何かがおかしい。
テオはこの豪雨に異変を感じ取っていた。恐らくこの雨は、放っておけばいつまでも降り続けるだろう。
ヘタしたらこの辺り一帯が水没してしまうかもしれない。そうなってしまう前になんとかしなければ。
いや、なんとかさせなければ。
こんにちは、花村です。
寝子島を襲う突然の豪雨の正体はろっこんの力です。
皆さんはこの大雨の原因を探ってどうにかすべく、テオによって無差別に別空間へと送られてしまいました。
がんばってどうにかしてください!
◆切り取られた空間
舞台は寝子島高校です、が「大雨の原因」によって開始時点で一階部分は水没、二階部分もかなり浸水しています。
二階は平均的な男子生徒の腰辺りまで水位が上がっているため、小柄な方はご注意ください。
外の天気は大雨で、開始直後から水位は刻一刻と上がっています。一時間もすれば三階部分も腰辺りまで浸水しそうです。
なぜか寝子島高校の北・南校舎以外のすべての建物は水没しています。
泳ぐなり飛ぶなりして校舎を出ていくことも可能ですが、雷雨で水面も荒れている中、水没しているだけの町へ向かってもあまり意味はないかもしれません。
校舎間の行き来をする場合も、短距離ですが泳いでいく必要があります。
開始地点は校舎内に限り、指定可能です(指定がない場合は校舎内で適当にこちらで配置します)。
あえて水没地点からのスタートにしてみてもいいかもしれません、が、窒息には十分ご注意ください。
◆参加推奨PC
舞台は寝子島高校としていますが、テオは無差別にこの空間に人を召喚します。
なので、寝子高生以外の方が紛れこんでしまう可能性も大いにあります。
(つまり、寝子高生以外の方も歓迎です)
◆大雨の原因(以下はPLさん向けの情報です。PCは把握できません)
ガイドで泣いている女子生徒、芸術科2年8組の白石百合ちゃんが原因です。
どこにいるかは分かりませんが、今も泣き続けています。泣いている以上は水没の危機がない場所かと思われます。
同学年の芸術科の方は、お互いに面識はあるとしても構いません。
彼女は授業をサボって大声で泣いていたところテオに仕分けされてしまいますが、構わずその場で泣き続けています。
ちなみに、彼女のろっこんは「失恋で号泣すると大雨を降らせる」という傍迷惑なものです。
◆アクションは?
ご自由にどうぞ、としたいところですが、今回はのんびりしていると命に関わる状況です。
原因を突き止めるのはもちろん、泳ぎが苦手なのに巻き込まれちゃった方は必死に逃げ惑うのも無理はありません。
逆に泳ぎが得意な方はそれを生かして小柄な子を助けたり、水に濡れて透けた肌を凝視したり……
あと服はかなり水を吸って重くなります。いっそ脱いでしまうのも手ではないでしょうか?
つまり、ご自由にどうぞどうぞ!