カーテンの隙間から朝陽が差し込む。部屋の温度が緩やかに上がっていく。
ベッドで寝ていた
桃井 かんなは眉根を寄せる。不機嫌な顔のまま、寝返りを打った。柔らかい枕に顔を埋めた。深い眠りに落ちようとした矢先、枕元に置いてあったスマートフォンに電話が掛かってきた。
かんなは瞼を閉じたまま、片方の耳にスマートフォンを押し当てる。最初は無言を貫き、程なく目を開いた。
「……今日は撮影日……わかったわ。すぐ用意する」
通話を終えた。かんなは捻るようにして身を起こす。ゆっくりと息を吐いて気分を切り替え、速やかにベッドを下りた。
二十分後、かんなは家を出た。夏の日差しに向かって軽く胸を張る。
「グラビアアイドル、頑張らないとね」
寝子ヶ浜海岸は訪れた人々で賑わっていた。カラフルなパラソルが大輪の花を至る所で咲かせている。
その一つに
屋敷野 梢の姿があった。白いビキニ姿でビーチチェアに仰向けになっていた。ハートのサングラスに遊び心が窺える。
「オフはいいですねー」
間延びした声でサングラスを外し、頭部に据えた。上体を起こすと豊満な胸が重そうに揺れる。傍らにあった読み掛けの雑誌を手に取った。
パラパラと頁を捲る。その手が止まった。梢は好意的な笑みを浮かべる。
見出しの部分には『新進気鋭のグラビアアイドル特集』と書かれていた。筆頭に挙げられた女性は二十歳。長い髪と赤い瞳が見る者の目を惹き付けてやまない。
「かんなちゃん、元気そうですねー」
雑誌を置いて立ち上がる。砂浜を歩くと男達の注目を集めた。胸に合わせて目が上下に動く。
「大人の女性の魅力ってヤツですかねー」
梢は余裕の笑みを見せるのだった。
背後の賑やかさに振り返ることなく、
雨崎 荒太郎は波打ち際に腕を組んだ状態で立っていた。
「故郷の海はいいねぇ」
組んでいた腕を解いた。波を蹴散らしながら水中眼鏡を掛ける。逞しい肉体を駆使して泳ぎ始めた。
押し寄せる波を物ともしない。切り裂くクロールで沖へと向かう。負けん気の強い男子が対抗したが付いていくことも出来なかった。
「あの人、もしかして……」
立ち泳ぎとなった男子は丸い目で荒太郎の姿を追った。クロールからバタフライに移行する。力強い両腕で上半身が露わになった。
一度、海中に沈んだ。仰向けとなって浮上する。オールと化した腕で見事な背泳ぎを披露した。身体をくるりと回して締めの平泳ぎに入った。
「やっぱりそうだ!」
男子は弾けるような笑顔を見せた。
その声を耳にした荒太郎は泳ぎながら、バレちゃったかなー、と子供っぽい口調で言った。
曖浜 瑠樹はシーサイドタウンにある手芸店に足を運んだ。
様々な生地が並ぶ一角に直行。目で探し、時に手触りを確認した。
「新作にはどれを使おうかなぁ」
のんびりとした声とは余所に目は真剣であった。周囲の変化に全く気付いていない。
集まった女性達は瑠樹を遠巻きにして見ていた。囁き合う声が徐々に高まる。
「あの人って……」
「きっと、そう……」
「……どうする?」
意を決した一人が瑠樹に近づく。
「あ、あの、ファンです! サインをください!」
上ずった声で女性は頭を下げた。震える手でメモ用紙とボールペンを差し出す。
瑠樹は柔らかい笑みで受け取った。
「オレのサインでいいなら」
この一言が切っ掛けで女性達が殺到する。瑠樹は笑顔で揉みくちゃにされた。
寝子暦1380年、十年後の寝子島の一日が始まるのだった。
今日は四月一日です。エイプリールフールに相応しいシナリオの公開となりましたー!
神魂の影響で寝子島は十年後の未来にばっひゅーんされました。もう、わくわくが止まりません!
説明に入る前にシナリオガイドに登場していただいた屋敷野 梢さん、雨崎 荒太郎さん、曖浜 瑠樹さんに感謝です。
本シナリオに参加された場合、ガイドに影響されないで自由な発想をアクションに書いてくださいね。
では、張り切ってシナリオの詳細を語っていきます! ややこしい設定はないので肩の力を抜いてご覧ください。
今回の舞台
寝子島全域となります。十年後の未来の為、建物や住んでいる人々が十年の月日が経過している状態で始まります。
数ある未来の一つなので、必ず十年後に今回のような結果になるという訳ではありません。
神魂の影響による一時的な未来なので一日が過ぎますと、例外なく元の状態に戻ります。
PCの状態
PCはプロフィールの年齢に十年を足した状態での参加になります(ほしびとも影響を受けますが姿は任意)。
例:九歳の小学生は十九歳の姿になっている(大学生、専門学校生、社会人など)。
アクションに書いた内容で未来が決定します。技能も備わっている為、設定内で自由に動かすことができます。
今回に限り、神魂の影響には個人差があるようです。二種類のパターンが考えられます。
アクションに「A、B」のどれか一つを選択して書き添えてください。
【A】十年前の記憶はなく、十年後の自分として(十年後の自分に成りきって)行動する。
【B】十年前の記憶があり、十年前の自分として(十年後の自分に驚きながらも受け入れて)行動する。
NPC
・桃井 かんな
二十歳になった、かんなはグラビアアイドルとして第一線で活躍。
少し生意気で遠慮のない口調が冴え渡ります。ファンがサインを求めれば普通に対応します。
・美和先生
結婚して二歳の子供が一人います。職場は変わらず、寝子島高校で先生をしています。
・雪乃先生
カーレーサーとして世界を駆け巡っています。今日は寝子島でのんびりオフを楽しんでいるとか。
・フジコ先生
女優は束の間の仕事。本業として今でも寝子島高校で先生をしています。
・桐島先生
教材の企画販売会社の社長。「おっぱいドリル」が空前の大ヒット。業界内でも凄腕と評判になっている。
・黒崎先生
mewtuberで評判となり、今では寝子島高校の校長先生になりました。
・熊吉先生
急激に痩せて渋いイケメンに。教育の情熱を失わず、寝子島高校の教師をしている。
・七夜 あおい
新人獣医さんとして寝子島の動物病院に勤務。猫を専門にしています。
・海原 茂
出版関係の会社で営業マンとして働いています。寝子島エリア担当で、今日もあちらこちらへ。
※紹介されていないNPCとは出会えないのでご注意ください。
説明は以上になります。
十年の月日は人々をどのような姿に変えているのでしょうか。
想像と胸を膨らませて、あなたらしく寝子島を巡ってみてください。
未来の寝子島には、きっとあなたが――。