これは四月の初めに行われた、演劇の第一回目授業の出来事である。
北校舎一階の特別な部屋でそれは行われていた。
その部屋は広さは普通教室と大きく差はないのだが……。
壁の全面、鏡張りなのである。
その奇妙な部屋の中心には、全身黒ずくめの体格のいい男が直立していた。
男はよく通る低い声でこう告げた。
「こんにちは。アタシは今日からアナタたちにお芝居のお稽古をつけることになりました。ヨロシクね」
厳つい顔も。
ピンと伸びた背中も。
肉体美を見せつけるぴっちりとした服も。
全てを忘れ去ってしまうように強烈な言葉――いや、話し方だった。
そして、そのときクラスはひとつになる。
(オネェだ……っ!!!!!)
先生はニコリと微笑んでみせる。
「さて、質問はあるかしら?」
それから矢継ぎ早に質問が飛び交った。
先生、彼氏はいますか?
先生、好みのタイプはいますか?
先生、俺なんてどうっすか?
先生はにこにこ。生徒もニコニコ。
先生、名前なんていうの?
先生は自然体のまま、これといった予備動作なしに口を開いた。
「ウルサイわよ」
ピシャリ。
ピタリ。
「アタシのことはフジコ先生とお呼びなさい。あとアタシは同じことを何度も説明するのは嫌いだから覚えておいてね」
一旦静まり返る教室。
その中で強者の一人が恐る恐る挙手する。
「あの、先生、それ本名で」
ギロリ。
勇者の言葉は最後まで発せられることはなかった。
(これ禁句なんだ……っ!!!!!)
再び、教室はひとつになる。
ちなみに先生の本名は富士山 権蔵(ふじやま ごんぞう)。
なぜ聞かれたくないかは察していただけることだろう。
「まずストレッチと筋トレからね。あら、授業の前にもちろんやってたわよね?」
どう答えるのが正解か。生徒たちは一致団結して考える。
やってます or やってません。
――可哀想に。
どちらにしても地獄の筋トレを避けることはできないとはこのときはまだ知らなかった。
「ねぇ、アナタそれ腕立て伏せなの? 伏せてないじゃない。ああ、わかったわ、もう困った子ね。いいわ、手伝ってアゲル」
満面の笑みを浮かべた親父……ではなく乙女は、背中の上に座る。
痛い、重い、苦しい、ていうか、モッコリが当たるぅぅううう。
という心の叫びはフジコ先生には届いていたが、彼女はそれを楽しんでいたので逆効果だった。
「あれ、もうお芝居してたの? え、しかも終わったですって? あらぁ気がつかなかったわ」
今日も暑いわね、というようにごくごく自然に尋ねる。
ただし、生徒たちがそうだねー、と日常会話を続けることはできず、ただ冷や汗をかいていた。
以上が繰り返すが、第一回目の授業の回想である。
さて無情にも、北校舎一階に予鈴が響き渡る。
本日の演劇授業開始まであと5分。
今日の課題は「ロミオとジュリエット」のワンシーンを演じること。
忠実に演じてもよし、アドリブをしてもよし、まったく別物をそうだと言い張ってもよし。
とにかく、無事に演じきることが課題だ。
さあ、みんなのだーいすきな楽しい演劇の授業のはじまり、はじまり!
◆挨拶
はじめまして。
この度『らっかみ!』でマスターをさせていただくことになりました、つるこ。と申します。
皆様に楽しんでいただけるように精進してまいります。
よろしければ、マスターページをご一読いただけると助かります。
それでは以後お見知りおきを(´∀`*)
◆注意事項
・アクションの初めにに必ず何の役を演じるか、どのシーンを演じているかの記述をお願いします。(シーンについては参照の欄をご覧下さい。)
・芸術科以外のキャラクターが参加する場合はその場に居て不自然でない状況を記述して下さい。
例:興味があって忍び込んだ。
忘れ物をして、出るに出られなくなった。
◆確認
・フジコ先生は(富士山 権蔵)は2年7組の担任です。
・今回の演劇の授業で5限目です。参加対象は芸術科の全学年。
(表向きはそういうことになっていますが、他の学科の生徒もこっそり参加できます。ただし、成績は付きません。)
・必需品は飲み物、汗拭きタオル。
・服装は動きやすい服装。靴は体操靴、バレエシューズ、ジャズシューズなど。
※衣装を身に付ける場合はほかの人が演じている間に着替えなければなりません。
・大道具は勉強机と椅子が2セット。使わなくてもOK。
・小道具の持ち込み可能。ですが、各自で準備すること。
・演技時間は1人につき1分。3人なら3分。
・ほかの人が演じている間は鑑賞、あるいは自分たちの準備。妄想はいいですが、私語厳禁です。
・先生はドSのオネエ。名前、ダメ、絶対! ただし、怖いだけではないんです……。
・ロミオとジュリエットのワンシーンが課題。
アドリブ有。忠実有。なんちゃって有。
詳細は『参考』と『サンプルアクション』をご確認ください。
◆参考
・授業の流れ
授業前
(時間がないので準備運動を先にやっておくようにと先生は言っています)
↓
授業開始・準備運動
(ストレッチ・筋トレ・発声など5分程度)
↓
各自ロミオとジュリエット発表。
(40分。演技時間は1人あたり1分。3人なら3分。多少の余裕はあります)
↓
クールダウンの体操 ※発表が長引くとなくなります。
(ストレッチを5分)
↓
授業終了。
・ロミオとジュリエットあらすじ
ロミオ:約16歳 ジュリエット:約13歳
舞台:イタリア
時間:五日間の出来事
1.ロザラインに恋するはロミオは友人に誘われ、舞踏会に忍び込む。
↓
2.そこでロミオとジュリエットは恋に落ち、勝手に結婚してしまう。
↓
3.しかし、二人の家は犬猿の仲。(モンタギュー家:ロミオ/キャピュレット家:ジュリエット)
↓
4.ロミオの友人がジュリエットの従兄弟に殺され、ロミオは仇討ちで相手を殺してしまう。
↓
5.ロミオは街を追放。
↓
6.ジュリエットはそのころ結婚話が持ち上がる。
↓
7.ジュリエットはロミオと駆け落ちしようと、結婚前夜に仮死状態になる薬を飲む。
↓
8.しかし、ロミオはジュリエットが自殺したと勘違いし、あとを追ってしまう。
↓
9.ジュリエットが目覚めた時には、ロミオは死んでいた。
↓
10.今度こそ、とジュリエットはロミオを追って自害してしまった。
↓
11.この結果、犬猿の仲だった両家は愚かさを痛感し、和解したのだった。
※ここに書いてある以外の登場人物、シーンも、もちろん大丈夫です。