「……これは、よくない」
星ヶ丘寮の清掃スタッフ、
新実 稔子はいつもの無表情を顔に浮かべるまま、じっと壁を見つめた。
通りすがりのとある路地の壁に、どこの悪ガキがやらかしたものか、怪獣のイタズラ描きがでかでかと居座っている。
クレヨンか何かで描いたものだろうか。歪な線で、しかしのびのびと描かれた怪獣は空へと向かって咆哮していて、まるで今にも動き出しそうな躍動感があった。
微笑ましくもあるものの、稔子は清掃員である。業務外の上子供のラクガキだが、見過ごすわけにはいかないと思ったのかもしれない。
「ついでに、消しとくか……」
さっそくモップを取り出した、その時に。
「……?」
気のせいかとも思われたが、そうではなかった。
『ぎゃおおおおおおん!!』
けたたましい雄たけびをあげたかと思うと、ラクガキの怪獣が動き出し、ひょいと壁の外へ飛び出してきたではないか。
実体化したラクガキ怪獣は、路地に置かれたゴミ箱を尻尾の一撃で粉砕し、ばら撒かれたゴミめがけて口から虹色の炎を吐き出し燃やしてしまった。
稔子がかすかに眉を寄せていると、どこからか声が聞こえてくる。
「おい、そいつを放っとくと、ちょっとまずいぜ」
テオである。
「神魂の影響で、ガキの描いたラクガキが動き出しちまったようだ。しかも自分をいっちょまえの怪獣だと思い込んでるからタチが悪いぜ。街を破壊しようとしてやがる……見ろ」
見れば怪獣は、何かを壊すたび、ぐんぐんと巨大化しているようだ。
最初は稔子の腰ほどの大きさだったのが、既に彼女の背丈を越えている。このままでは、どこまで大きくなってしまうやら分からない。
それにうっかり一般人にでも見られてしまえば、厄介なことになってしまうだろう。
「幸い、ぶん殴れば縮んでいって、最後は消えちまうようだ。寝子島が怪獣映画みたいに踏みつぶされる光景を見たくなきゃ、思いっきりやるんだな」
『がおおおおおおー!!』
ゴミ捨て場に転がっていたガラクタをすっかり壊してしまったラクガキ怪獣は、早くも数メートルの大きさに成長している。電信柱を薙ぎ倒し、車を踏みつぶし始めるのも時間の問題だ。
「……仕方ない」
稔子はぽつりとつぶやくと、モップを構える。
ある意味では、これも掃除の一環と言えるかもしれない。
何より、職場がなくなってしまうのは稔子にとっても困ることだろう。
『ぐおおおおーん!!』
元気に吠えるラクガキ怪獣とのバトルが始まった。
概要
今回は、動き出した子供のラクガキとバトルするシナリオになります。
ラクガキは、星ヶ丘地区、シーサイドタウン、旧市街に一体ずついます。
それぞれ、何かを破壊するたびに大きくなっていき、殴られると逆に小さくなっていきます。
子供の描いたラクガキなのでちょっと可哀想に見えるかもしれませんが、
寝子島が壊されてしまうよりはマシというものです。
バトルで遠慮なくぶっとばしてしまってください!
ポータルから現れる者たち
動き出したラクガキは以下の三体です。
以下のラクガキのうち、どれに対処するか、一つを選んでアクションに書いてください。
ラクガキたちは、各地で何かしら物を壊そうとしています。
壊すのを邪魔しようとすると、怒って攻撃してきます。
うっかり皆さんの持ち物を壊されたりすると、それらもカウントされてしまいますので、ご注意ください。
○星ヶ丘地区:ラクガキ怪獣
二足歩行の恐竜のような、歪な線のラクガキ。
長い尻尾で薙ぎ払い、口からは虹色の炎を吐く。
鳴き声が非常に大きく、大変に近所迷惑。
○九夜山:ラクガキロボット
とあるアニメの主人公が乗り込む巨大ロボットを描いたと思われるラクガキ。
胸の発射口からビームを放ち、森の樹々を薙ぎ倒している。
背中の歪んだ翼で飛行する。飛ぶのはあまり上手くないようだ。
○旧市街:ラクガキ戦車部隊
勇ましく進軍する七台の戦車たち。だが、砲塔は曲がっている。
発射された砲弾はどこへ飛んでいくか分からない。
車体が歪んでいるので真っすぐ走れない。走り出しては何かにぶつかって物を壊す。
備考
・武器などを持ち込むこともできますが、
一般人が普段から持ち歩いているようなもの、街中で見つかる程度のものに限ります。
・テオは、リアクションには登場しません。
・ラクガキに壊されてしまったものは、ラクガキをやっつけることができれば、元どおりになるようです。
ラクガキに負けてしまったら、壊れたものはそのままです。
それでは、ご参加をお待ちしています!