あそぼうよ、とその口は確かに動いたけれど、言葉は届かない。楽しげな笑い声だけが、やけに遠く響く。
「ふむ。どうしたものかな?」
桜 月が、月夜の散歩を楽しんでいた時のこと。人気のない旧市街のとある路地に足を踏み入れたところで、肩を叩かれた。
不思議な子どもだ。身体は半透明に透けていて、顔は良く見えない。月の光にぼんやりと輝いているが、影が差している膝下は消えてしまったかのように見えなかった。
「遊ぶといってもね。こんな夜中に何をして……あ。どこへいくんだ?」
かくれんぼか鬼ごっこにでも誘っているのか、子どもは路地の向こうへと駆けだした。
差し込む月光が途切れるとその姿は消え、光の帯の中では再び姿を現す。月の下でしかその姿は見えないらしい。
少し迷っていると、どこからか声が聞こえた。
「……ちっ。まずいな」
不機嫌そうな声は、
テオのものだ。
「神魂の影響で、この路地が別世界へ繋がっちまったようだ。見てみろ」
路地は既に旧市街ではなく、目の前には奇妙な光景が広がっていた。
汚れたコンクリートの背の高い建物が乱立し、そこらじゅうに見たこともない言語のネオンサインがぎらぎらと輝いている。
頭上ではやけにまぶしい大きな白い月が、こちらを見下ろしていた。
「夜が明けるまでにあの子どもを捕まえないと、寝子島がこの異世界に呑み込まれちまうぜ。誰もが、月の下でしかお互いを見ることができない……そんな世界になるってこった」
テオの言うことは恐ろしげに聞こえたものの、つまりあの子どもと追いかけっこをすればいいわけだ。
「たまには子どもの遊びに付き合うのも悪くはないかな」
彼女が微笑むと、くすくすと笑う子どもの声が路地へと反響した。
月の光は、人を狂わせるという……彼女は気付いていなかった。
子どもを追うその背中を、暗闇から住人たちが覗いていることに。
高城ヒトです。よろしくお願いします!
概要
気づくとあなたは、不思議な『月光通り』へと迷い込んでしまいました。
夜にだけ現れる奇妙な路地で、未知の言語で書かれたネオンサインがあちこちに掲げられ、
背の高いコンクリートの建物が乱立していて、まるで迷路のように入り組んでいます。
目的は、そんな路地に暮らす一人の子どもと追いかけっこをして、最終的には捕まえること。
誰かが捕まえることができれば、子どもは満足し、皆さんは寝子島へと戻れます。
夜が明けるまでに捕まえることができなければ、寝子島はこの路地のような異世界と同化してしまいます。
通りには、子ども以外の住人たちもいるようです。
月の光しか浴びることのできない彼らは、例外なく狂っています。
皆さんを見つけると襲いかかってくるので、気を付けてください。
子どもや住人たちは、彼らが月の光を浴びている時にだけ、見ることができます。
暗闇の中では見えませんが、触れることはできます。足音も聞こえるかもしれません。
アクション
奇妙な月光通りで、あなたが何をするのか教えてください。
なお、住人には武器を持っている者、巨漢な者、動きが素早い者などがいるようです。
<アクションの例>
・住人たちから逃げながら、子どもを追いかける。
・子どもには構わず、住人たちから逃げまくり怖い思いをする。
・住人たちと思い切りバトルする。
・いつの間にか自分も通りの住人になっていた。
備考
・電話などの連絡手段は使えないようです。
・テオは基本的に、リアクションには登場しません。ご了承ください。
以上、お気軽にご参加ください!