休日の旧市街にて。
桜庭 円は、
「もし、すまぬ」
と、不意に声を掛けられた。
声の方を振り返れば、立っていたのは赤銅色の髪を個性的にセットした30代頃の男だ。
いや、20代だろうか。若々しく見える瞬間もある。
それでいて、もしかすると40代に近いのだろうか、と思わせるような落ち着きも時折覗いた。
ともあれ、男の服装は、物語に登場する吸血鬼もかくやというゴシック調。
一言で言うと、かなり派手な様相だ。
それなのに、男はまるで彼自身が何かの影であるかのように影が薄い。
「えーっと、ボクにどんな用事?」
「うむ。貴殿は、自分以外の誰かになってみたいと思ったことはないかね?」
「へ? 自分以外の誰か?」
繰り返す円へと、男はようやっと口元に淡く笑みを乗せた。
男が言うには、彼は寝子島の人々の『自分以外の存在への憧れ』が形を取った存在らしい。
また、神魂である。
「1日限りではあるが、私は貴殿らの自分以外の存在になりたいという願いを叶えることができる」
「1日だけなら、誰にでもなれるってこと?」
「いや、なれるのは、《誰でもない誰か》だけだ」
曰く、例えば知り合いのあの子になりたい! という願いは叶えられないらしい。
その代わり、とびっきりの美少女になりたいとか、個性の薄い青年になりたいとか。
そういう、抽象的な存在になりたいという要望には応えられるのだと男は言った。
「与えられた時間と同じく、我もまた1日限りの命。なるべく多くの願いを叶えたいのだが……」
貴殿は、この奇怪な魔法には興味はないか?
そう問われて――円は、赤の双眸を煌めかせた。
「――さて、どうしようかな?」
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
桜庭 円さん、ガイドへの登場誠にありがとうございました!
なお、もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドは一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
以下、シナリオの詳細でございます。
このシナリオの概要
季節は春、時はとある休日。
神魂から生まれた存在(ガイド本文に登場の男)の力で、
PC様はその日一日、《誰でもない誰か》に変じることができます。
他のPC様やNPC、或いは自分の家族などの既に存在する(または存在していた)誰かにはなれませんが、
絶世の美女、厳つい大男、愛らしい少年、茶トラの猫……などなど、
抽象的なイメージから生まれる《誰か》になら、基本的に何にでもなれます。
但し例外として、寝子島のフツウを乱すようなものにはなれません。
(NG例:天使の羽を生やした少女、空想上のモンスター、人の言葉を喋る犬)
神魂の力は日付が変わると同時に消えますが、
強く念じれば、お好みのタイミングで元の姿に戻ることも可能です。
なお、男は神出鬼没なので、概ねどこででも出会うことができます。
GAを組んで、友だち(Aさん)は変身せずにいつものままだけれど、
自分(Bさん)は変身して2人で一緒に時間を過ごす! といった楽しみ方も勿論OKです。
その際、BさんがAさんに対して「自分の正体を隠したまま接する」か、
或いは「自分の正体を暴露して接する」か、といった関わり方は、お好みでどうぞ。
また、このシナリオでは登録NPCに出会うことができます。
但し、不自然な形での登場は採用いたしかねますのでご注意ください。
なお、特定のマスターさんが主に担当しているNPCの描写はごく軽めのものとなってしまいますので、
今回はお控え願えますよう、よろしくお願いいたします。
それでは、自分ではない《誰か》として過ごす時間、お楽しみくださいませ。
ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!