「ねえ、知ってる?」
小雨降る4月のある日の夕暮れ刻。
並んで一緒に歩きながら、
七夜 あおいは薄い雨雲の切れ間からひょっこり覗いた白い月を見上げて、ふと思い出したように
鴻上 彰尋に問いかけました。
「寝子ヶ浜海岸で猫の目みたいなシーグラスが取れる場所があるんだって」
「猫の目のシーグラス? いや、知らないな」
「それってね、月猫の涙なんだって」
「月猫?」
首を傾げる彰尋に、あおいは「あのね」と話し始めます。
それは、以下のような物語でした。
『月から来た月猫』
空にぽっかり浮かんだ月には、実はうさぎのほかに猫も住んでいました。
猫は好奇心が強いもの。中でも特に好奇心の強い1匹の月猫がいて、その月猫は、
月猫の王様が住む宮殿にある『満月の夜にだけ開く窓』からこっそり地上の様子を眺めることが好きでした。
ところがある日、前足をすべらせて、月猫は地上へまっさかさま。
海に落ちてけがをすることはなかったのですが、そのままどんぶらこっこと流されてしまいました。
流れついた先で、月猫は必死に月へ戻る方法を探します。
しかし地上に住む動物たちは、だれも帰り方を知りません。
彼らにとって、月とは眺めるもので、行く場所ではなかったからです。
途方もなく長い間、地上のあちこちをさまよった末、月猫はこの寝子島へたどり着きました。
そしてひとりの少年と出会ったのです。
「どうしたの?」
海岸に座り込み、満月を見上げて泣いてる月猫を見かけて、少年は声をかけました。
月猫は答えます。
「ここから見上げるお月さまが、自分の知ってるお月さまに一番似てるんです」
そして月を見上げて「お母さん、お父さんに会いたい、友達に会いたい」と、
大きな緑色の目からぽろぽろぽろぽろ涙をこぼしました。
涙は金色のシーグラスとなって、砂浜に転がります。
見ると、浜辺には金色のシーグラスが数え切れないくらいたくさん落ちていました。
少年は月猫がかわいそうになりました。
帰り方を知っていたら教えてあげたのですが、残念ながら少年にも分かりません。
そのかわりに、毎晩海岸を訪れて、月猫の話し相手になってあげていました。
こうして友達ができた月猫は、だんだんと涙をこぼさなくなったのですが、
何回目かの満月の夜、月の光とともに王様の声が聞こえてきたのです。
「やっと見つけた、愛しいわが子。今、月のきざはしをかけるから、それをのぼって戻ってきなさい」
そして月から白く輝く階段がするすると下りてきました。
上のほうでは月猫の家族や友達が、うれしそうに手を振っています。
そのことに少年もすごく喜んで、早く上るように月猫を促しました。
最初は喜んだ月猫でしたが、すぐにその笑顔を消して、しょんぼりと少年を見上げました。
今度は少年と別れるのがさびしくなってしまったからです。
けれど、帰らないわけにはいきません。
月猫は見送る少年を振り返り振り返り、月のきざはしをのぼって行きました。
月へ帰った月猫は、それからは地上の友達を思って窓から地上を見下ろすようになりました。
そのときこぼれ落ちる涙は、地上の色を写して青と緑のシーグラスになりました。
ですから、青と緑の猫の目のシーグラスは、満月の夜にしか見つからないのです。
~おしまい~
話を終えたあおいに、彰尋は訊きました。
「ほしいの?」
「うん。聞いたら、なんだかほしくなっちゃって。
探しに行きたいけど、でも夜じゃないと見つからないそうだから……夜の海岸にひとりは危ないからやめたほうがいいって言われちゃった」
残念そうなあおいを見て、彰尋は衝動的に口走っていました。
「俺も一緒に行こうか? ――あ、いや。もちろんほかのやつらも誘ってだよ。大勢で行けば、危険はないし。それに、宝探しみたいで楽しいだろ?」
「……一緒に行ってくれる?」
「うん。俺もそのシーグラス、見てみたいし」
「よかった。ほんとはすっごく行きたかったんだ。ありがとう、彰尋くん」
うれしそうなあおいを横目で見ながら、彰尋は考えました。
もし見つけることができたなら、アクセサリーにしてプレゼントしてもいいかもしれない。自分で加工する場所や道具を貸してくれる店が、たしか旧市街にあったはずだと。
こんにちは。またははじめまして。寺岡志乃といいます。
今回のシナリオは【寝子ミー】寝子島セカンドマップ提案所にご提案いただきました、鴻上 彰尋さんの発案が元となっています。
とてもすてきなご提案をありがとうございました。
ガイドにご参加いただきましたが、決してご参加を強制するものではありません。
もしご参加いただけるのでしたら、ガイドは気にせずご自由にアクションをかけてください。
なお、寝子ヶ浜海岸には普通のシーグラスもあります。猫の目シーグラスが見つかる可能性は、四つ葉のクローバーが見つかるくらいの確率です。残念ながらゴロゴロしているわけではありませんが、宝探しのように、猫の目シーグラス探しを楽しんでいただけたらと思います。
こんなシーグラスがあるといいな、というご希望がありましたら、書いておいてください。善処します。
シーグラス以外にもこんなものがあるといいな、というご希望がありましたら、一応書いておいてください。あるかもしれません。
NPCについて
ガイドに登場しています、七夜 あおいのほか、寺岡のシナリオに出てきたNPCは呼び出し可能です。
それ以外のNPCは呼び出せませんのでご容赦ください。
(※中山 紗那はもう本土に戻っているため呼び出せませんが、話題にすることはできます)
アクセサリーづくりについて
拾ったシーグラスをアクセサリーにしたい、という場合、雑貨店『memoria』に持ち込んで、ワークルームをレンタルして作成することになります。道具は全部揃っていますので、材料さえあれば作れます。シーグラス以外の材料は、前もって用意してきたか、『memoria』で購入したことになります。
ただし、こちらがシナリオのメインではありませんので、あっさり描写になります。
それでは、ご参加お待ちしております。