『恐怖! 九夜山を彷徨う原生民族を見た!』
センセーショナルな煽り文句とともに、手ぶれした写真には明らかに工具用のハンマーを持った原始人? のコスプレをした男が写っている。
……我々、寝子タブ記者は島内では禁忌として誰も立ち入らない九夜山の一角へと向かった。そこは鬱蒼とした密林であり、寝子島にはありえないような熱帯の植物が咲き乱れていた。歩を進めるごとに土壌は水分を含むようになり、記者の体からは春だというのに汗が絶え間なく流れ続けるようになっていた。謎の甲虫や毒蜘蛛を避けながら探索をすること数時間、記者の意識が朦朧とし始めたその時……!
「ゴシップ紙らしいといえばそうかもしれないが、あまりにあからさますぎるのではなかろうか」
寝子島タブレット(週刊)、通称寝子タブを読んでいるのは
相楽 茉莉花。オカルト好きの自称魔女である。
駅のガス灯の下で彼女は記事を読み進めていく。
寝子島の観光大使の中身についての記事や寝子島校長のギャグ集などが書かれていることを確認して、茉莉花は寝子タブを折り畳みため息をつく。
「特にオカルティズムな内容はなかったか」
「あら、茉莉花ちゃんも読んでるんだ?」
茶色のポニーテールを揺らしながら話しかけてきたのは寝子島高校国語教師の
久保田 美和で、その手には茉莉花と同じものが握られている。
茉莉花のものとの違いは、恋占いの項に赤線が引かれていることくらいだろうか。
「ええ、さして興味をそそるものはありませんでしたが」
「けっこう面白いと思うんだけどなー」
と、しばらく二人で他愛もない話をしているところに別の声がかかる。
「そ、その手にあるのは我が寝子島タブロイド! ご愛読ありがとうございます!」
唐突に若い眼鏡の男に頭を下げられ困惑する二人。男は手にビラを持っており、それには手書きで『寝子タブ取材協力者急募』と書かれている。
「誰だ?」
「寝子タブの記者の方かなー?」
「失礼しました! 僕は寝子島タブレット超常現象及び未確認生物担当記者の水口と申します!」
水口と名乗った男はその胡散臭い肩書きを誇らしげに名乗る。服装もいかにも探検隊といった、茶褐色のサファリジャケットにサファリキャップである。
「私は寝子島高校教諭の久保田です。こちらは生徒の茉莉花ちゃん。よろしくねー」
胡散臭い水口に警戒した様子もなく美和はお気楽に話しかける。
茉莉花は少し警戒して彼に会釈をするに留める。
「宜しくお願いします! ……突然で恐縮なのですが、愛読者のお二人に取材のお手伝いをして頂きたいのです。こうしてビラを配りながら愛読者の方を中心に声をかけているのですが、なかなかうまくいかず。普段なら諦めるのですが、次回の寝子タブは超常現象、珍獣、オカルト、都市伝説大特集! と銘打った特集号の予定なのです! が、ネタがありません。しかもいつも僕が書くネタはばればれのやらせ記事で編集長に怒られてばかり。特集号の結果には僕の来月の給料がかかってるんです! きっと愛読者の皆さんなら編集長も読者の方も納得のできるようなすっごいネタがあるに違いないと思いまして声をかけた次第です!」
拳を握り熱く切々と語る水口の様子にさすがの美和もちょっと引いたようだ。
「とはいっても、私たちが知っているのもそのへんの噂程度で記者さんのような専門の方に比べたら大したものは……」
言葉を濁す美和。それに対して唇の端を歪めて悪巧みをするような笑みを浮かべる茉莉花が口を開いた。
「つまり、記事になるようなネタを作ればよいということか? ふふん、都市伝説をさらに真実味を帯びたものにするというのはなかなか面白そうではないか」
「是非是非お願いします! 現場には私も赴きますのでよい写真が取れるといいなぁ、ハァハァ」
「じゃー私も行こうかなー、恋のおまじないなんかあったら嬉しいし」
三者三様ではあったがこうして寝子島タブレットへの取材協力は始まったのであった。
初めまして、深城和哉と申します。
噂や伝説というのは不思議なものでして、その実態が分からなければ分からないほど想像を膨らますものです。
科学の発達していなかった時代は正体不明のものに神性を見出したり、時として畏れるべき怪異として人々は祈ったりしておりました。
現代社会においては逆に科学が発達しすぎて、仕組みの分からないもの(機械、薬品など)や手順の見えないもの(加工済みの食品など)を信じて使うしかない状況にあります。
そんな曖昧さの中で噂や都市伝説は、人々の文化として広がっていくのでしょう。
それが真だとしても偽だとしても。
人々は信じたいものを取捨選択して生きていくものです。
目に映るものは本当に"ソレ"なのでしょうか?
私たちが見ているものは同じなのでしょうか?
……前置きが長くなりました。
シナリオの解説に参ります。
○寝子島タブレット(通称:寝子タブ)
週刊のゴシップ紙です。
寝子島の観光情報から大小様々なイベントや出来事、事実確認の取れない怪しい噂まで幅広く、誇張を織り交ぜて書くのが特徴です。
特にオカルト分野の記事は不人気で担当記者の給料が毎月減っているようです。
○水口(みなぐち)記者
寝子タブの記者です。
超常現象や未確認生物などが三度の飯が大好きというちょっと変わった人です。
記事を書くたびに明らかなヤラセがばればれで編集長に怒られてばかりいます。
次回の特集号には来月の給料の八割がかかっているらしく必死です。
●何をするの?
水口記者が寝子島全域を駆け回り、写真を撮ったり記事用のメモをとります。
皆さんには『仕掛け人』になってもらい、様々な噂・都市伝説・超常現象・珍獣などを創作(再現)して記者に見せてあげてください。
もちろん、記者のお手伝いをしてくださってもよいです。写真を撮ったりなど。
美和ちゃん先生は恋のおまじないやジンクスを探しているのでそちらの創作でも構いません。メインの記事にはなりませんがこれも記事になります。
また、寝子島全域を舞台にできます。
●どんなネタがあるの?
水口記者や寝子島で噂になってるネタの一部です。
『偽でん』
偽でんと呼ばれる存在しないはずのねこでんが深夜にドリフトをしながら爆走している。
『勝利の赤いパンツ』
試験や勝負事に赤い下着を履いて挑むと必ず勝利が掴める。
『ハートスッポン』
シーサイドタウンの水族館の爬虫類コーナーにはハートの模様の入ったスッポンがおり、それを見つけると意中の人と恋人になれる。
もちろんネタを1から創作してくださっても構いません(上級者向け?)。
●注意!
ネタにつきましてはパロディネタなども歓迎ではありますが、固有名詞などについてはもじる可能性がありますことをご了承下さい。
また、犯罪に繋がるような行為につきましても採用できない場合がございます。
ネタの再現においてはろっこんを使用される場合も多々あると思いますが、一般人の前での使用になりますので発揮できない場合もあります、ご了承下さい。
とはいえ、ゴシップ紙のオカルト記者ですのであまり神経質になる必要もないかもしれません(基本的に読者も話半分程度ですので)。
●その他
自由度の高いシナリオですので、アクションを書きづらいかもしれません。
その際は何人かでグループを作ってアクションを書かれると1人ではできないこともできるようになると思います。
それではこの物語が皆様にとって刺激的な日常と非日常になりますように。