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訳アリ物件、求婚幽霊つき
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春は引っ越しの季節。
こんな時期には、いわゆる『訳アリ物件』の話も小耳に挟むというもので……。
「いやあ、あなたなら、こんな話もご興味あるかと思いまして」
若い不動産屋の男が、雑誌の編集者に紹介されたというとある男性に向かって声をかけた。
「こちらのお部屋ですよ、ホラー画家のKISHINさん！」
訳アリ物件だというシーサイドタウンのとあるマンションンの一室に案内され、KISHINこと久須部 紀伸は曖昧に苦笑した。
部屋は南向き。にも拘らず、澱んだ空気や据えたような匂いを感じるのは、訳アリだと聞いているせいだろうか。
「で、何が出ますか」
単刀直入に紀伸が尋ねると、不動産屋は声を潜めた。
「女です。夜寝ていると、天井から長い黒髪が垂れてきて、女が寝顔をじっと覗き込んでくるというんです。見た人によると、２０代前半の意外と美人な女だそうで」
「なるほど、幽霊が美人なのは意外ではありませんが」
この部屋では約３年前に、女性の自殺があった。遺書には、１０年も同棲したのに結婚直前で捨てられて若い女のところへ行った恋人への恨み辛みが書かれていたという。
不動産屋は１年ほど部屋を寝かせたのち、家賃を下げて部屋を貸し出すことにした。まもなく訳アリでも安ければ気にしないという若い男性が借りたのだが、女の霊を見たと言って３日で退去。その後も人が居つかないのだという。
「それがですね、女の霊を見るのは決まって１０代後半～４０代の男性で……」
「女性は見ないんですか」
「基本的にはそうなんです。しかも、女は男の耳元でこう言うそうなんですよ。――『結婚して』」
「それほど珍しいことでもないように思いますが……」
この手の話に強い紀伸としては、その程度のことかと興味も薄れ、知人に紹介された手前失礼のないように帰らなくては……などと考えながら、ふと洗面所の棚をあけたその瞬間、その目に飛び込んできた。
『これを見た者は、今夜、プロポーズしてくれる』
「……ふざけたイタズラを」
不動産屋の男に教えておこうと声をかけるが、反応がない。
たいして広い家でもないのに、どこを探しても見当たらないし、玄関には自分の靴しかない。
おかしいなと思いながらもう一度洗面所の棚をあけてみると、そこに文字はなく、まだ新しい血が滲んでいるように見えた。
「…………」
紀伸は、不動産屋がここに来るときに言っていたことを思い出した。
「この部屋に興味を持つ人、持ってほしい人、持ってしまう人をみんな集めましてね、宿泊体験会をやってみるつもりなんです。どうですか、お部屋の契約も、その他の契約も、歓迎ですよ」
そのときは「その他の契約」とは何のことを言っているのか深く考えもせずに聞き流していたが……
「そういうことでしたか」
窮地に立たされながらも、合点がいってすっきりした様子の紀伸だった。
こんな時期には、いわゆる『訳アリ物件』の話も小耳に挟むというもので……。
「いやあ、あなたなら、こんな話もご興味あるかと思いまして」
若い不動産屋の男が、雑誌の編集者に紹介されたというとある男性に向かって声をかけた。
「こちらのお部屋ですよ、ホラー画家のKISHINさん！」
訳アリ物件だというシーサイドタウンのとあるマンションンの一室に案内され、KISHINこと久須部 紀伸は曖昧に苦笑した。
部屋は南向き。にも拘らず、澱んだ空気や据えたような匂いを感じるのは、訳アリだと聞いているせいだろうか。
「で、何が出ますか」
単刀直入に紀伸が尋ねると、不動産屋は声を潜めた。
「女です。夜寝ていると、天井から長い黒髪が垂れてきて、女が寝顔をじっと覗き込んでくるというんです。見た人によると、２０代前半の意外と美人な女だそうで」
「なるほど、幽霊が美人なのは意外ではありませんが」
この部屋では約３年前に、女性の自殺があった。遺書には、１０年も同棲したのに結婚直前で捨てられて若い女のところへ行った恋人への恨み辛みが書かれていたという。
不動産屋は１年ほど部屋を寝かせたのち、家賃を下げて部屋を貸し出すことにした。まもなく訳アリでも安ければ気にしないという若い男性が借りたのだが、女の霊を見たと言って３日で退去。その後も人が居つかないのだという。
「それがですね、女の霊を見るのは決まって１０代後半～４０代の男性で……」
「女性は見ないんですか」
「基本的にはそうなんです。しかも、女は男の耳元でこう言うそうなんですよ。――『結婚して』」
「それほど珍しいことでもないように思いますが……」
この手の話に強い紀伸としては、その程度のことかと興味も薄れ、知人に紹介された手前失礼のないように帰らなくては……などと考えながら、ふと洗面所の棚をあけたその瞬間、その目に飛び込んできた。
『これを見た者は、今夜、プロポーズしてくれる』
「……ふざけたイタズラを」
不動産屋の男に教えておこうと声をかけるが、反応がない。
たいして広い家でもないのに、どこを探しても見当たらないし、玄関には自分の靴しかない。
おかしいなと思いながらもう一度洗面所の棚をあけてみると、そこに文字はなく、まだ新しい血が滲んでいるように見えた。
「…………」
紀伸は、不動産屋がここに来るときに言っていたことを思い出した。
「この部屋に興味を持つ人、持ってほしい人、持ってしまう人をみんな集めましてね、宿泊体験会をやってみるつもりなんです。どうですか、お部屋の契約も、その他の契約も、歓迎ですよ」
そのときは「その他の契約」とは何のことを言っているのか深く考えもせずに聞き流していたが……
「そういうことでしたか」
窮地に立たされながらも、合点がいってすっきりした様子の紀伸だった。
ゲームマスターより
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2017年05月23日
- 参加申し込みの期限
-
- 2017年05月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2017年05月30日 11時00分
はじめまして。このたび、らっかみ！ でマスターをやらせていただくことになりました、望月カトラです。
よろしくお願いします。
ここまでガイドをお読みいただき、ありがとうございます。
久須部 紀伸さんはガイドの登場ありがとうございました。
ここまで書いておいてなんですが、この文章はあくまでイメージということで、
ご参加の際はご自由にアクションをおかけください。
参加されなかった場合は、すべては気のせいということでお許しを。
さて、あなたは訳アリ物件の宿泊体験会に招待されてしまいました。
不思議なことに、いろいろな経緯でこの部屋にやってきて、出られなくなってしまうようです。
このシナリオガイドのように不動産屋の案内ということもあれば、友だちの家に来たつもりが違ってたことも、
なんなら自分の部屋にいただけなのに気がつけばここだったということもあるようです。ドンマイ。
この部屋の事情は、不思議と知っていることにしてもいいですし、
全然知らないということでもいいです。
もしも気に入れば、１名様に限りこの部屋との契約も可能です。
もしも気に入れば、あるいは気に入らなくても、１名様かどうか不明ですが、この幽霊との契約もありそうです。
＜物件情報＞
シーサイドタウンのとあるマンション。
１ＬＤＫ南向き。この部屋だけは、家賃がタダ同然。
実は、久保田美和先生の隣室。
（久保田先生は何も気づいてませんし、たぶんリアクションにも登場しないと思います）
＜訳アリ情報＞
天井からぶら下がる女の幽霊あり。
１０代後半～４０代の男は、この幽霊を見ることになる。
幽霊ならではのあの手この手で『結婚』を迫られる。
なお、いちおう幽霊女にも好みはあり、相手にされないモテないロールプレイもＯＫ。
対象の男以外は、この幽霊を見ることはない。
３０歳までの女性は幽霊に嫌われる。
髪を引っ張られたり、水をかけられたり、あらゆる嫌がらせをされる。
ホラーですが、アクション次第でコメディになる予感もぷんぷんです。
幽霊にこんなことされて～という、通常なら確定ロールになるようなアクションも、今回はＯＫです。
・ただ幽霊を見てみたい
・お祓いしてみる
・同居してみたい
・なんなら結婚する
など、自由なアクションをお待ちしています！