人の気配がない、坂と階段の多い、ノスタルジックな夕暮れの街で一つ事件が起きていた。
不思議な街の唯一灯りが灯る雑貨屋の前で、一人の着物姿の女性が煙管をふかしている。
「困ったねぇ」
不思議な街の雑貨屋の女主人は、さして困った様子もなく煙管をふかした。
背にはからっぽの店。何にもない。
何故なんにもないかというと。
「先日のアレが大分刺激になっちまったみたいだ」
“先日のアレ”とは、寝子島の島民が数日にわたり訪れた日の事だ。
街には普段、ひと月に一人か二人の迷い人はある。しかしあの一週間は多かった。集団で、しかも日を置かずに何人もだ。
その上、主人は気まぐれを起こして迷い人たちに、“想い”を聞かせてほしいと言った。
それがまずかった。
普段聞かない世界のこと、想いは閉ざされた街には少々刺激が強すぎた。
好奇心を刺激された以下、数点の商品と約一匹の猫は、外に飛び出していってしまったというわけだ。
ふーと紫煙が夕暮れの空にのぼる。
「しょうがないねぇ……。たまには出るか」
そういって主人は、かかとを一つ鳴らした。
まるで魔法のようにパッと主人の召し物は和服から、現代のカジュアルな服へ。髪型も襟足で一つ結びにした簡単なものに。
その姿のまま、女主人は外の世界へ繰り出した。
◆
in寝子島。
高校近くの路地。
女主人は以前見かけたことのある、帰宅途中の
八神 修に声をかけた。
「やぁ、手伝ってほしいことがあるんだ。話を聞いてくれるかい?」
「あなたは」
あの時と同じように、自転車のかごに猫を一匹乗せた修は、突然の見知ったひとの意外な登場に驚いて目を丸くした。
姿がまるで違うのにも少し驚いていたが。
「あの時以来だねぇ。急ですまないね。フツウじゃないことが起きて困ってるんだ。うちのフツウじゃない商品が逃げ出してね。正確には商品五つと猫が一匹」
「商品と、猫?」
「そうさ。皆荒くれもので、私一人じゃ骨が折れてね。手伝ってくれると嬉しいんだけど」
「……もちろん、俺でよければ手伝います。詳しい話を、聞かせてくれますか?」
動物好きな修にとって、猫と聞けば放っておけない。
修の言葉に、女主人はにっと嬉しそうに笑った。
「もちろんさ、まずは──」
◆
少し前、人混みの中。
ふよふよと本が宙を舞っている。
それを見かけた人は、まさか本が宙を舞うなんて思わず目をこすって忘れるか。
興奮気味に誰かに話しても笑われるだけで信じてもらえなかったり。
要は、不思議はおばけみたいな扱いを受けてフツウを維持していましたとさ。
見つけるなら今。
これ以上騒ぎになる前に、急げ!
二度目まして、こんにちは。あおじゆうです。
不思議な街の出張トラブルです。よろしくお願いします。
◆前回のお話
関連付けされていますが、こういう街があるよという雰囲気だけなので、読まなくても全く問題ありません。
◆概要
動く商品が逃げたから追って回収して、主人のところに持ってきて! というお話です。
◆できること
探索(一品に絞ると見つかりやすくなるかも……?)
関係ないけど、女主人と観光したい
◆できないこと
商品の破壊(故意にはできません)
不思議な街に行くこと(今はそのタイミングではないようです)
以下は店主からの情報です。
◆商品の保全
できれば壊さないでほしい。
捕獲したら、主人から預かった袋に入れてほしいとのこと。
●逃げ出して迷い込んだ商品一覧
◆泳ぐ魚
骨の魚。360度どこから近づいても素早く逃げる。
海の見える景色が好き。好物は小魚。
移動手段は泳ぐ。
◆透明な飴玉
舐めるとひゃっはーーな気分になる危険な飴玉。
透明なので気づかれにくい。ガラスの小瓶に数個の集団で入っている。
小学生くらいの子供が好き。
移動手段は跳ねる。
◆香り袋
嗅ぐと、目の前にいる人に惚れてしまう香り。(同性異性関係なく)
古風な布で手縫いされている。
男女の多い場所に出没する。
捕らえる際はマスクを忘れずに!(香りはこれで防げます)
逃げない。
◆自動筆記羽ペン
人の想いを自動的に書き連ねる黒い羽ペン。
学校が好き。
逃げない。
◆人食い本
読めない字でかかれた本。
目的のない人物が開くと噛み付く。
紐綴じの本で、背表紙も読めない。
本の多い場所が好き。
主人曰く「詩集」だという。
逃げない。が、上記の理由で開く場合は注意すべし。
◆店主の猫
黒猫。目が金色。
人に化ける。少女に化ける。
逃走計画の首謀者。喋る。
一番高い所が好き。
捕まえられれば観念するらしい。
NPC情報
◆雑貨屋の女主人
名前を出すタイミングがわからず未だに名乗ってない雑貨屋の女主人。
一緒に探索したいなどあればいってくだされば対応します。ヒントを出してくれることも……?