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桜の雨が降る前に
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午後から気の早い陽気がやってきて、よく暖房が効いた体育館に詰められた生徒たちの制服の内側を、汗がしっとり濡らした。
「——当日はご家族、来賓の方々、地域の皆様もおいであそばされますから、二年生と一年生は在校生の代表としてきちんとした態度で式典に……」
杉村校長の有難い話しはまだ続いていて眠気を誘う。一人の生徒が欠伸をすると、綺麗に左右に連鎖していくので、壇上でそれに気づいてしまった年若い川村先生は、笑いを堪えるのに必死だ。
少し不真面目に俯けば、ワックスがけされたばかりのピカピカの床材の上に敷かれた外履用の緑色のマットが目に映り、ちょっとした非日常を感じさせてくる。
＊
漸く掛けられた号令の後は自由解散だったので、我先にと押し寄せる生徒たちで扉の前はすし詰めになってしまった。
少し離れた位置で波が引くのを待っていた三年生の貴家 衿花は、後方に聞こえる「先輩」が、自分を呼んでいるのだと暫くして気がついた。
「呉井君。なんだか疲れた顔に見えるけれど」
「杉村校長先生の話しが長くて。気合が入ってるんですかね」
衿花は「そうかもしれないわね」と答えながら、きつくつり上がっている目尻を少し下げて、一学年下の後輩呉井 弦月と視線を交わした。
伊達眼鏡の下の深い青色の瞳を見つめた途端、弦月は衿花に声を掛けた理由をはっと思い出した。
「高校進学おめでとうございます！」
「有難う、少し気が早いような気もするけど。でも卒業祝いじゃなかったら、今でいいのかしら？」
祝いの言葉を貰った衿花が、戸惑っていたのは少しだったが、その短い時間に卒業のふた文字を反芻した弦月は、長い睫毛を寂しげに伏せた。
「呉井君？」
衿花が妙な空気を纏った顔を覗き込むと、弦月は考え込むように静かな声で言う。
「卒業式が終わったら、こうして偶然会って挨拶するなんて事も減るんですね」
「そうね。……でも」
中学三年生で居られるのはあと僅かなのだから、先輩として後輩へ言葉を掛けてあげたい。
「校舎では会えなくなるけれど、進学先の高校だってすぐそこよ」
衿花が外では慣れない笑みを作ってみせると、励まされた弦月も笑顔になる。
よき先輩と、よき後輩。
出会いの頃は互いにぎこちなかったかもしれないが、今となってはそんな事も大事な記憶だ。
そんな彼らのように、それぞれの思い出を胸に溢れさせながら、あと数日——、
またたび市立 寝子島中学校は、一年を締めくくる日、『卒業式』を迎える。
「——当日はご家族、来賓の方々、地域の皆様もおいであそばされますから、二年生と一年生は在校生の代表としてきちんとした態度で式典に……」
杉村校長の有難い話しはまだ続いていて眠気を誘う。一人の生徒が欠伸をすると、綺麗に左右に連鎖していくので、壇上でそれに気づいてしまった年若い川村先生は、笑いを堪えるのに必死だ。
少し不真面目に俯けば、ワックスがけされたばかりのピカピカの床材の上に敷かれた外履用の緑色のマットが目に映り、ちょっとした非日常を感じさせてくる。
＊
漸く掛けられた号令の後は自由解散だったので、我先にと押し寄せる生徒たちで扉の前はすし詰めになってしまった。
少し離れた位置で波が引くのを待っていた三年生の貴家 衿花は、後方に聞こえる「先輩」が、自分を呼んでいるのだと暫くして気がついた。
「呉井君。なんだか疲れた顔に見えるけれど」
「杉村校長先生の話しが長くて。気合が入ってるんですかね」
衿花は「そうかもしれないわね」と答えながら、きつくつり上がっている目尻を少し下げて、一学年下の後輩呉井 弦月と視線を交わした。
伊達眼鏡の下の深い青色の瞳を見つめた途端、弦月は衿花に声を掛けた理由をはっと思い出した。
「高校進学おめでとうございます！」
「有難う、少し気が早いような気もするけど。でも卒業祝いじゃなかったら、今でいいのかしら？」
祝いの言葉を貰った衿花が、戸惑っていたのは少しだったが、その短い時間に卒業のふた文字を反芻した弦月は、長い睫毛を寂しげに伏せた。
「呉井君？」
衿花が妙な空気を纏った顔を覗き込むと、弦月は考え込むように静かな声で言う。
「卒業式が終わったら、こうして偶然会って挨拶するなんて事も減るんですね」
「そうね。……でも」
中学三年生で居られるのはあと僅かなのだから、先輩として後輩へ言葉を掛けてあげたい。
「校舎では会えなくなるけれど、進学先の高校だってすぐそこよ」
衿花が外では慣れない笑みを作ってみせると、励まされた弦月も笑顔になる。
よき先輩と、よき後輩。
出会いの頃は互いにぎこちなかったかもしれないが、今となってはそんな事も大事な記憶だ。
そんな彼らのように、それぞれの思い出を胸に溢れさせながら、あと数日——、
またたび市立 寝子島中学校は、一年を締めくくる日、『卒業式』を迎える。
ゲームマスターより
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2017年03月09日
- 参加申し込みの期限
-
- 2017年03月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年03月16日 11時00分
皆さんこんにちは、東安曇です。
こちらは劇中三月中旬に行われる『寝子島中学校の卒業関連の出来事』を扱うシナリオです。
卒業生や在校生は勿論のこと、中学生のＰＣでなくても関連するアクションでしたらご参加頂けます。
アクションは、前日から当日の夜までを反映致します。
複数に渡る行動の場合、リアクションでの一つ一つの描写が短くなってしまう場合がございますので、ご注意ください。
ガイドには卒業生として貴家 衿花さんに、在校生として呉井 弦月さんにご出演頂きました。有難うございます。
それでは、皆さんのご参加をお待ちして居ります。
式典について
※アクションがなければ、リアクション内で詳しく触れることは有りません。
▼式典の内容
式典は１０時から１２時まで、卒業証書授与など一般的な内容が体育館で行われます。
ＯＢや近所の方など、一般のお客様もご覧頂けます。
在校生及び卒業生は９時に登校し、１２時に式典が終わったら教室へ戻り、ＨＲの後自由解散です。
▼送辞と答辞について
在校生を代表しての送辞はひと組（１人または１グループ）、卒業生を代表しての答辞も同じです。
ご希望のＰＬ様は、参加確定後４８時間以内に希望ＰＣでコメントページにて立候補をお願い致します。グループの場合は、代表のＰＣがメンバー全員の名前を記入して下さい。
立候補者が複数いた場合は、サイコロの右の目の数が多かった方が当選します。
同点の場合は、左の目の数も含めます。更に同点の場合は、ＮＰＣが代理でサイコロを振って決定致します。
また上記の決定の経緯と、シナリオでのＰＣの立場は関係ございません。
アクションでは自薦他薦問いませんので、「強く希望した」「先生に押しつけられてしまった」などご自由にどうぞ。
送辞や答辞の内容でリアクションに反映希望のものは、アクションに記載して下さい。
内容は一般的なスピーチの他、歌や踊りなどの芸など特殊なものも認められます。
なお、希望者がいらっしゃらなかった場合は、ＮＰＣが担当致します。
ＰＣの家族や友人について
▼未登録キャラクター
今回のシナリオでは、家族やクラスメイトなどの未登録のキャラクターを、登場・反映させることが可能です。ＰＣとの続柄は必ずご記入ください。
お相手のキャラクターはＮＰＣ寄りで描写致します。人数が多くなると「同行していた」「その場にいた」程度の描写になります。
名前や容姿などの情報はアクションと一緒にご記入ください。口調など指定がない場合、ほとんど喋らなくなるのでご注意ください。
▼登録済みのキャラクター、ＧＡ
また既にキャラクター登録されているＰＣは、ＧＡでのご参加をお願い致します。
登録済みのキャラクターは、シナリオ未参加の場合、アクションを頂いても登場出来なくなってしまいますのでご注意ください。
ＮＰＣ
寝子島中学校のコミュ内に記載されております先生ＮＰＣと、以下のキャラクターにアクションを掛けることが出来ます。
＜３年２組＞
三宅 ゆり：面倒見がよく姉御肌な女生徒。その為後輩にも慕われているでしょう。ギャルっぽい外見とは裏腹に、式の最中はびしっとしています。
式の後は何の予定もなければ、友人達とカラオケにでも行くつもりです。
＜３年１組＞
イリヤ・ジュラヴリョフ：３年生の秋にロシアより転入してきた。周りの空気に合わせています。
式の後は何の予定もなければ、旧市街のミルクホールへ帰宅します。
日本橋 泉：３年間殆ど教室に顔を見せなかった。式の最中は寝てます。式の後は帰宅して、渡米します。
＜２年３組＞
青木 慎之介：さわやかなイケメン。式には在校生として真面目に臨みます。放課後の予定は有りません。
＜２年２組＞
水海道 音春：ピンク頭メガネ。式には一応参加しています。放課後の予定は有りません。
＜２年１組＞
高知 竹高：元気な男子生徒。式の最中泣くかもしれません。放課後の予定は有りません。
＜１年３組＞
幌平 馬桐：毒舌少年。式の最中は普通にしています。放課後の予定は有りません。
＜生徒親族＞
エリセイ、レナートジュラヴリョフ兄弟、寺島 康子：イリヤの兄と叔母。式を見に来ます。