とある冬の休日、寝子島を突然襲った大型台風。
巨大な風の渦は建物を容赦なく飲み込み、島を荒らしていく。
しかもたちの悪いことに、この台風、どうやらいわく付きのもののようで――
旧市街の魚屋
『魚新』の長男である
新井 すばるは、魚新のちくわ着ぐるみを着て、たまたま風上の空を見上げた。
すると、遠くから何かが飛んでくる。
「こりゃ、魚だね。うん、魚は飛ぶよね、はは……えええ?」
いくら台風だからといって、魚は飛んでこない。
ちくわもパイプも吹き出して、たまたま手にしていたバケツで魚をキャッチ!
魚屋の長男としては、バケツをのぞき込まずにはいられないが……
「こ、この魚は……ピラニア!?」
そう、この台風は何故かピラニアを運んできてしまっている。
台風ときどきピラニア、である。
ぴちゃっ。
すばるの顔をめがけてジャンプしたピラニアを間一髪かわして、
何があったのかと、飛んできた方向の空を見上げると……
「えええ???」
今度は大量のピラニアがとんできた!
その瞬間、どこからともなく声が聞こえた。
『悪いな。今はちょっと力が出ないから、こんなもんで』
テオが異変を察知して世界を切り分けて寝子島を守ってくれたが……
たまたま10人程が参道商店街の辺りに残されてしまった。
縁もゆかりもないものもいるようだが、仕方ない。
しかも失敗なのか何なのか、雨は倍増、風も倍増、ピラニアも倍増。仕方ない。
しかも町の全体が1メートルほど浸水している。仕方ない!
しかも食糧は唯一シーサイドタウンの駅ビルmiaoにしか残されてないらしく、そこに向かうには、ピラニアがどこに潜んでいるかもわからない水の中を進まなくてはいけないことに! 仕方ない!!!
そして、テオは冷たかった。
『いつになるか分からないが、あとで見に来る。生き残ってたら、戻してやるから……がんばれ』
空を見れば、今も次々にピラニアが降ってくる。
そのうち一匹が、また血の花を咲かせた。
コメディエアーも少々混ざってるようだが、はたしてこのピラニア台風地獄に明日はあるのか?