からん、ころんと下駄が鳴る。
活動写真に気も逸り、幻灯機に心躍らせる昼下がり。
鮮やかな異国情緒の文化に触れればたちまち日々は色付き出す。
「士官様は今日はお暇なの?」
藤に矢絣を描いた衣を揺らし、紅の袴が活動的に揺れる。
ブーツの爪先は柔らかい土を叩いて、鉄道の線路の向こう側に立った麗人へと声をかけた。
格好にして、青年将校を思わせる――それでいて物腰は女性の様に柔らかだ――
神野 マキナは明るい髪を風に揺らして「そこの甘味屋までどうかな」と唇に笑みを乗せた。
彼女の言葉に大きく瞳を瞬かせた羽衣がそうしましょうよ、と心を踊らせる。
甘味処は女学生たちが集まり、噂も尽きぬ場所だった。
学友達に「羽衣さん、いらっしゃったの」と声を掛けられたことに柔らかに礼をすればそこに持ち込まれたのは新たな『気配』。
「あ、よくぞ参ったー。って感じだよぉ」
のんびりとした声音で羽衣とマキナへと笑みを零した
常盤 四月は手帳を開く。
何やら、噂が一つ二つ。
四月の言葉を横で聞き「よい解説だったな」と清水 あゐ(きよみず あい)は唇に弧を描いた。
「遅れて申し訳ない。私は清水。所謂、探偵と言うやつだ。まあ、道楽でね。
私一人では解決できない事件なのだ。申し訳ないが一つ力を貸してくれないかね」
報酬はくりぃむ餡蜜、と告げるあゐに四月は大きく頷いた。
「それで? 三丁目のおばあさんのお人形が泣くって言うのは――」
「う、う、怖い話しは駄目だよぉ……そうじゃなくって、事件のかほりなんだよぉ」
きりっ、とした表情を見せた彼女の手帳から滑り落ちた耽美小説の一節。
慌てた顔で「見ちゃダメだよぉ!」とかき集めた四月は小さく咳払いをした。
いつの世にも探偵は必要だ。
この甘味処には沢山の人々が集まり、情報と言う名の足跡を残してゆく。
此度の依頼は『居なくなった黒猫を探しだせ』というものだった。
曰く、その猫が居なくなってから日本人形が涙を流す様になったらしい――猫を探しだせばその謎も解ける筈だ。
「それじゃあ、猫を探しに行きましょうか」
刻は大正。
異国の文化と混ざり合った動乱期。
その泡沫を、刹那の夢と数えること無く過ごさんと日々研鑽する。
そこに流るるは大正浪漫ノかほり哉――
日下部あやめです。宜しくお願い致します。
神野 マキナさん、鴇波 羽衣さん、常盤 四月さんはガイドへの登場ありがとうございました。
ご参加頂ける際はお好きな役割をどうぞお選びくださいませ。
★IFシナリオになっております。大正時代へ寝子島トリップ。
IFの世界故に時代的にないアイテム等が出てくる可能性もあります。あらかじめご了承ください。
ろっこんの使用は可です。平行世界での記憶の有無は御随意にどうぞ!
★行ける場所
・甘味処『すずらん』
・三丁目のおばあさんの家
・おばあさん一家も通って居たという女学校
・おばあさん一家が良く遊びに来た公園
・猫のたまり場である路地裏
+寝子島にありそうな場所なら行くことができます!
★行方不明になった黒猫
三丁目のおばあさん・カヱ子さんの飼い猫『とま』。♂。
元はおばあさんの娘さんが飼って居たそうで、可愛がっていたそうです。
娘さんが嫁いでからはとまは何処かへふらりと出かける事が多くなっていたそうです。
人語へ理解は有る様で「カヱ子は自分が居ると負担になる」と思いこんでいる猫をどうにか説得して下さい。
猫であるというのに好物は甘味。黒い毛並みが非常に美しく、何処か魔的な雰囲気を感じます。
とまが居なくなった事でおばあさんの家に在る日本人形が涙を流す様になったそうです。
どうやら、娘さんの想いが籠められとまが姿を消してしまった事を嘆いている――という推測が立っています。
★探偵役
黒猫探しに探偵役として周囲を見て回る事が出来ます。
寄り道もどんとこい。聞き込みや調査なども大切になります。猫への説得もこの役割。
探偵、探偵助手と別れてペアを組み調査をするのも楽しそうです。
(NPC)道楽探偵の清水 あゐ(きよみず あい)という少女を筆頭に、青木 慎之介(探偵)、桃井 かんな(探偵助手)が調査にあたっています。
★甘味処『すずらん』
すずらんでの日常を謳歌する事もできます。女給さんの募集等も行っているようです。
お勧めはくりぃむ餡蜜。その他、簡単なものなら揃っている様です。
珈琲や紅茶という異国の飲み物も提供し出したそうですが、皆さんには苦いやもしれませんね?
探偵をせずに此方で休憩や給仕、会話をするのも勿論構いません。
(NPC)三宅 ゆりが給仕を行っています。噂話にも精通しているようです。
★女学校
カヱ子さん一家が通っていた学校です。女子PCさんは学生さんと言う事でも大丈夫です。
五十嵐先生等、先生NPCさんが教師を務めています。
とまについて何か知る人が居るかもしれませんね。
★公園、路地裏
どちらも猫のたまり場となっています。公園にはカヱ子さん一家もよく訪れていたそうです。
路地裏には猫の集会が行われており、とまもよく参加して居た様です。
★清水 あゐ(きよみず あい)
道楽探偵。様々な仕事を甘味処『すずらん』に持ち込みあわよくば手伝ってと皆さんに声を掛けてきます。
西洋の男性もののコートに、少しほつれた黒髪と澄んだ瞳の痩躯の女性です。
助手は何時でも募集しています。
「此度の事件、私は生憎だが猫と喋れなくてね――すずらんに行けば皆が解決してくれると踏んだんだ」
探偵と共に猫を探すもよし、大正浪漫に浸るもよしです。
異国と混ざり合った浪漫の刻をどうぞ、お過ごしくださいませ。