旧市街、某所。
住宅街から少し離れたそこには、小さな料理店があった。
古い店なのだろう。店舗の玄関口に設置された緑色の装飾テントは色褪せており、「トラットリア・ミチーノ」と書かれた文字も、ところどころ少し剥げて来ている。
木造の扉は赤レンガの外壁によく合っているが、いかんせんもう古い。端々の木は削れ、あるいは割れてしまっている。
扉を開ければ鳴るであろうカウベルの軽快な音は肝心要のカウベル故障のせいで鳴らず、まず店に入る客を迎えるのは、扉の錆びついてしまった蝶番が鳴らす不愉快で不気味な音だ。
そしていざ店内に入ってみると、そこにはところどころ剥げた壁紙や、汚れた床や机。そして入って来た客を迎えるのは、あるいは目付きが悪かったり、あるいは南国の鳥もびっくりの挑発的な原色のモヒカンヘアーだったり――とにかくガラの悪い連中のガン飛ばしである。
「お前の立てた扉の音、うるっせえんだよ」
舌打ち混じりにそういった罵倒が初対面の相手に向けられることも、多々。
このように「トラットリア・ミチーノ」の店内治安は荒廃し、午後17時頃からは不良学生たちの溜まり場と化しているというのが現状だ。
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「父から継いだこの店ももうおしまいだな……」
ハハハ、と乾いた笑いを漏らしながら、店長の山科・圭はうなだれる。
「マタ工の不良学生どもは無茶な注文をつけては店内で暴れ、物を壊す。マトモに作った料理をまずいだなんだといちゃもんを付けたり、ツケだなんだと言って金を払おうとしない。閉店を告げても徒党を組んで帰ろうともしないし、注文されても未成年には酒を出せないしタバコはウチで扱ってすらいない! 挙句の果てには普通のお客さんが来ても我が物顔で追い返してしまう!」
店長はガシガシと頭を掻きながら、店の惨状を嘆いた。
「……だが、あんな奴らでもあいつらはまだ学生なんだ。警察沙汰や大事にはしたくない。なんとか、なんとかしてウチの店から不良学生たちを遠ざけ、荒れ果てたイメージを払拭し、普通のお客さんたちを迎えられるようにしなければ……」
「僕に任せて、父さん」
店長の手に、少年のそれが重ねられる。店長の息子、山科・太一だ。
「僕が知り合いとかに相談してみるよ。きっと良いアイデアが出るはず」
一見気弱そうに見える二人だが、悄然とした父親に反して息子の太一の目は、まだ諦めていなかった。
「取り返そうよ、父さんのトラットリアを」
初めまして。新しくゲームマスターとして登録させて頂きました、豚野郎ともうします。
気軽に豚とお呼び頂ければ幸いに存じます。ぶひぃ。
●シナリオの目的、及び手段の制限
さて、今回のシナリオの目的は「迷惑な不良学生たちを店から遠ざけろ」というシンプルなものでございます。一般客が来るようにお店を改造して差し上げられるとモアベターでございますが、この要素はシナリオの成否には関わりません。
手段の制限は「警察、教員などを使って大事にしないこと」「“店内での”暴行など、迷惑行為の禁止」です。
目的を完遂するために制限されたもの以外の手段は問いません。口で説得するも良し、店外で説得(物理)するも良し、店を改造して近寄りがたい雰囲気にしても良いかもしれませんね。もちろん、それ以外の方法があればそれを実行してもいいでしょう。
●不良学生について
木天蓼工業高校(通称マタ工)の出身です。不良たちは「店長は気弱だしタダ飯にありつけるし長時間で大人数でたむろできるし、居心地が良いから」トラットリア・ミチーノに来ています。彼らは店長が大事にしたくないことを知っています。
数は8人と大所帯ですが、結構根っこは臆病者です。武装はしておらず、基本戦術は数で囲んで殴る蹴るが精々です。明確なリーダーはいないようです。
●店内
イタリアンのトラットリア(大衆向け小規模レストラン)です。
店内の席は10人分と小規模です。店長の山科・圭が厨房を、その息子の山科・太一がウェイターをやっています。
壁紙や剥き出しの木製の机には、スプレーやマジックでところどころ落書きがされています。
ビニール製のメニューブックはところどころ破損しており、これもまたマジックで落書きが。
床は掃除をする時間が確保できていないせいか、不良学生たちの食べこぼしや、コンビニ弁当の容器などがちょくちょく部屋の隅で見つかることも。
入り口の木製扉はボロボロで、ちょっと外の風が端から漏れてきています。扉の蝶番は錆び付いているせいで、開け閉めの際に大きな不愉快な音を鳴らします。また、カウベルは故障してしまって鳴りませんから、もし鳴らすのであれば新しいカウベルを付け替える必要があります。
店外については、なんかちょうどいい感じの薄暗い路地裏とかあったり、人気の多い大通りがあったりします。
●スケジュール
シナリオの描写はらっかみ!内での水曜日から始まり、翌日木曜日に終わります。学校は冬休みに入っていて、授業は無いものであるとして扱います。
・水曜日
「トラットリア・ミチーノ」の定休日です。この隙にお店をどうにかできます。不良学生たちは現れません。
・木曜日
トラットリア・ミチーノは10時から開店しています。午後17時頃から不良学生たちが一気に8人、お店に来ます。お帰り願いましょう。ラストオーダーは20時半、閉店時間は21時です。
無事、目的達成がなされればトラットリア・ミチーノ自慢のイタリアンが振る舞われるでしょう。
●NPCについて
本シナリオに登場するNPCは「山科・圭」と「山科・太一」の二人、加えて不良学生たち8人と時々来る一般客が基本となります。展開次第で追加されたり一般客なんていなかった扱いになるかもしれません。
NPCの「山科・圭」、「山科・太一」との関係は常識の範囲内でご自由に考えて頂いて構いません。友だちや顔見知りだったから頼まれたことにしても良いですし、あるいはこうなる以前のトラットリア・ミチーノを知っていてそれを取り返したいと志を同じくしていてもいいでしょう。
●グループアクションについて
必ずGA【グループ名】といったふうに、アクション内にご記入下さい。
●最後に
長々としたゲームマスターコメントですが、以上となります。
皆様の楽しいアクションを、心待ちにしております。ぶひぃ。