放課後、一人の女子が学校の正門を抜けて右に折れた。歩いていた足は徐々に遅くなる。
第一グラウンドでは運動部の面々が練習に励んでいた。声を出して力強い走りを見せている。
女子は立ち止まって金網越しに眺める。間もなく一人の男子を目で追い掛け始めた。途端に表情が切なくなって目を無理に引き剥がす。
道を小走りで帰る中、どうして私は、と悔しそうな声を喉の奥から絞り出した。
化粧っ気のない中年女性が重そうな買い物袋を提げている。持つ手を何度も入れ替えた。
よろよろと歩く姿は漂流物に似ていて、程なく道端に流れ着いた。買い物袋を足元に置くと赤くなった掌に息を吹き掛ける。
ようやく一息入れることが出来た。心の余裕と共に視野が広がる。間借りしている背後の店に関心が移った。
ショーウインドウに一枚の貼り紙があった。ほのぼのとした色合いで屋台の連なりが描かれていた。
中年女性は白髪交じりの髪を手で整える。絵の中に昔の自分を重ねるような表情で見詰めた。
街灯が照らし出す仄明るい道を背広姿の男が丸い背中で歩いていた。
前方で光の明滅を目にする。寿命が尽きそうな街灯の下には自動販売機があった。
男は出していた手を擦りながら足早に近づく。途中で財布を取り出し、足を止めた。
目は温かいコーヒーに向かったが、指はミルクティーを選んだ。出てきた缶を両手で包み込む。
「あの時も……」
頭に過る思い出に男は微笑み掛けた。
何かを切っ掛けに始まる回想は蕩けるように甘いのか。
それとも表情まで歪ませる程に苦いのか。
日常に押し流されていった過去が鮮明に蘇る。
今回はある切っ掛けから過去を思い出す話になります。
以前の私のシナリオ、『戻ってきた記憶』に内容は似ています。
この話はアイテムを切っ掛けにして過去を思い出す話でした。
今回は更に範囲を広げて、ありとあらゆる物が切っ掛けの対象になります。
個人向きのシナリオではありますが、複数のPCが関わった過去の回想も可能なので、
グループアクションを組むことは出来ます。
舞台は十一月下旬の寝子島のある一日です。平日や休日、天候等はPCの自由とします。
説明はここまでになります。あとはサンプルアクションを参考にしてください。
どのような回想もどんと来いです! らっ倫の限界に程々で挑戦します!
という微妙な心意気で皆様の参加をお待ちしています。