人形は夢を見る。
物言わぬ人形のその心は、物言わぬかわりに永遠の夢の世界をたゆたっている。
休日の昼下がり、始まりの音がなった。
ノスタルジックな賑やかしい音が辺りに響く。
「へえー、チンドン屋かあ。懐かしいなあ」
原色の派手派手しい着物を身に付けた、陽気な一団が街を練り歩いていた。
「寝子島にも来るのね」
「パチンコ屋の宣伝かな?」
思い思いの感想を抱きながら、その音を聞いた者は彼らに目をやる。
「何だろうね、あれ。とってにぎやかで楽しそう」
一人の少女が、ベッドに身を横たえ眼下に街を見下ろしていた。
話しかけているのは、窓際に置かれた古いくるみ割り人形。外国で作られたものだろう。
「ねえ、“ハーメルンの笛吹き男”って話、あるでしょう? 今、ちょっと気持ちわかるな。元気だったら私も家を飛び出して、あれについていっちゃいそう」
少女は、ため息をつきながら人形に話しかけた。
「大丈夫。すぐに良くなるよ、元気出して」
人形は答える。
少女は目を丸くする。これは、有りうべからざること。
さあ、夢が現実になる時間だ。
「兄ちゃん、1日アルバイトにしちゃなかなか上手いじゃん?」
チンドン屋の一行の休憩中、派手なメイクの男に歳若い青年が話しかけられている。
「いやー、僕もよくわかんないですけど、昨日ちょっと熱が出てから急に腕が上がったみたいなんですよねー。“覚醒”みたいな? ナハハハ」
まだ少し熱が残っている風の、クラリネット担当の青年が照れ笑いしながら答えた。
こんにちは、お久しぶりです。八花月です。
本文の補足をいたします。
今回のシナリオは、チンドン屋のクラリネットの音が聞こえてから30分間、周囲に人がいない場合、その音を聞いた人が思いを向けている人形の声が聞こえるようになる、というものです。
人形は広い意味で人形ですので、フィギュア、ぬいぐるみ等のヒトガタでないものも含まれます。
人形には、普段の扱いに対する愚痴を聞かされるかもしれないし、大事にしてくれたお礼を言われるかもしれないし、何か頼みごとをされるかもしれません。
また今回の事件は、ガイドに登場したもれいびの自覚のない青年が自覚のないままろっこんを使っている結果です。ちなみに彼は寝子高生で、名前は粕谷 智仁(かすや ともひと)。1年8組に在籍しています。帰宅部のようです。
あまり人に迷惑のかかる能力ではありませんが、自覚を促してあげるのもいいかもしれません。
放っておいてもおおごとになることはないので、自分の大事にしている人形と交流する、等のみでもOKです。
キャラクターだけでなく、人形の意志やどのような内容のことを喋るか? ということも指定していただいて結構です。
指定のない場合、こちらにお任せしていただくというかたちになります。
それでは皆さまのご参加をお待ちしております。