バタバタと階段を駆け上がる音が、部室棟に響き渡る。
足音を鳴らし、顔に笑顔を浮かべながら、
雨崎 荒太郎は自らが所属するホラー愛好会の部室へと急いでいた。
その理由は、寝子島に伝わる都市伝説の一つ、「猫又川の怪異」についての情報を仕入れた事にあった。
「皆、いい話があるんだ!」
ホラー愛好会と銘打たれた名札が付いた扉を勢い良く開け、荒太郎は嬉々とした表情で部室内に居る全員へと声を掛ける。
「おぉ、どうしたどうした? 何かいいネタでもあったか?」
部室内に居た一人であり、ホラー愛好会部長でもある
秋風 透が、そんな荒太郎へと答える。
「もちろん! それもホラー愛好会らしいね!」
「ほぅ、ウチらしい……」
元気良く話す荒太郎ににじりよるように、透は話を聞くために向き直る。
荒太郎が口にした愛好会「らしい」という話に、興味を持った為に。
「それで、どんな話だ?」
「ふっふっふー、乗ってきたね部長。その話とは……都市伝説だー!」
じゃーん、と両手を広げながら、荒太郎は満面の笑みで部室に居る全員にネタを口にする。
「都市伝説、か。いいじゃないか、どんなのだ?」
この言葉に、透は更に興味を持ちその内容を聞くために荒太郎へと先を促す。
「まぁまぁ、焦らない焦らない。今から話すから」
こうして、荒太郎が話し始めた都市伝説はこんな内容の物であった。
曰く、桜台墓地の裏に流れる猫又川には一つの言い伝えがあるらしい。
この川の突き当たり、九夜山のふもとでこの川は途切れるのだが、この途切れた地点に小さな祠がある。
月の出ている夜に、この川に沿うようにその祠へと向かうと、何かしら不思議な現象に見舞われるのだ。
ある者は女の幽霊が出た、といい、またある者は見た事も無い化け物の姿を見た、といった具合に、見たものはバラバラだが、何かしらが現れるというのだ。
そして、その何かを見たものは、力を奪われその場に倒れこんでしまうらしい。
ただし、川の先にある小さな祠にたどり着ければ、何かが起こる。
それがなんであるかは、未だ誰も確かめた者はいない……
「っていった具合の話なんだけど、どう?」
ひとしきり、自分が仕入れた情報を部員へと話し終え、荒太郎が全員を見渡す。
都市伝説、といえば確かに都市伝説なのだろう。
誰も未だに確認していない、オチが無い、そして謎ばかり、とった形は確かに語るとおりの代物であった。
「い、いいんじゃないか?」
やや動揺を見せながら、透は荒太郎が仕入れてきたネタに対しての感想を口にする。
透の動揺は唯一つ、ホラー愛好会の部長で有りながら、この男、幽霊が苦手なのだ。
「でしょでしょ? どうせなら、他の生徒も誘ってツアーでも組んでみない?」
「そ、そうだな。どうせなら、パッとやったほうが楽しいか」
どうにか動揺を隠しつつ、透は荒太郎の意見を受ける。
「オッケー。それじゃ、張り紙は作っておくね。部長は声掛けよろしく~」
部長の許可が出たとなれば、後は準備だけである。
こうして、ホラー愛好会による都市伝説ツアーが企画される事となった――
まずはご覧いただきありがとうございます。
今回よりライターとして参加させていただく御神桜と申します。以後、お見知りおき願います。
初めに、ホラー愛好会及び雨崎荒太郎様、秋風 透様を登場させていただきましたので、こちらで感謝を述べさせていただきます。
今回のシナリオでは、ホラー愛好会が仕入れてきた都市伝説を探索する為のツアーとして企画されております。
舞台設定等は以下よりとなりますので、ご確認をお願いいたします。
・ツアーの概要
参加前に、各自に懐中電灯が支給されます。こちらを用いて夜の道を歩いていただきます。
ツアー開始位置は桜台裏手の猫又川が二つに分かれる地点から。
そこからさかのぼって突き当たりの祠へと向かい、開始位置へと戻る事が今回のツアーの全容となります。
ツアー開始時と終了時に人数確認の為に点呼を取りますので、忘れずに集まるようにお願いいたします。
・舞台設定
寝子島全景地図より、H-6地点からG-6地点までの大よそ750メートル程の長さが今回の舞台となります。
川沿いを歩く為、砂利や草道が多くなり、やや歩きづらい状態となっております。
ご参加の場合は歩きやすい格好でお越しいただくようお勧めいたします。
・猫又川の怪異について
ホラー愛好会が仕入れてきた情報では、桜台墓地のやや北側にある二股に分かれた猫又川の位置からさかのぼって行くと何かが起きる、と言ったものとなっております。
向かう途中の道では、幽霊やら見知らぬ化け物やらが現れると語っていましたが、実際の所はまだ分かっていません。
どのような事が起こるのか、本当にそんな存在が出てくるのかは向かった先で判明する事でしょう。
気をつけなければならない事は、その何かを見た際に害があるかもしれない、という点にあります。
物理的な害なのか、それとも間接的な害なのかは判明しておりません。十分な注意をお勧めいたします。
それでは、ご参加をお待ちしております。