旧市街某所
びっしりと居並ぶ家々の隙間を縫う一本の細道
突き当たりで【入居者募集中】の無意味な看板が倒れてて
その先には草がぼうぼうの狭い敷地にトタン張りも赤錆びたバラックさながらの建物が佇んでる
昔ここが潰れて差し押さえられてまるごと売りに出されたもののなかなか買い手が付かなくて
業を煮やした不動産業者が当時広かった敷地を苦し紛れに分譲したらアラ不思議
サラ地がそっくり宅地になってスルーされた母屋を囲んじまったんだとさ
おかげでトラックも重機も軽四すらもボロすぎる建物に近づけなくて改修や解体は絶望的と
もうどうもならんから見棄てられたっつーワケ
オマケに近頃は猫の鳴き声に混じって歌が聞こえるとか三つ編み女学生の幽霊が出るだとか
「…噂んなってだーれも近寄らんしな」
実際は幽霊でも学生でもないフーテン女がこの死に物件を格安で借りて自宅代わりにしてるだけ
美しくもテキトーに日々を生きる、したたかな野良猫たちのねぐらってだけ
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たまーに猫の様子を見がてら寝泊まりできる女性若干名募集中。
加入の目安:高校生以上の放置しない方。詳しくはダメ元でポチるか市子にキャラメで。