仲良くなりたい｜リアクション

仲良くなりたい

☆芽森菜々緒

　吉祥寺黒子は、同じクラスの芽森菜々緒と共に学校帰りにカフェで一服していた。
「今日の作業、調子良かったから早めに終わりそうだよな」
　話題は工芸の授業で一緒に組んで制作中の作品のことだ。
「そうね、でも作っている途中でアイディアが浮かんだりするから何とも言えないわよ」
　コーヒーのカップを口元に近づけながら菜々緒が答える。
「ああ、そうだな……」
　リラックスした様子の菜々緒の顔を見ながら黒子は思う。
（……これが菜々緒が望んでた「フツウ」の生活か……それはわからない）
　同じ星ヶ丘寮に住んでるからよく一緒に登校するし、学校帰りにはこうやってカフェに寄ったり、たまにはゲーセンに連れて行ったりもする。
「どうしたの、クロ？　何か考え事？」
　考え込んだ黒子に、菜々緒が問う。
「いや……何でもねえよ。来週はゲーセン行くか」
（けど、俺が親友と思ってるように菜々緒も親友と思ってこの生活を望んでくれてると……嬉しい）
　口に出さないまま、黒子はそんなことを考えていた。

　
　休日。
　恵御納夏朝は星ヶ丘寮に向けて散歩していた。
（芽森先輩……星ヶ丘に行けば会えるかな）
　最近は芽森先輩の事が心配な夏朝である。
『ごめんなさい』
『友達になりたい』
　他にも言いたい事が色々頭の中でぐるぐるしていて。
「……あれ？」
　途中で、見覚えのある少年と出くわした。
「恵御納か。どこに行くんだ？」
　御剣刀は、なんとなく気になって話しかけた。
「……御剣くんは、芽森先輩と割と親しいんだっけ。実は……芽森先輩に会いたくて」
　菜々緒を知る誰かに聞いて欲しくて、夏朝は話し始めた。
「芽森先輩と……『女王セブン』と友達になりたいって、伝えたくて」
「……そうか」
　事情はよくわからないものの、刀は頷いた。
（俺も、菜々緒でも七男でも、ナナオは幸せになっていいんじゃないかと思った、だから傍に居ると宣言した。そして身を挺して守った）

「私がどうかした？」
　突然背後から声がして、二人は驚いて振り返った。
　そこに菜々緒が立っていた。
「こんにちは……」
　なんとか挨拶をした夏朝だったが、言葉に詰まった。
（何言えばいいか……えーと、えーと……）
「こんにちは。刀君と、えーと、夏朝ちゃんね」
　菜々緒は少し考えて夏朝の名前を呼んだ。
（覚えててくれたんだ）
　それに勇気付けられて、夏朝はストレートに言葉を紡ぐ。
「……と、友達になって下さいっ！」
（直接話した事は多くないからどう思われているかはわからない。先日囚われた時、彼女への不意打ちを止められなかったから、恨まれても仕方ないと思う。けど……）
　真剣な表情の夏朝に、菜々緒は笑みを向けた。
「喜んで」