寝子中同窓会！｜リアクション

寝子中同窓会！

○同窓会のおしゃべり

　水樹は、同窓生たちとおしゃべりを楽しんでいました。
　何人かは大学でも会うけど、久しぶりに会う面々も揃っていて、近況や思い出話やら話は尽きません。
「えっ、もう子供いるの？」
　目を丸くした水樹に、同級生はあの頃と変わらない屈託ない笑みを向けます。
「もっと遊びたかったけどねー。でも子供は可愛いよー」
　かと思うと、地味だった子がギャル化していたり。
「きゃー水樹ちゃん？　一段と綺麗になっちゃって、モテるでしょー？　うらやましいっ。あれ、カレ来てないのお？」
　色々と変化はあったけど、元気そうで良かったと思いました。
　初恋の同級生は欠席でした。留学中だと誰かが言っていました。
　ちょっと残念だけど、彼らしいなと思う水樹です。欠席してる何人かも、元気でいてくれたらいい、と。

「しむせんに挨拶行くー？」
「あ、うん」
　担任だったしむせんにはお世話になったので、今年で定年と聞いて少しさびしく思っていました。
　定年祝いに用意したプレゼントは、国語の先生ということで、ペンです。
　しむせんの姿を見つけ近寄っていくと、先生は銀髪の女性と話しているところでした。

　中学時代は札付きのワルとしてかなり恐れられていた犬神花梨は、久しぶりに同窓会にやってきていました。
「……って、同学年の奴等がほとんど参加してねーじゃん。つまんねぇな」
　とりあえずお酒や料理をがつがつと飲み食いして堪能していましたが。
「お、しむせん発見！」
　記憶より少し年取ったしむせんが、けれど変わらぬ様子で、ショートボブの女性から何かプレゼントを受け取ったところでした。
　女性が離れたところで、花梨は声をかけました。
「よォ、しむせん。久しぶりじゃねーか♪　俺様の事、覚えてる？　『狂犬』の花梨だぜ」
　しむせんは目を見開きました。
「おお、花梨か。覚えてるとも。だが雰囲気が、随分と……明るくなったな」　
「随分と明るくなった？　ギャハハハ！！　確かにあの時は死んだ目に終始死んだ顔してたからな！」
　あの頃、暴漢によって家族を奪われた花梨は、絶望の中師匠に武術の調教を受けていました。
　人間らしい気持ちなんかになれるはずもなかったのです。
「まあ、あん時は世話になったな。あんただけだぜ、中学で俺様に普通に接してくれてた先公はよ」
　当時花梨は喧嘩はもちろん色々と悪い事をやっていた不良でしたが、弱者を庇っていたりした姿を、しむせんはちゃんと見ていてくれたのでした。

「皆お前の境遇を知ってるだけに、なんと声をかけていいかわからなかったんだろうな。だが、声をかけなきゃ伝わらんからな。ところで、今は何をしてるんだ？」
「今？　俺様はシーサイドタウンの児童養護施設で保育士やってるんだよ」
「保育士？　意外だな……」
「似合わない？　生憎あんたのお節介の影響も少なからず入ってるんだがな？」
「そうか……沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり、かな。幸せそうで良かった」
　実は花梨には喧嘩屋稼業という裏の顔もあります。
　家族の仇の放火魔は既に討ったものの、戦いの日々は、花梨を血沸き肉躍る戦いを求めてやまない戦闘狂にしていました。
　でも目を細めて笑うしむせんに心配をかけたくないので、それをここで話すつもりはありませんでした。

　少し離れて様子をうかがっている背の高い美人に気づき、花梨はそろそろ話を切り上げることにしました。
「しむせんも元気でな。勝手にくたばんじゃねーぞ、何か厄介事に巻き込まれたら俺様が助けてやる」
　そう言いながら花梨は、青と紫の花束をしむせんに渡しました。
　リンドウとトルコキキョウ。花言葉はそれぞれ「誠実」「清々しい美しさ」です。
　しむせんは嬉しそうに花束を受け取り、握手をしてくれました。
「お前も体を大事にしろよ。怒りは敵と思え」
　裏の顔を話さなくても、握手した手にしむせんは何かを感じていたのかもしれません。

このページにイラストを設定する