うららかな春。つい首をコクリコクリとしてしまいそうな、ほどよい暖かさを含んだとある午後だった。
その生徒は、午後一番の授業が始まると同時に、机に突っ伏した。
こんな気持ちのいい日に、難しい数式など解いていられるものか。
そう心の中で毒づきながら。
一番後ろ、窓際の特等席。穏やかな陽を浴びて、眠りにつくのだった。
一方、寝子島高校職員室では、授業のない数人の教師が授業以外の業務に就いていた。
顧問をしている陸上部の昼練に付き合っていた
浅井 幸太は、遅い昼食をとると、不慣れなデスクワークにとりかかろうとしていた。
イスに座っての作業は性に合わない。春の陽気と満腹が手伝って、さっそく首をコクリコクリさせる浅井。
あーもうだめだ。
えーっと、春の眠りにまつわる故事って何だっけ?
そう思ったのを境に、浅井は夢の世界へと旅立っていった。
「こらー浅井起きんかーっ!」
コーチの怒鳴り声だった。あれは高校か、大学か。どちらのコーチだっただろう。
ハッと目を覚ますと、彼は寝子島高校グラウンドの中央に立っている。
「うちの高校にどうしてコーチが?」
しかし周囲にコーチの姿はない。代わりに、浅井とサッカーゴールの間に、ひとりの少女がいた。
「あれは……」
その面影。間違いなく、小学生時代に好きだった少女。
浅井に微笑みかけたかと思うやいなや、背を向けて走り出した。
「ちょっと待って!」
手を伸ばし、駆け出そうとしたそのときだった。
どーん!
大きな足が突然視界に飛び込んで、グラウンドを揺らした。
「な、なんじゃこりゃー!」
見上げると、全長15メートルはあろうかという大男が、勇ましい表情でこちらを見下ろしている。着ている服には、なぜか「睡」の文字。
”生きている”というよりは”動いている”という印象を与える、機械的な所作で、浅井を踏み潰しにかかってきた。
身の危険を感じた浅井は持ち前の瞬発力でグラウンドを駆け抜ける。走っていったはずの少女の姿はどこにも見当たらない。
すでに夢と現実の境を見失っていた。
その様子を、講堂の屋根から見下ろす1匹の猫がいる。
テオドロス・バルツァ。
「やれやれ、どうやら何者かのろっこんに巻き込まれたようだ」
事態を把握すると、大あくび。
「どうせ夢の世界だし、なるようになればいいさ。俺はもう少し眠らせてもらうぜ」
ゆるやかな陽を浴びる屋根の上で、丸くなるテオ。夢の中でも眠りにつくのだった。
はじめまして。超新人マスターの小西秀昭と申します。記念すべきデビュー作はバトルものになります。どうかお付き合いください。
【原因となるろっこんについて】
寝子島高校に通うもれいび、仮に「A氏」としましょう。A氏のろっこんは「周囲で眠ってる人に、自分と同じ夢を見せてしまう」というわりあい可愛げのあるものです。しかし神魂の影響によって効果が増大してしまい、校舎全体を巻き込むことになってしまいました。
【夢から覚める方法】
春の陽気に誘われ、授業中(もしくはサボり中)居眠りしてしまったあなたは、A氏の夢の中へと迷い込みます。夢から覚める方法は以下の三つ。
・夢の世界にいる「睡魔」を倒す。
・起きている人に、むりくり起こしてもらう。
・A氏を起こす(これはよっぽどのサーチ能力に長けた方でないと、難しそうです)。
【睡魔について】
夢の中の寝子島高校敷地内、いたるところにはびこっているとお考えください。A氏の思うがままです。
大小様々ですが、パンチやキックといった短絡的な攻撃しかしてきません。武器を持っている者もいますが、その場合は武器での攻撃しかしてきません。一定以上のダメージを与えることができれば倒せます。
すでにガイドで浅井先生が出くわしている「睡魔」は大型で、グラウンドを我が物顔で歩いています。この「睡魔」を倒しても夢から覚めることは可能です。
【アクションについて】
夢の中、学校敷地内の「どこ」に放り込まれ、「どんな睡魔」と「どんな風に戦いたいか」を書くのが定型になります。場所については寝子島高校マップをご参照ください。
が、夢の中ですから、色々とフツウでないことが起きてもいいと思います。睡魔と戦わず夢の世界を漂い続けて現実逃避するのも、アリですね。
ガイドで浅井先生はコーチの怒鳴り声を聞いたり、好きだった女の子の幻影に出会いました。A氏の夢の中ではありますが、多少皆様の記憶の中も掘り起こされてしまうようです。
小西としましては、皆様のキャラクターにより深みを持たせるため、こういった過去の出来事を断片的に描くことをしてみたいなと思っております。他のリアクションに影響を与えない程度に対応したいと思いますので、ちょろっとでも書いていただけると、リアクション作りの助けになります。もちろんなくても構いません。
なにぶん初めてこのことだらけで、皆様の胸を借りるかたちになってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします!