「ようこそ、いらっしゃいましたお客様。
はい、なんでしょうか? キャットロードにこんな店があったのか、とおっしゃいますか。もちろん、ありませんでした。驚くほど、周辺と馴染んでいるでしょう。それが次元移動式、過去創造館の一つの特長でもあります。
はい、また質問ですか。次元移動に過去創造という言葉が気になりますか。この世界ではそうでしょう。
簡単に言えば多次元の一つに科学技術の発展目覚ましい世界があります。その世界でも高名な博士が作られた過去創造館が次元を移動して、この世界の寝子島に流れ着きました。
館の目的ですか。名前が示す通り、お客様の過去を創造することにあります。
そこまで喜ばれると、はい? 過去を変えて好きな未来にする? いえいえ、歴史が変わるようなことは一切できません。具体例を挙げて説明しましょう。
男性は予定されていた場所に時間通りに行こうとしていました。方法は二通りです。バスと徒歩。歩いても約束の時間には間に合いますが、彼は用心の為にバスを選びました。不幸なことにバスは途中で交通事故に巻き込まれてしまいます。大事にはなりませんでしたが待ち合わせの時間に遅れてしまいました。
最初から徒歩を選択していれば、どのような結末になったのでしょうか。一方の可能性を当時の姿になって体験していただくのが当館のサービス内容になっています。
小学生になれたりするのか、ですか。疑り深い方ですね。早速ですが試してみましょうか。
これが小学校四年生のお客様です。昔は意外と可愛らしい服を着ていたのですね。はい、おっしゃる通りです。『意外』は余計でしたね。大変失礼しました。では、元の姿に戻します。
できもしなかった過去を今ごろ知ってもなぁ、とお客様は不貞腐れたようにおっしゃいますが、相当に需要はあります。行く先々で沢山のお客様から好評を得ております。不審者を見るような目付きをされても、私が困ります。
すでにお客様はお気づきのことと思いますが、この館の内部は白い空間で構成されています。一目では何もないように思えるでしょう。しかし、そうではありません。科学技術の粋を結集して作られています。私自身も中性的な容貌で館に創造されています。
お客様、タキシードの袖を引っ張らないでください。感触があるのは館の影響下に置かれている為です。少しは館の実力の片鱗が見えたことでしょう。
では、本題に入ります。お客様が望むのであれば、ここまでの人生の道程を情報として抽出し、できなかった過去の行動を、お客様の当時の姿で体験していただきます。当然ですが、過去には数分前のことも含まれます」
さあ、あなたの望む過去を教えてください
今回は「もしも」がテーマになります。私にもよくあります。
あのような高価な物を買わなければ、あの時にみんなで遊びに行けたのに、などは私事なので忘れてください。話を戻します。
過去創造館はキャットロードにあります。他の店に溶け込んでいて見た目に違和感はありません。
外部からでは店名や売り物はわかりません。ほんの少しの興味で気軽に店へと入る感覚になります。
【GA】を除いて個々が違う見え方をします。洋食屋、洋服屋、小物関係、など様々です。
アクションの書き方としては、過去の体験の話から始まります。その情報を元に望む行動をPCに取らせます。一連の流れで結果に違いが生まれます。
人によっては過去と大差ない結末を迎えるかもしれません。それでも別の過去を見てみたい、と思う方は館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
※PCが過去の疑似体験をします。【GA】も同様で、それ以外のPCを一緒に描写することはありません。
館の利用料金ですが、特に明示されてはいません。心付けのつもりで渡してもいいでしょう。
どのような物であってもタキシードの人が受け取りを拒否することはありません。感情は言葉や態度で表してくれるでしょう。
では、ご来店、心からお待ちしております。