寝子島高校1年、
雨崎 荒太郎に古びた手紙が届いたのは、ある花曇りの朝の事だった。たどたどしい字で『×××××さまへ』と宛名書きされた、日に焼けて茶色くなった封筒。送り主の名前があったと思しき場所は掠れて読めなくなっており、切手や消印の類はない。
「うーんー? 一体誰のイタズラかなー?」
首を傾げながらも、その少し脆くなった封筒を慎重に開封していく。中から出て来たのはこれまた古びてしまった便箋で、そこには以下のような事が書かれていた。
『×××××さまへ
わたくしたちは さびしゅうございます。
うちすてられて 早いくせいそう。だれにも気づいていただけず わたくしたちはずっとここにおります。
もしこのお手がみを うけとられたのなら。このお手がみを およみになることができたのなら。
わたくしたちを さがしにきてはいただけませんか。
ご生でございます。わたくしたちは ずっとさびしくて しかたなかったのでございます。
寝子島町 ××丁目 ×-00』
使われている言葉は妙に古めかしく、その割に使われている漢字は小学1年生レベルで、どうにもちぐはぐな印象を受ける。しかし、最後に記されたその住所に雨崎の目は釘付けになっていた。何せその住所――幽霊が出ると有名な、古いお屋敷のものだったのである。
「不思議な事もあるものよね? それで、私もちょっと頑張って調べてみたんだけど」
そして後日、寝子島高校北校舎の空き教室。今、黒板の前にはツインテールの少女――
七夜 あおいが、チョーク片手に佇んでいた。教壇の真横にある机には、雨崎の姿もある。
手紙を貰った日、さてどうしたものかと思案しつつ登校した雨崎の様子を見止めた七夜に尋ねられ、掻い摘んだ説明をした所、七夜は『それなら私も手伝う!』と協力を申し出てくれたのだった。今、空き教室は幾らか席が埋まっており、その面々は七夜や雨崎に誘われてやってきた寝子島高校の生徒達である。
「そしたらびっくり。ちょっと前から、この屋敷で怪奇現象が起こるっていう噂が激増してたの! それはもう雨後の筍の如くっていうのかな? ポルターガイストからラップ音、写真を撮ればオーブが写り肝試しすれば誰か増えてるっていう大サービスぶりよ。そして似たような手紙を受け取ったという話も聞く事が出来たの。どうやら、本当に幽霊達が退屈してしまっているみたい。淋しくて人の気を引くなら可愛いものだけど、ここからエスカレートしないとも限らないわよね? そこでみんなの出番! この幽霊の誘いに乗って、探しに行ってあげるの。見つけてあげれば、きっと満足して大人しくなってくれると思うから」
そこまで流れるように説明すると、七夜は、ふー……と少し疲れたように息を吐いた。そんな彼女の後に続くように、雨崎が挙手と共に口を開く。
「えっと、それでねー。びっくりした事に、二通目が届いたんだよー。そこになんだか……ヒント? みたいな事が書かれていてねー。どうも幽霊達は、僕らとかくれんぼがしたいみたいなんだよー」
「という事で、みんなにはそのヒント全文をプリントした紙を渡すから、協力してもらえないかな? ……え、廃墟に勝手に侵入するのは犯罪? だいじょーぶ、所有者の許可は取っておいたから!」
だから安心して、明日の夜、幽霊屋敷前に集合! と七夜は胸を張った。
初めまして、皆様。ハチマルと申します。
どきどきわくわく、夜中のかくれんぼin幽霊屋敷feat.リアルゴースト達
そんな感じのシナリオをお届けします。
シナリオガイド作成にあたって、雨崎荒太郎PC様をお借りしました。ありがとうございました。
幽霊屋敷は3階建ての洋館です。老朽化していますが、無闇に暴れなければ危険はありません。
今回は1階しか探索が出来ません。2階以上へ行こうとすると、いつの間にか1階に戻されています。また外部からの侵入も、窓等の出入りできそうな場所は全て板が打ち付けられており、ろっこん等を用いても突破は不可能です。
屋敷内は月明かりだけが差している状態になるので、何か対策していくと良いでしょう。
ゴースト達は屋敷内の『物』の中に居ますので、それに触れて『捕まえた』と言えば見つけた事になります。
以下、補足情報となりますのでご確認下さい。
■舞台について
屋敷の1階。エントランスホール、食堂、キッチン、浴場
■ゴースト達からのヒント
一人目:
あなたさまをおむかえする ばしょにおります。
むかしは やすむことなく おいかけっこをしておりました。
てっぺんでおいついたときは 大きなこえでしらせるのです。
二人目:
一日三回、かぞくがあつまる ばしょにおります。
わたしはずっと シンデレラ。ドレスは石でできています。
ぱちぱち ぱちぱち。はくしゅのおとでは ありませんよ?
三人目:
たべものがたくさんの ばしょにおります。
わたしの上では みな ばらばらになりました。
でもわたしは ねそべっているだけなのです。
四人目:
あたたかな水をためていた ばしょにおります。
けものの王さまの おかおをしております。
うふふ、すぐにおわかりになったでしょう?
■成功条件
ゴーストを2人以上発見すること。
真面目に探すもよし、そっちのけで館探索するもよし。ただし2階以上には行けませんのでご注意を。
サンプルアクションはかなり簡易に作ってありますので、実際は文字数いっぱいに思いの丈を詰め込んでいただけると嬉しいです。
なお、ガイド内に登場しましたNPC七夜 あおいは、屋敷の外で暖かい飲み物を用意して待機しております。
それでは、皆様のご参加、心よりお待ちしております。