(初夏のとある日)…だからなんで自分のクラスの生徒に大事な書類を配り忘れるんだっての。
(ドアをノックする)おーい、アン、いるかー?
(アンの部屋を出てしばらくして)…あ。そういえばペットボトル直接口つけて飲んじゃったな。…もしかして間接キッス?…でもまあ全然気にしてないようだったし問題ないか。うん、そういう事にしておこう。…でないと面倒なことになりかねない。
ここまで来たのは灯くんだけだしね…部屋割りまでは存在感が薄くならない。
噂は、ありすぎてウソとホントがごちゃごちゃしてるくらいかな。ただ、それも慣れればふつうになっちゃうかも知れないね。さっきはまっすぐじゃない、って言ってたけど「まっすぐ曲がってる」っていう矛盾した考えも一応あったの。…面倒な事はあたしも好きじゃないよ、人の分まで考えるなんてあたしには容量が大きすぎるから。
うん、また…色々と足元気をつけてね。
まあ、とにかく君とこうやって話ができたのは良かったと思うよ。
夜更かしはちょっと今は止められないな…。ネットの噂とかでよくあるだろう?”ふつう”じゃない事件があちこちで起こってるとかさ。それが僕にとっての”ふつう”を脅かすかも知れない。僕自身や君等クラスメイト、知り合いの先輩…とにかく僕の”ふつう”を守らなきゃ面倒なことになる。本当は、面倒で面倒で仕方がないんだけど、誰かがやってくれるのを期待したいんだけど、やってくれそうな奴が見当たらないから、僕がやるしか…あ。いけない、余計なことを言った。今の忘れて。一応秘密だから。バレたら面倒な事になりそうだから。
んじゃ、また学校で。(そう言って足元に注意しながらふらっと部屋を出て行く)
ふつうじゃない、かな(もっとコンパクトに出来たらな、という表情)
専門用語は理解されないから使うだけ無駄。それなら解りやすい普通の言葉の方が伝えられるもの。
どうしても、それでしか表現出来ない用語はそのまま使うしかないけれど。
…?(首傾げ)自称するのは誰にでも出来る、他の人に思われてようやくそうなると思う。
それと……うーん、言葉にしにくいな…
とりあえず、夜更かしは良くないよ。今はそれで良くても、いつどこで今の自分が無くなるか解らないからね。
この部屋中の機械が君にとっての”ふつう”なわけだ。そりゃ大事だわな。
君も思ってたより話しやすい相手で助かる。よく漫画に出てくる専門用語以外口にしないタイプかと思ってたからさ。…まっすぐに見えるけど実は見えないだけで相当ひね曲がってると思う。そうでなきゃ毎晩一人で始末に…じゃなくて日課の散歩なんかしやしない。
ま、いいんだ僕は。どうせ何の役にも立たない、誰かのストレスのはけ口になるくらいしか存在意義がない人間だから。(もっともろっこん手に入れてからすぐまる焦げにして、それ以来僕の顔見るだけでビビって逃げ出すくらいにお仕置きはしておいたけど)
うん、すごく大事。落ち込んでたりしても、そういう所に触れられると忘れちゃうくらい…誰にだってあると思うし、繊細な問題だよ思うよ。
…灯くんって、よく解らなかったけど結構まっすぐなんだね。猪突猛進とは違うけれど。
あたしは一人でいるのが気楽だし、誰かに会いに行く事は必要な事がなければしない。まだ大体の事はひとりでも出来ちゃうし楽しめるから。ただ、あたしも今じゃないいつかには相手にしない時もあるかもしれない、気持ちもあるし、都合もあるかもしれない。
……だから、迷惑をかけてるって思うのは考えすぎかもね。
…えーと、難しいことはわからないけど、君にとってはとても大事なことだってのはわかった、気がする。(一瞬真剣な顔になる)僕にだって譲れない、絶対守らなきゃならないものはあるから。
んー、別に一人は一人で気楽でいいんだけど、たまにチラッと見かけた相手の事が無性に知りたくなったりする時があるんだ。「あの子何してるんだろ」とか、つい気になっちゃってこう、胸の内がモヤモヤして、そんな思いするのが面倒だから、見も知らない相手にいきなり声かけたり…。たいてい合わせてくれるけど、中には完全に相手にしてもらえなかったりすることが、ある。(ちょっと寂しそうな顔になる)
…他人の気持ちとか考えるのがめんどくさくてさ、それで人に迷惑かけてばっかりなんだ、僕は。
このモニタに映ってるプログラムと部屋のコード、これらから出来てるのがその人だよ(微かに笑い)
じゃあ、余計じゃない人付き合いはめんどくさくないんだね。
それってひとりは退屈、とかなのかな。…悪い癖だとは思わないよ。
この部屋に、いる?(キョロキョロとあたりを見回す)
さみしがりや…かなぁ、僕としては余計な人付き合いはめんどくさいと思ってるんだけど…。まあ、つい気になった相手には声をかけちゃう悪い癖はあるけどさ。
居ないからつくるんだよ。
理想っていうのは違うね、理想じゃないの、現実。現実に居ないからつくり直してるの。
それに…ネットじゃないの、つくり直した分はちゃんとこの部屋に居るよ。
……灯くんって結構さみしがりなの?(ほぼ真横にある灯くんの顔見つめ)
たいせつなひとを、つくる?(さらに顔を近づける。アンの肩越しにモニターを見る。斗南には理解不能な文字列で埋め尽くされているのを見て頭がクラクラしてくる)
…君の基準がよくわからないが、そういう相手は生身のふれあいで作るものじゃないかな?もちろん完璧に理想通りの相手なんて見つかりっこないけどさ。
…まあ、僕はそういう相手リアルにもネットにもいないからあんまり偉そうなことは言えないけど。
秘密、って言いたいところだけど…せっかくだし、おしえてあげる。
……たいせつなひとをつくってるの。
…ふーん、まあ自分で面倒じゃないってんなら僕がとやかく言う事じゃないよな。で…
(ひょいっと身を乗り出して画面を覗きこむ)何、やってるのこれ?
?(とりあえずペットボトル受け取り)
面倒じゃないよ、必要なものを増やしてたらこうなってただけだもん。
全部、大事な部品だから。
(モニターに写った素顔を見られてろっこん解除)うわっ…っとっとっと、ベッドベッド…っとっと。
(差し出されたペットボトルを受け取り)ん、サンキュー(ごくごく)別に、頼まれたから来ただけだし。
…しかしこうごちゃごちゃしてるといろいろめんどくさくならないか?(と、言ってペットボトルを返す)
電気、たくさん使っちゃうから出来るだけ節電してるの……(後ろで灯が付いたのに気付き)
ん…機械の上だと燃えちゃうかもしれないから、ベッドの上がいいかも。
……わざわざ、ごめんね。(ろっこんのうまい水、とラベルの貼ってあるペットボトル差出し
んじゃ、失礼して…うわ、暗い部屋だな、足元ごちゃごちゃしてるし…誰も見てないよな(アンがモニターに集中していて他の誰も自分の素顔を見てないことを確認して、ろっこんをマッチ一本程度に発動、コードに引っかからないよう足元を照らしながら)…えーと、プリントここに置いとけばいいかな?
灯くん>
……プリントありがとう。結構散らかってるけど、入る? 水くらいしか出せないけど…。
(足元まで及ぶ配線やそこかしこで光るLEDがドアの隙間から覗く)
(コンコン)…同じクラスの灯だけど、先生に配り忘れてたプリント届けるよう言われて来たんだけど入っていいかなー。
(はぁ、授業中居眠りしたからって面倒なことやらされてるなぁ…ま、仕方ないか)