バイトを追えひたすら寝子島沿岸を北上する如月庚氏。
時刻は18時を回り、旧市街まであと500mの地点で片側交互通行の停止信号に捉まった。
約二分の長い信号待ち。
電光掲示板が着実にカウントダウンされる。
そして、このカウントダウンは同時に
如月庚氏が天高く昇天する瞬間までの、死へのカウントダウンでもあったのだ。
電光掲示板の表示が10秒を切った段階で、
彼の脳裏には本能的な闘争心が沸き上がったに違いない。
自分はライダーである…と
『5・4・3・2・1・0・GO!』
この時点で彼の闘争心は頂点に達していた、それを煽るかの様な「GO」の表示。
そして彼はスロットルを全開にしたのだ…彼の右手の動きに注目して欲しい。
しかし彼のバイクは発進しなかった・・・
実はこの時、彼のギアがニュートラルに入っていたのである。
焦る如月庚氏。
そして彼はこの瞬間、スロットル全開の状態で1速にギアをチェンジしてしまったのである。
1速に入った瞬間の急激なショックが、衝撃となって彼の体を揺さぶる。
そして彼のバイクは荒馬となって天高く嘶ぎ
それでも必死に乗りこなそうとする彼の抵抗も虚しく
昇天を余儀無くされたのである。