【スキー＆スノボ合宿】銀色のキャンパスへ、描けシュプール！｜リアクション

【スキー＆スノボ合宿】銀色のキャンパスへ、描けシュプール！

　２日目の午後の自由時間、梓智依子は何をしようかと考える。
　１日目の講習はスノボを特訓したが、２日目の午後は自由時間だから何をしても良い。
　お土産でも買おうか、と考えたが……ふと自分の娘の楓のことを思い出した。

「そういえばまだ動画送れてなかったわね……」

　合宿前日、楓がやだやだと駄々をこね『かえでもいっしょにいく！』と泣いていたのが頭に過る。
　今回は流石に家族旅行ではなく学校行事なため、楓を連れて行くことは出来ず留守番させなければならない。
　母親と離れるのも嫌だし、スキーをやってみたいしで楓を宥めるのには苦労した。
　最終的にはママがスノボでカッコよく滑るところをおじいちゃんのスマホに送るから、と約束を取り付けて泣き止ませたが……その動画を撮っていない。

　どうやって撮影しようか、と考えあぐねている所に、同級生の子達が通りがかる。

「あっ、梓さん。今から滑るところ？」
「ん？　うん、そう。ただ、ちょっと動画撮らなきゃいけなくて」
「え、動画？　どうして？？」
「実は……」

　かくかくしかじか、楓に動画を送らなければならないことを説明する智依子。
　その途中でスマホの中に収めている楓の写真を見せたりして、どんな子なのかを話す。
　智依子より年下な同級生達は皆、楓の可愛らしさに釘付け。まさにアイドル状態となった。

「なるほどねー。じゃあウチに任せてよ。こう見えても撮影は得意だからね！」
「よかった。じゃあ、お願いしてもいい？」
「いいよー。どこで撮ろうかー？」

　同級生達と共にコースを選び、リフトに乗った智依子。
　スタート地点についてから同級生に向けて手を振り、録画開始の合図を送る。
　そこから滑り出しを好調に、自分の脳裏に浮かんだイメージと身体を同調させ、途中で華麗なトリックを交えながらプロ顔負けの滑りを見せていく。

　滑り終わって同級生に駆け寄ってみれば、凄かった、の一言から始まる称賛を受ける。
　動画撮影も上手くいったようで、チェックのために見せてもらうと智依子の姿を一度も外さずに捉えた動画となっている。

「うん、いい感じ。ありがとう」
「どういたしまして！　また動画撮りたくなったら言ってね～」
「楓ちゃんによろしくね～！」

　同級生達も滑りたいからと別れ、智依子は一旦動画を祖父のスマホへと送信する。
　その後もう一度滑り、時間いっぱいまでスノボを楽しんだ。

　夜の自由時間も終わる頃、スマホに電話がかかってくる。
　祖父の名が出ていたため祖父からかと思いきや、電話の向こうにいたのは楓。

「ママ、かっこよかったよ！」

　動画を見たのか、すぐにでもこの言葉を言いたかった楓は祖父にお願いして電話をしたようだ。

　それからしばらく、親子の語らいが続く。
　明日には帰ってくるからね、という言葉を残して。

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