期末テストだよ！中学生の黄昏時＜物語編＞｜リアクション

期末テストだよ！中学生の黄昏時＜物語編＞

☆テスト最終日：数学

　１年１組の佐藤瀬莉が中学に入って初めての期末試験は、散々だった。
　１日目は謎のラップ音と蛍光灯がバチバチ言って点滅して気が散った。
　２日目はエアコンが冷えすぎて風邪ひきそうになった。
　３日目はなぜかくすぐったくなり、笑いそうになるのを必死で堪えた。

　……そして今日。
（暑い……クーラーが全然効いてない……）
　二日前は寒すぎて風邪ひきそうだったというのに、今度は暑すぎて熱中症になってしまいそうだ。
　二日前の寒さに懲りてひざ掛けを用意していたのに、まったく無駄だった。
（この学校、ボロすぎない？）
　頭もボーッとしてしまう。
　それでも飛んでしまいそうな意識をギリギリで保ちつつ、瀬莉は半ば根性と意地で数学のテストを解いていた。
　ただでさえ悪筆なのに、何度も暑さのせいで書き損じては消しゴムで消して……もう何が何だかさっぱりわからない。
（それでも白紙提出よりはマシだろうし。せっかく勉強したんだから……）
　最後の気力を振り絞って、解答を書き終えた。
（後は、体育で最後……）

　その後の体育のテストもクーラーの不調は変わらなかった。
（このテストが終わったら……アイス食べたい）
　意識朦朧の態で、半ば根性で書き上げた。
（できた……あれ？）
　目の前がチカチカして白くなって──意識が飛んだ。
「佐藤さん？！」
　教室のざわめきは、もう瀬莉の耳には届かなかった。
　

（……あれ？）
　目が覚めたら、見慣れない天井があった。
（学校？　私……？）
　周囲に目を向ければ、ベッドを仕切るカーテン。
「佐藤さん？　気がついた？」
　顔を出した養護の先生を見て、ここが保健室だと気付いた。
「大丈夫？　気分は……？」
「……私、倒れたんですか？」
（保健室に運ばれるのは久しぶりだな）
　小学生の頃はしょっちゅうだったけど、もう丈夫になったと思っていたのに。　
「ああ、暑さの余り倒れてしまったみたいだね。今水を持ってくるよ」
　あの暑さが嘘のように、保健室は涼しかった。
　カーテンの向こう側からは規則正しい寝息が聞こえてきて、どうやら保健室のお世話になったのは瀬莉だけではなかったらしい。
　気分が悪いようなら、念のため病院に行った方がいいかもしれないね、と先生に勧められた。
　
　母が迎えに来てくれて病院へ向かった。
　軽い熱中症との診断を受け、余り体が丈夫ではない瀬莉は大事を取って三日ほど学校を休むことになった。

　ようやく体調が戻って登校し、返ってきたテストを恐る恐る見ると。
（あれ？）
　意外に悪くなかった。

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