突然の筋肉成長期｜リアクション

突然の筋肉成長期

●筋肉の研究

　朝。
　神野美野梨は猫鳴館の自室で目を覚ました。身体を起こして顔を洗おうと立ち上がると、自分の身体に違和感を覚える。
　違和感の正体を確かめようと身体を観察すると、筋肉がものすごく発達していた。美野梨は自分の筋肉に驚きつつ、この不可思議な現象に対して研究意欲が沸いてきた。

「どのくらい力が出るのかしら？」

　力こぶを作ったり、部屋を見回して重いものを持ち上げてみたりと色々試してみる。

（運動は苦手だけど、この身体ならいろいろできそう）

　美野梨は着替えなどを鞄に入れると、外へ出た。
　彼女が向かった先は広場。ここは運動するには十分な広さを備えている。自分の身体能力を確かめるにはもってこいの場所だ。

「筋肉がつくと足も速くなるかしら？」

　まずは足の速さに変化があるか確かめる。スタート地点とゴール地点を定めると学校で計測するときと同じ体勢になる。そして計測開始と同時に走り出す。そのとき踏みしめた第一歩の感触が普段より明らかに強いのを感じた。その勢いを失わないように走り続けてゴール地点へ。
　記録は以前のタイムよりかなり早い。体感的にもその結果は納得できた。

「持久力への影響も興味深いわ。1000mくらい走ってみるべきかしらね」
「筋肉がつくと筋肉痛は起きないのかしら？　重いものを持って走ってみるとわかりやすいかもしれないわね」

　そうして思いつくものを美野梨は１つずつ検証していく。しかしずっと身体を動かし続けていると、流石に疲れが出てくる。美野梨は肩で息をしていた。

「……我ながらちょっとハードルが高かった気がするわ。筋肉がつく＝心肺機能が発達するというわけではないわよね？」

　美野梨はベンチに身体を預けると、深く呼吸をしながら休息をとる。そしてふと思い出したように鞄のなかを探る。取り出したのはプロテインドリンク。ここへやってくる前に買っておいたものだ。初めて飲むため、期待と不安を抱えつつ口に運ぶ。

「今まで飲んだことなかったけど、身体が求めてる気がするわ……」

　それを少しずつ飲みながら身体を伸ばす。

「これからは科学的に筋トレもしてみることにするわ」

　筋肉がつくと体力がつくことを実感した美野梨は今後の予定を１つ追加した。

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