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- 00月00日生 00歳
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【バレンタイン】学生達のValentine's Day!
●勇気を出して感謝の気持ちを
勅使河原 悠にとって、今までバレンタインはそこまで緊張を強いられるものではなかった。友達や姉にあげるくらいで。毎年至って平和なものだった。
けれど今年はちょっと違った。いや、悠的にはかなり違うものになった。
彼女は異性に、クッキーと……プレゼントを用意したのである。
彼女が渡そうと思い立った人物は永田 孝文。寝子高で古文を担当している教師である。
ここできちんと説明をしておかないと悠が「そんな……違うんです」と恥ずかしがりすぎてしまうので、言っておこう。彼女は孝文に恋愛対象として渡すのかというと、ちょっと違う。少し前に自分の姉から、
「バレンタインにあげる人はいないのか」
「恋愛的な意味じゃなくても、感謝の気持ちを伝えるというのもバレンタインだ」
などと言われ（姉としては引っ込み思案な彼女を心配したのかもしれないが）、そんなものなのかと少し考え込んだ悠。そして出てきたのが孝文の顔だったのだ。
何やかんやと悠は孝文にお世話になっている。
（感謝の気持ちを込めて永田先生にプレゼントを渡せたらいいな）
と、彼女にしてみたらだいぶ思い切ってバレンタインの用意をしたのである。
だが今日になってやはりと言うべきか彼女は迷い始めた。
本日孝文のために用意したのは、クッキーと、プレゼントの栞。栞は和紙で作られており、若緑色のなかにところどころ煎茶色の混じった粋な柄である。和紙製だから軽くて邪魔にならない……ならなければいいな、という悠の細やかな心遣いと消極的な希望であった。
このせっかく考えて選んだ栞を、
（栞、とか……いらないかも……）
と。挙げ句にもうバレンタイン自体を、
（それに、急に渡されても、困るかな……）
と、思い始めてしまったのである。
朝からあれやこれや考えていたら、いつの間にか下校の時間になってしまった。悠の周囲の男子学生達なんかは、（何をそんなに憂いているんだい、勅使河原さん。チョコを渡すのが恥ずかしいのかい？ そんな事はない、俺はいつでもウエルカムだぜぃ！）なんて思っている奴らもちらほらいたが、悠がちっとも誰にも渡さないのでガックリと肩を落とし帰っていく。そんな事とは露知らず、悠は取りあえず職員室まで行くか、それともやっぱり渡すのをやめようか……と悩みながら１人廊下を歩いていた。
職員室が近付いてくると悠の心拍数が上がってくる。自分の心臓はこんなにハッキリと鼓動をしてたんだと思うくらいだ。悠がああやっぱりやめようでないと自分は職員室前で倒れてしまうと思いくるりと方向転換をした時、前から歩いてくる人物に気が付いた。
「あ、あの！ ……永田先生！」
反射的に声をかけてしまった。全国的な禁煙運動などなんのその、パイプを粋にくゆらせ、長着に羽織姿で颯爽と歩いていた孝文が顔を上げた。
「おお、勅使河原か」
「あ、はい、勅使河原です」
緊張のためおかしな返事をしている事に悠は気が付いていなかった。彼女の頭の中は軽くパニックになっていた。しかし声をかけた以上、もう渡すしかない。悠は覚悟を決めて孝文に歩み寄った。
「こ、これ……もし、よければ……！」
悠は目をつぶりながらずいっと自分の持っている包みを差し出した。
「コーヒーに合う、クッキーと、それから、栞、です……」
悠は真っ赤になりながらも必死に言葉を続けた。
「あの、えっと……感謝の気持ち、込めて、って……えっと……ごめんなさい……」
もう最後は尻すぼみになって謝ってしまった。恥ずかしくて顔が上げられない。永田先生が迷惑に思っていたらどうしよう、やっぱりやめればよかったかもとぐるぐる思っていると、ポン、と頭に感触があった。
え、と思い顔を上げると、孝文が微笑みながら自分を見ている。そしてもう１度、孝文はポンと悠の頭を叩いた。
「何で謝るんだい……お前みたいに真っ直ぐな生徒には意地悪しにくいねぇ」
参った、というように軽く眉をひそめると、孝文は悠から包みを受け取った。
「ありがたく頂戴するよ、勅使河原」
孝文はお礼を言うと、口の端を自嘲気味に曲げて言った。
「でも俺はそんな感謝されるような事したかなぁ？」
「はい！ お三夜まつりとか、伊勢の時とか、大晦日とか……たくさんです！」
嬉しそうに言う悠。その真っ直ぐな気持ちは４０過ぎの中年男には眩しすぎて、「いやはや参った」と孝文は苦笑しながら頭を掻いた。
しばらく２人は思い出話をし、別れた。
（よかった、受け取ってもらえた）
廊下を歩きながら悠の頬はほんのり上気している。また孝文との思い出が増えたな、と思うとぽわりと温かな光が彼女の心に灯るのだった。
勅使河原 悠にとって、今までバレンタインはそこまで緊張を強いられるものではなかった。友達や姉にあげるくらいで。毎年至って平和なものだった。
けれど今年はちょっと違った。いや、悠的にはかなり違うものになった。
彼女は異性に、クッキーと……プレゼントを用意したのである。
彼女が渡そうと思い立った人物は永田 孝文。寝子高で古文を担当している教師である。
ここできちんと説明をしておかないと悠が「そんな……違うんです」と恥ずかしがりすぎてしまうので、言っておこう。彼女は孝文に恋愛対象として渡すのかというと、ちょっと違う。少し前に自分の姉から、
「バレンタインにあげる人はいないのか」
「恋愛的な意味じゃなくても、感謝の気持ちを伝えるというのもバレンタインだ」
などと言われ（姉としては引っ込み思案な彼女を心配したのかもしれないが）、そんなものなのかと少し考え込んだ悠。そして出てきたのが孝文の顔だったのだ。
何やかんやと悠は孝文にお世話になっている。
（感謝の気持ちを込めて永田先生にプレゼントを渡せたらいいな）
と、彼女にしてみたらだいぶ思い切ってバレンタインの用意をしたのである。
だが今日になってやはりと言うべきか彼女は迷い始めた。
本日孝文のために用意したのは、クッキーと、プレゼントの栞。栞は和紙で作られており、若緑色のなかにところどころ煎茶色の混じった粋な柄である。和紙製だから軽くて邪魔にならない……ならなければいいな、という悠の細やかな心遣いと消極的な希望であった。
このせっかく考えて選んだ栞を、
（栞、とか……いらないかも……）
と。挙げ句にもうバレンタイン自体を、
（それに、急に渡されても、困るかな……）
と、思い始めてしまったのである。
朝からあれやこれや考えていたら、いつの間にか下校の時間になってしまった。悠の周囲の男子学生達なんかは、（何をそんなに憂いているんだい、勅使河原さん。チョコを渡すのが恥ずかしいのかい？ そんな事はない、俺はいつでもウエルカムだぜぃ！）なんて思っている奴らもちらほらいたが、悠がちっとも誰にも渡さないのでガックリと肩を落とし帰っていく。そんな事とは露知らず、悠は取りあえず職員室まで行くか、それともやっぱり渡すのをやめようか……と悩みながら１人廊下を歩いていた。
職員室が近付いてくると悠の心拍数が上がってくる。自分の心臓はこんなにハッキリと鼓動をしてたんだと思うくらいだ。悠がああやっぱりやめようでないと自分は職員室前で倒れてしまうと思いくるりと方向転換をした時、前から歩いてくる人物に気が付いた。
「あ、あの！ ……永田先生！」
反射的に声をかけてしまった。全国的な禁煙運動などなんのその、パイプを粋にくゆらせ、長着に羽織姿で颯爽と歩いていた孝文が顔を上げた。
「おお、勅使河原か」
「あ、はい、勅使河原です」
緊張のためおかしな返事をしている事に悠は気が付いていなかった。彼女の頭の中は軽くパニックになっていた。しかし声をかけた以上、もう渡すしかない。悠は覚悟を決めて孝文に歩み寄った。
「こ、これ……もし、よければ……！」
悠は目をつぶりながらずいっと自分の持っている包みを差し出した。
「コーヒーに合う、クッキーと、それから、栞、です……」
悠は真っ赤になりながらも必死に言葉を続けた。
「あの、えっと……感謝の気持ち、込めて、って……えっと……ごめんなさい……」
もう最後は尻すぼみになって謝ってしまった。恥ずかしくて顔が上げられない。永田先生が迷惑に思っていたらどうしよう、やっぱりやめればよかったかもとぐるぐる思っていると、ポン、と頭に感触があった。
え、と思い顔を上げると、孝文が微笑みながら自分を見ている。そしてもう１度、孝文はポンと悠の頭を叩いた。
「何で謝るんだい……お前みたいに真っ直ぐな生徒には意地悪しにくいねぇ」
参った、というように軽く眉をひそめると、孝文は悠から包みを受け取った。
「ありがたく頂戴するよ、勅使河原」
孝文はお礼を言うと、口の端を自嘲気味に曲げて言った。
「でも俺はそんな感謝されるような事したかなぁ？」
「はい！ お三夜まつりとか、伊勢の時とか、大晦日とか……たくさんです！」
嬉しそうに言う悠。その真っ直ぐな気持ちは４０過ぎの中年男には眩しすぎて、「いやはや参った」と孝文は苦笑しながら頭を掻いた。
しばらく２人は思い出話をし、別れた。
（よかった、受け取ってもらえた）
廊下を歩きながら悠の頬はほんのり上気している。また孝文との思い出が増えたな、と思うとぽわりと温かな光が彼女の心に灯るのだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年09月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年09月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年09月22日 11時00分
