それは、古くレトロな雰囲気を醸し出す、一見綺麗な造りの人形店。
今までにも古今東西の様々な人形を取り扱ってきたが、いかんせん値段も高ければ、欲しがる人も少ない高級人形の専門店。
よって、その外見に伴わず、お店の経営は借金だらけの火の車状態だった。
そんな中──事件は起こった。
「大変だ! 『フローティア』が無くなった!!」
「泥棒っ!?」
「厳重に倉庫にしまっておいたし、鍵も掛かっていた!」
「じゃあ、何で無くなったのよ! 見つからなかったら売れる売れないどころの騒ぎじゃないわよ!」
「け、警察に届けよう! 1体でも大損失だ!」
それは、残暑も感じない、透き通った光が差し込む心地良い秋の始まりのこと。
暑くはない日差し、気持ちの良い風が吹く中で、一人の少女が歩いていた。
白の長袖ブラウスに、染物と思われる淡い薄緑色のロングスカート。
──この暑くもない日に、紫外線対策の傘を差して。
声を掛ければ、柔らかかつ静かな口調でこう答えるだろう。
日傘に隠れていた、染めたにしては発色の良い薄紫の髪に、透き通り太陽の光に反射する煌いた緑の瞳をもってして。
「ごきげんよう。
外を歩くのは初めてですが、世界はこんなに素敵なところだったのですね」
初めまして、こんにちは。冬眠と申します。
この度は、寝子島の人形店にありました、人と同じ大きさの渾身作<宝石人形>シリーズの中から、その内の1体がいなくなりました。
その人形に関わる事でしたら、今回は何でも行動可能です。
ですが、曰くのある人形ですので、下記の【状況】から内容をご確認の上、行動を取っていただければと思われます。
【状況/PC様が事前情報として、簡単に入手出来る情報】
時間として朝の10時頃、寝子島の人形店(マップ「K-7」)から、人とほぼ同じ大きさの1体(実寸168cm)の人形がいなくなりました。
お店は大混乱です。警察は呼んでいますが、まさか自分の意思で歩いているとは思われず、また人形は衣類で球体関節部分が完全に隠れている為、警察が先に見つける事はまずありません。
店内には二人の店員さんがいます。
これでもかと言う位の大声で、状況と人形のお値段についての悲鳴を上げている為、状況を知る事はそんなに難しくありません。
もはや猫の手でも借りたい状況ですので、どんな人にでも事情を説明してくれます。
店員曰く「人形と同じ服装の人影が窓から見えたような気がしたんだけれども……ドールが一人で歩くわけないし……」
事件が耳に届く頃、人形はシーサイドタウン(マップ「J-8」)付近を歩いています。
【人形】
瞳に大きなフローライト(蛍石)を使用した、最高級クオリティの人と同じ大きさをした等身大球体関節人形(ビスクドール)です。
人形の名前は『フローティア』
この度、神魂影響により人並みの意思と思考を持ち、念願の外の世界に出る機会を得ました。
【人形外見】
・薄く透き通るような透明感を持つ紫の髪
・濃い緑色をした瞳
・白の長袖ブラウス
・染物の薄緑色のロングスカート
(衣類のお陰で、球体関節部分は全て隠れてしまっています)
【状況2/PL情報(PC様が知る為には簡単な情報収集が必要となります)】
日の当たらない場所に置かれ続けてきたフローティアの目には、向かいに張られていた寝子島の地図と、エノコロ岬を夕日が照らすポスターが何年も映っていました。
その為、フローティアの夢は『人の世界を知る事』と『エノコロ岬から夕日を見る事』
フローティアはそれを目指し、そしてそこに住まう人がどんな存在か観察しながら行動します。
しかし、この人形は太陽光に非常に弱く、時間経過と共に少しずつ朽ちていきます。
しかし、その時間までずっと外にいると、瞳の宝石が太陽の光で劣化し、夕日の頃には何も見えなくなってしまいます。
商品としても、瞳の宝石と同時に身体全体が劣化していく為、販売価値を無くします。
【神魂効果・影響時間】
神魂の効果により、フローティアには五感が生まれ、飲食も可能です。
ただ、内部までは作られていない為、その食べ物がどこへ行っているかは謎のままとなります。
エノコロ岬の太陽が海へと沈んだ瞬間に、フローティアはただの人形へと戻ります。
【留意内容】
今回は、人形に関わる内容でしたら何でも可能です。
しかしながら、相反するアクションがございました場合(「時間前に、人形を連れ戻す」と、「人形に夕日を見せる」等)状況によりアクション内容からマスタリング判定を行い、片方が失敗する可能性がございます。
その上で、自由に動いていただくも、コメントページで意見のすり合わせをするも自由です。
それでは、リアクションでお会いできます事を祈りまして……