「はーあ……とうとう夏も終わっちゃったなあ……」
ゴミが散乱しているマンションの一室でひとり淋しそうに呟くのは、
久保田 美和。
28歳、国語教師。独身。彼氏なし。
「ほんとならこの夏は、彼氏をつくって、ふたりで海に行って、かき氷なんか食べたりして……」
イメージだけが膨らみますが、目の前にあるのは残念ながら食べかけのカップ麺。
美和は、もう一度溜息を吐いて、なんとはなしにテレビをつけました。
すると、ちょうど占いをやっていたところのようです。
それを見た美和先生は、がたっと勢いよく立ち上がりました。
「こ、これよっ!!」
興奮を抑えられぬまま、美和はテレビを消すのも忘れ部屋を飛び出します。
テレビからは、アナウンサーが占いを読み上げる声が聞こえています。
「ではもう一度お伝えします。本日最もラッキーな星座はふたご座のあなた。ラッキーパーソンは、忍者です」
ところ変わって、寝子島映画村。
ここにはつい最近、
「忍者ミュージアム」というコーナーが期間限定で出来ていました。
本物さながらにカラクリが仕掛けられた忍者屋敷を中心に、
手裏剣投げ、忍術体験などが出来るちょっとしたアトラクションです。
美和は、この忍者ミュージアムに来ていました。
「ここに、私の運命の人が……っ!」
きょろきょろと辺りを見回す美和。するとひとりのイケメン忍者が、目に飛び込んできました。
「キラッとした目、すらりとした身長……きっとあの人ね!」
「ん?」
忍者も視線に気づいたのか、美和の方を見ます。
「あ、あのっ! 私とデート……じゃなくってその前に連絡先を、の前にお名前をっ!」
このチャンスを逃してはならないと、完全にテンパりながらイケメン忍者に声をかける美和。
すると次の瞬間、かん高い女性の声が束になって飛んできました。
「あーっ、あんた今、萩ノ助くんのこと口説いたでしょ!」
「萩ノ助様に近づこうなんて、百年早いですよ。私の計算では、百年経ってもあなたの番は来ませんけどね」
「萩ノ助の愛は、国の重要文化財なんやで!」
「ええっ!?」
驚いた美和が顔の向きを変えると、そこには
赤い忍び装束を着たくノ一たちがいました。
「抜け駆けなんてしたら、暗殺しちゃうぞ!」
「暗殺!? 物騒! 物騒だよ!」
どうもこのくノ一たち、揃いも揃ってイケメン忍者に首ったけのようです。
彼女たちはゴム製のクナイを懐から取り出すと、美和を激しく睨みつけました。
「ていうかみんな可愛いし、俺みんなと付き合いたいな。で、君の名前は?」
当のイケメン忍者は、そんなくノ一たちの殺気などお構いなしに美和に話しかけています。
それを目の当たりにして、彼女らの怒りは臨界点を突破したようです。
「何あんた萩ノ助様に名前聞かれてんのよ! やなやつやなやつ!」
くノ一たちは口を揃えて言うと、一斉に美和に向かって走ってきました。
「え、えっ!?」
わけもわからず咄嗟に逃げだす美和と、それを追いかけるくノ一たち。
突然の逃走劇が、ここに始まってしまいました。
忍者ミュージアムはもうすぐお昼を迎え、人が混み出す時間。
人が増えれば増えるほど美和の存在は目立たなくなるでしょうが、相手はくノ一。
美和ひとりで逃げ切ることは至難の業でしょう。
彼女が週明けも無事学校に来れるよう、逃走を手伝ってあげてください。
マスターの萩栄一です。
今回の舞台は寝子島映画村(K-5付近)の中に新しくできた「忍者ミュージアム」という施設の中です。
映画村内の一区画なので広さはそこまでありませんが、忍者屋敷や草むらなど隠れる場所はそこそこあります。
ただ美和はパニック中で隠れることもせずバタバタ逃げ回っているので、施設内でとても目立っています。
なおこの忍者ミュージアム、現在オープン記念として、
二名で入場するとそれぞれ通常の半分の入場料で入ることが出来ます。
PCが忍者ミュージアムにいる動機付けのひとつとして上記設定を使いたい方はご自由にお使いください。
※くノ一の相手をする場合、誰かひとりを指名して相手してください。複数人と戦うことは出来ません。
※萩ノ助と接触をする場合、くノ一との戦闘には加われません。
※忍者ミュージアムで遊ぶ場合、3つの施設のうち2つまでが選択可能です。
※忍者ミュージアムで遊ぶ場合、逃走劇に巻き込まれる程度は可能ですが本格的な戦闘は出来ません。
以下、忍者ミュージアムやNPCの情報です。
◇忍者ミュージアム
手裏剣投げ……5投で200円です。的の中心に当てると景品がもらえます。
忍術体験……水蜘蛛を使用し、池の上を歩くことが出来ます。最悪落ちて濡れます。
忍者屋敷……隠し扉や屋根裏部屋などのギミックがある屋敷です。子供やカップルに評判が良いようです。
◇萩ノ助
イケメン忍者です。女好きで、自分のために女性が争っている様子にご満悦です。
イケメンでも心はゲスのようです。
◇くノ一たち
ヨシエ、ナミ、ヒロミの3人です。年齢は20代後半、みんな可愛いです。
ヨシエはその迫力ある太もも、ナミは滲み出る知性、ヒロミは関西特有のノリがそれぞれ武器です。
今回は軽めのノリでいきたいなと思っています。
ろっこんも、もちろん使用可能です。
割と派手にやっても大体は「忍者ミュージアムの仕掛けかな?」と勘違いしてくれます。
シリアスなバトルものというよりはドタバタコメディのようなイメージですが、
集まったアクション次第では多少ノリが変わるかもしれません。
ちなみにガイドのいざこざに全く関わらず、忍者ミュージアムをただ楽しむことも可能です。
もちろん、その最中に騒動に巻き込まれるということも可能です。
皆さんのアクション、楽しみにお待ちしています。