「まったく、片づけたばかりだというのに……」
やれやれ、と大仰に
鷹取 洋二は肩をすくめてみせた。
「理解に苦しむな……よりによって、こんな季節に」
猫鳴館の大部屋にどでんと鎮座ましましたのは、コタツ。
夏真っ盛りのこの時期に、見ているだけで暑苦しい。
「とっとと片づけてしまおう」
そう言って、一歩部屋に踏み入った瞬間、彼の脳裏に不思議な光景が湧き上がった。
「そう、それは半年前。凍える枝とハチドリの羽撃きを窓越しに見ながら、僕に詩神の舞い降りたのは、コタツの中のことではあるまいか……」
要するにコタツの中でぐーたらうへへと妄想をこいていただけなのだが。
そうするともう、彼の脳裏にはめくるめくめくるめく、コタツとの日々が渦巻き始めるのだ。
あの時も、コタツでぐーたらしていた……。
あの時も、コタツでぐーたらしていた……。
あの時も、コタツでぐーたらしていた……。
誘われるままに、布団の中にうずくまろうとする洋二。心なしか夏の暑さも去って、なにやら木枯らしのようなものも吹いてきたような気がする。
「そう、こんな日はコタツの中で、だらだら過ごすのが最善の策……」
意志薄弱!
さあ大変! このままでは鷹取君の一度きりの夏が、コタツでぐーたらして終わってしまう! みんなで彼の夏を守ろう!
え、どうでもいい? 一緒にコタツでぐだぐだしたい? うん、それもいいよね……。
進歩か、退歩か! 人間の実存にせまる本格的哲学シナリオです。
嘘です。ぱーすぺといいます。
●場所
忽然とコタツの出現した猫鳴館の大部屋。結構大き目なので、みんな入っても大丈夫。
●時間
早朝から昼にかけて(午前中の出来事です……)。
●コタツ
コタツさんです。
夏まっさかりなのに、冬の誘惑度そのままに、みなさんを誘惑します。
初見の印象は、本人の「ぐーたら度」「コタツへの依存度」に由来します。
ふつうの自制心の持ち主なら「うわっ、あつっくるしー!」と思えるでしょう。
(鷹取君は、かなり緩い方だったんですね……)
時間の経過につれ、コタツへの愛おしさ、郷愁が増し、コタツに入りたくて仕方なくなります。
(南国出身でも、意志の弱い人はコタツへの愛おしさを刷り込まれてしまいます)
コタツに実際入ってからも「うわ、熱っ!」と正気に戻れるか、「うーん、ぬくぬくしてあったかい」と幻惑に沈むかは、個人の意志力にかかっています。
コタツの電源はONになっていますが、そのままOFFにしてもコタツの幻惑効果は継続します
●アクションの手引き!
・コタツ片づけたい派の方
「なぜコタツを片づけたいか」「抵抗にあったらどうするか」「自分もコタツの誘惑にさらされたらどうするか」などを書いていただけるとありがたいです。
・誘惑に負けちゃいたい派の方
「いかにぐだぐだするか」「コタツを片づけられそうになったらどうするか」などを詳細に書いていただけるとありがたいです。