旧市街の路地に位置する、ちょっと年季の入ったお好み焼き屋。
知る人ぞ知る名店、地元民に長年愛され続ける「うさぎ屋」の店内は、平日の昼過ぎということもあって客もまばらだ。
スピーカーから流れてくる歌謡曲がどこか古臭い郷愁を誘う。その感覚をごまかすようにビールを一気に流し込むと、空になったジョッキを掲げて声を上げた。
「満月ちゃーん、ビールおかわり!」
カウンターで一人お好み焼きを食べつつビールを飲んでいるのは、うさぎ屋の常連である池澤という名の男性だった。初代店主の頃から通い詰めており、何の仕事をしているのか平日にふらりと現われては酒ばかり飲んでいる。
「ったく、昼間っからよく飲む客だこと」
呆れたように言いつつ、若き二代目店主の
宇佐見 満月はカウンターのテーブルに茶色の瓶ビールをどんと置く。
「そろそろ学生たちが来るからね」
それまでには酔っ払いは退散しろよ、と言外に含みつつ宇佐見が言うと、学生! と池澤が妙な感慨を込めて声を大にした。
「学生! いいねー! ここ寝子高の子もよくくるんかね?」
「まあね。うちんとこの弟と姪も寝子高だから、友達も結構遊びに来てくれるさね」
「あぁ~……満月ちゃんとこのチビ、そっか、もう高校生かぁ」
子どもの成長は早いなぁと目を細めて言う池澤。高校生、高校生、と酒に酔った赤ら顔でぶつぶつ呟く様子はちょっと怪しいオジサンである。
と、そのとき、ガラガラと入り口の扉が開く音が聞こえてきた。
「ミツキさんこんちわー!」
「あー疲れた疲れた。俺コーラ! コーラ!」
がやがやと騒ぎながら入ってきたのは、寝子高生の一団だった。ふと時計を見ると時刻はまだ4時を回ったところである。
まるで我が家のようにくつろぐ高校生たちは、いずれも見知った顔である。各々にいつもの飲み物を置いてやりながら、宇佐見は首を傾げる。
「アンタたち、学校は? まだ4時じゃないか」
「んー? なんか先生たち会議があるからって、ホームルーム無しになったー」
「オレ豚玉ー! あと焼きそばも」
「あ、俺は海ミックスで!」
「その焼きそば割り勘しよーぜ」
置かれた飲み物をぐびぐび飲みながら、高校生たちは次々とお好み焼きを注文する。
晩御飯も控えているというのに、さすが高校生の食欲。わけぇなー、と、その様子を見ながら池澤は声を漏らした。
「オレにもあんたらみたいな時代があったんだがなァー。いつの間にやらこんなオッサンになってしまって……」
若い時間を無駄にしちゃいかんよ、と赤ら顔をぐいと近づけてくるおっちゃんに、高校生たちは戸惑い気味だ。
「ミツキちゃーん……誰、このオッサン」
「あーもう気にせんでいいさね……ほら、もう池澤さん、学生に絡み酒はやめとくれよ」
「絡んだぁ? このオレがいつ絡んだっていうんだい!」
酔っ払いの常套句に深々とため息を着きつつ、宇佐見は店内の時計を見た。
時刻はちょうど4時。これからどんどん学生たちが食べにくるというのに――
「ったくもう、仕方ないさね……」
お久しぶりです、花村です。
宇佐見 満月様と「うさぎ屋」をガイドに登場させていただきました。
イラストも日常感あふれるとっても素敵なものですよね。ありがとうございました!
今回のシナリオは、平日の午後から夕方の様子を描こう! という超日常シナリオです。
ガイドの「うさぎ屋」は舞台の一例です。もちろんみんなでお好み焼き屋に行くのもいいですし、その他いろんなところに立ち寄っていただいても構いません。
思いつくままご自由にお過ごしくださいませ。
お友達と参加したり、ひとりで町をぶらぶらしてみたり……
学生も社会人の方も歓迎です。ご参加ぜひぜひお待ちしております!