懐かしい、と思うほどの時間は経ったのだろうか。
寝子島高等学校の校門前に立つ
綾辻 綾花は、どれくらいぶりだろうかと記憶を辿り、小さく笑ってまずは自転車置き場を目指すことにした。
母校を卒業したのは4年前。けれど、何かと賑やかな寝子島にある唯一の高校が、伝統を重んじて大人しいわけもなく――島民を巻き込んだお祭り騒ぎは今も健在だし、そこへ
早川 珪がいるとなれば仕事の邪魔をしない程度にこっそり様子を見に来ることも、なかったとは言えない。
けれど、今日は何のイベントもやっていない休日。それも無事に内定を貰って大学の卒業を控えている穏やかな時期ともあれば、綾花でなくともしみじみ高校生活を振り返ってしまうだろう。
(……大人に、なれてますよね?)
名も知らぬ後輩たちが部活動を勤しむ声を聞きながら、まばらに停められた自転車を眺める。
在学時代、猫鳴館から自転車通学だった綾花にとっては、ここも小さな思い出が残る大切な場所のひとつ。自転車の影に隠れたにゃんこ探しをした無邪気な休み時間もあれば、まだ接点の少なかった珪から夜道に気をつけるよう言われたことが嬉しくて反芻していた放課後もあり、思い返すだけで心が温かくなるようだ。
普通の学生生活から、ちょっと不思議な学友が引き起こす珍事まで、本当に色々あった3年間。子供っぽかった自分がどれだけ成長したのかはわからないけれど、変わらないことも確かにあって――少しだけ変えたいと思う未来も、あって。
(まだ仕事が決まっただけじゃ……自立とは、言いにくいかも)
猫を探すように木陰を覗いて、次は南校舎の生徒用玄関へ向かう。自分が使っていた靴箱を探し、もうここを使うことはないんだなと卒業を実感して、4年という月日の早さを考えながら廊下を覗き込んだ。
ここから見える1年生の教室に通っていた頃、綾花が恋をしたのは司書教諭の珪。想いを零しすぎないようにアピールする中で、彼の恋愛へ後ろ向きな部分を知り、ただ卒業を待って告白するのではダメだと奮闘した。
ずっと珪に振り向いてくれることばかり考えていた日々から、彼の心を解き放つように頑張れるようになったとき、恋にも覚悟がないといけないと気付いたとき……綾花自身も幼いなりに愛へ一歩踏み出せた気がする。
だから、ここで過ごした長くて焦れったかった3年間は、2人にとっては互いの歩幅を合わせるためにも大切な日々だった。大人になるためにも、前を向くためにも、急ぎ足では上手くいかなかっただろう。
(それなら……次は、どれくらい必要になるのかな)
高校を卒業して付き合ったということは、大学を卒業する頃には4年の交際をしていることになる。早い段階で互いに両親へ挨拶しているし、彼の誠実さという意味では特別不安や不満もない。
ただどうしても――必要だった3年間と違って、次のステップには漠然とした不安があるのも事実だ。明確に交際を何年したからと答えがあるものでもなく、人生の区切りとなるタイミングはそう多くない。
もうすぐ大学を卒業する……でも、それだけだ。ようやく彼と同じ『社会人』になって自立ができるだけで、大人として半人前なことは変わりない。何かを匂わせ急かすことなんてできないし、自分からなんてもってのほか。そうはわかっていても、綾花はペアリングを眺めて息を落とす。
――桜の散る頃、かな。
――5月には、必ず。
堪えきれなくなった想いの言葉を届けたいときは、緩やかに待っているように言われた。
やっと恋人になれたときでさえ、恋人証明書を出す日は『誓える日』まで少し先延ばしにされて。
(考えてくれて……ますよね?)
そっとペアリングを撫で、大人になることを待っていてくれているんだと思うことにする。ならば少しだけ、社会人になるんだということは主張しておこうか。
いつまでも守られてばかりもいられない。大人な笑みを浮かべて告げるんだと画策しながら、綾花は来客用玄関のある北校舎を目指した。
その頃の図書準備室では、何食わぬ顔で珪が事務仕事をしていた。
他校から問い合わせのあった本を貸し出せるように手続きし、新年度に合わせた発注もし、つつがなく業務をこなしている。なんだったら、急ぎじゃない雑務にまで着手しているなんて、本人は気付いていないようだ。
休日の図書室開放日。いくら利用者が少ないとはいえ勝手に時間変更はできないし、まして恋人が来るからと早じまいしてデートになど繰り出せるわけがない。普通は。
(でも、普通ではなくなったら……特別な意味を持つ、重大な私用ができたら仕方ないかな)
準備はしている。でも、本当に今日なのかとは迷っている。
もっと色々あるだろうと、場所だってタイミングだって考えて、その度に切なく笑う綾花を思い出した。
慎重であることと臆病なことは違う。いつだって彼女を理由にして自分を守っていたのではないかと振り返って、珪は深く息を吐く。
準備が準備で終わらぬように願って――珪は図書室の扉が開くのを待った。
リクエストありがとうございます、浅野悠希です。
こちらは、綾辻 綾花さんのプライベートが満載なシナリオです。
このシナリオでは『時の流れ』が設定されています。 ※プロフなど各種設定にご注意ください。
■年月日 :寝子暦1376年2月頃~3月末日寝子高が休日で図書室の開放日があるのは、浅野の寝子島カレンダーでは下記の通り。
2月:4日(日)、11日(日)、12日(月/振り替え休日)、18日(日)、25日(日)
3月:4日(日)、11日(日)、18日(日)、24日(土/春休み開始)~
※あくまでこのカレンダーは目安です。綾辻さんの思う世界線のカレンダーをご使用ください。
その他、スキー合宿や期末テストなどに合わせて、ほぼ休日と同様に扱える平日もありますので、記念日にしたい日があればお知らせください。
■気象予報:今週のお天気は晴れ。春らしく少し霞がかるものの、厳しい寒さは感じなさそうです。
概要 - 思い出を堪能して、新たな思い出を重ねましょう! というシナリオです。 -
この日、綾辻さんは早川さんへご連絡の上で寝子高を訪れています。真っ直ぐ図書室へ向かうもよし、寄り道をするもよし。2人で思い出を巡るのも良いかもしれませんね!
もし何らかの形で『特別な日』になった場合は、寝子島内であれば、舞台を移動させることも可能です。
ガイドに縛られず、申請いただいた内容も含めて自由にアクションしていただけますので、ご安心くださいね。
NPCとXキャラ - 申請時に指定頂いたシナリオは再送不要です -
今回登場とお伺いしてますのは、NPC:早川 珪
綾辻さんの恋人です。綾辻さんの高校卒業から、約4年の交際で関係を深めてきました。
彼に覚悟はある様子ですが、もし綾辻さんが期待しているのがわかれば、プレッシャーになってしまうかも。
かといって、まったく気にされていないとそれはそれで踏ん切れず、難しい緊張の中にいるようです。
とはいえ彼の準備は整っています。それくらいしっかり綾辻さんのことを考えていますのでPLさんは安心してぶつかって大丈夫です。
綾辻さんは、いつものごとく最後の一押しがいることになるかもしれませんね……?
※ 独自ルール ※ - こちらは他MSへ対応を迫る行為はお控え下さい -
浅野が担当するシナリオでは、 様々な短縮表記が可能 です。参照シナリオがある方、Xキャラと参加したい方、アイテムやイラストを参照してほしいなどありましたら、
『独自ルール』をご参考に短縮表記をされると、アクションの圧縮に繋がります!
※気になる方は、ぜひお気軽に利用してくださいね。
※今後は、基本的に参照シナリオを提示されない限りは、同じ世界線として扱いません。
寝子暦1372年の卒業式以前のシナリオは、問題なく『過去』として参照が可能なため、引き続き参照します。
それ以後は自主申告がないと、浅野側では別の世界線なのか同一世界線なのかを判別することができません。
そのため、 物語の隙間を埋めるような描写 を希望される際は『必ず』参照シナリオをご提示ください。
※過去参加して頂いた浅野のシナリオに関しても、記憶違いを避けるためにご協力頂けると助かります!
(そのため、1度お知らせ頂いた内容であっても、必要な場合は都度お知らせ願います)
※必須じゃないけど知っておいて欲しいなという事柄については、 少しであれば 確認させて頂きます。
※但し、こちらは全てに目を通すと確約をするものではなく、あくまで余力があればとなります。
それでは、よい1日をお過ごし下さいね!