じわじわと肌を焼く、夏特有のけだるい暑さを感じさせる7月初旬。
心なしか足元の影も普段より濃さを増しているような、そんな快晴の日曜日に、
早坂 恩は旧市街の駅前に立っていました。
電車の入ってくる音がして、にわかに改札口がにぎやかになります。
あわただしい人波が通り過ぎたあと、ゆっくりとした足取りで現われたのは
鴻上 彰尋でした。
「悪い。待たせたか?」
恩を見つけた彰尋は、急ぎ改札機を抜けると小走りに駆け寄ります。
待ち合わせ時刻にはまだ余裕があるのに。
そんな彼にふふっと笑い。
「ううん。私も今着いたとこだから。
今日も暑いわねぇ。喉渇いてない? まだ時間に余裕あるし、どこか適当なお店に入って涼んでく?」
「いや。大丈夫。ありがとう」
「そう。
じゃあ行きましょうか」
恩はくるっと身を翻すと、先に立って商店街へと続くゆるやかな坂道へと歩き出しました。
2人が向かっているのは商店街入り口から1本路地を入った先にある雑貨店『memoria』です。
七夜 あおいへの誕生プレゼントを何にするか悩んでいるとの相談に乗った恩が、お勧めしてくれた雑貨店でした。
「まるで魔女のお店みたいに、ちょっと不思議な雰囲気のお店でね。品ぞろえも作家の1点物が多いのよ。あと、すっっっごくブサイクな黒猫がマスコットで店番してるわ」
こんなにもあたたかくて愛情のこもった「ブサイク」を、彰尋は聞いたことがありませんでした。
楽しそうに話す恩の姿に、彰尋もだんだんとその店に興味が湧いてきます。
「1点物か。なんだか高そうだな」
あまり高すぎる物は、受け取るあおいも気にするかもしれない、と彰尋がためらうと、恩は笑顔で人差し指を振りました。
「旧市街にあるお店よ。そんなに高い物は置いてないわ。
それに、その店の一番の特徴は、奥の部屋がワークルームになってて、自分で作ることもできるのよ」
「自作?」
「ええ」
思いつきで口にした言葉でしたが、彰尋が興味を見せたことで、恩はさらに詳しく説明を重ねます。
「それだったら道具と場所のレンタル料で済むし、いろんな種類の材料がそろってるから足りない材料も必要な分だけ購入できてお得よね。
初めてでも、わからないところや難しいところはお店の人に教わることもできるし」
聞いているうちにだんだんと、彰尋も自作のプレゼントを贈りたいと思うようになっていきました。
「確かにそれなら俺でもできそうだ」
「そうよぉ。……それに、世界に1つしかない、自分の手作りアクセをあおいちゃんが身に付けてるの、彰尋ちゃんも見たいでしょ?」
「
べ、別に。そんなことは……」
(あらあら。ウフフ)
彰尋の見せた反応に母性本能を大いにくすぐられた恩は、これはぜひとも見届けなくてはと、当日店への案内を申し出ました。
「いや、それだと悪い――」
「いいの。私もちょうど、夏のアクセでピアスか何か欲しいと思ってたところだったから。それに、そろそろ中山さんの新作が出てるかもしれないわ」
中山、というのはおそらくその店に作品を卸している作家の一人なのでしょう。
恩にも目的があると知った彰尋は気を楽にして、「そうか。じゃあ頼む」と返したのでした。
●雑貨店『memoria』
黒鉄でできた柵に、蔦を模した黒鉄のついた張り出し窓。
そして黒鉄と青銅の電灯が両脇に1つずつ。
『memoria』との店名が打ち出された金属製の吊看板といい、恩の言っていたとおり、一種独特な雰囲気のある雑貨店が、路地の一番奥にはありました。
「はい到着、っと。
こんにちはー」
がららん、とドアチャイムを鳴らして恩がステンドグラスの付いたドアをくぐります。
すると、すぐに「いらっしゃいませ」と女性の声がして、奥から黒いレースのストールを肩にかけた長い髪の女性が現われました。
「予約していた早坂です。少し早めに着いちゃったんですけど、よかったでしょうか?」
「大丈夫、準備はできていますわ。
さあ、奥へどうぞ」
女性に促され、店内を通って奥の部屋へ向かいます。
「彼女がこの店のご主人で、
密架(ひそか)さん」と恩が説明してくれます。
そして奥の部屋にはズボンのポケットに手を突っ込んだ、短く刈り込んだ赤い髪の少年がいて、入ってきた2人に不機嫌そうな顔と視線を向けたあと、ぶっきらぼうにこう言いました。
「作りたいのはイヤリングだったな。レジン、型、それに封入資材の貝殻、星砂、ドライフラワー、ベビーオイル等副素材で必要そうな物も全部そろえておいた。
金属アレルギーがあるか、密架が確認を怠ってたようだから、念のためサージカルステンレスの台座やカンのパーツもひととおり用意してあるから好きな物を使え。
もしデザインイメージが固まってないなら、そこの棚に参考書がある。以上だ」
こんにちは。寺岡志乃です。
ご指名をいただき、ありがとうございました。ご期待に添えますよう、がんばって書かせていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
さて。
今回のシナリオですが、『memoria』のワークルームを用いてアクセサリー作りとなります。
必要な材料は全てそろっています。
また、手伝いがほしい場合は喬がアドバイスをします。(自作のプレゼント品という目的から、手は出しません)
途中で密架が休憩用の飲み物とお菓子を持ってきてくれます。
そして店内では、いろいろな作家さんの品が販売されています。こちらも見学、お買い求めできます。
こちらでは密架がご案内、お相手をします。
ガイド、サンプルアクションはああいった内容になっていますが、お気になさらず自由なアクションをかけてきてください。
あおいさんにぴったりの、すてきなアクセサリーが作れるといいですね!
それではアクションお待ちしております。