知ってる? 幽霊マンションの話、と誰かが言う。
なに、それ。聞いたことない、と誰かが答える。
やっぱり、まだそんなに噂にはなってないんだ。
そう言うと、彼女は人差し指で頬をかきながら苦笑した。
ねえ、どういう話? 誰かが怪訝そうに尋ねた。
えっとね、と少し考えるように俯いてから、静かに話し始めた。
旧市街に、今は誰も住んでいないマンションがある。五階建てで、各階には五号室まで部屋があるという。マンションとしてはそれほど大きくはないだろう。
そのマンションで、最近幽霊騒ぎがあるらしい。
夜になると窓越しに人魂や人影が見えたり、人がいるはずもないのに電気が点いていたりするのだという。毎晩、というわけではないが、目撃の頻度が最近では結構増えているそうだ。
噂を聞きつけ、調子に乗って肝試しをした学生の集団が、何者かに襲われて怪我をして帰ってきたなんて話もちらほらある。
怖いね、と誰かが言う。
怖いよね、と誰かが返す。
そうして噂話は誤解と誇張を孕んだ伝言ゲームで、広まっていった。
「でも、あれは幽霊とは違うと思うんだ」
結城 正義は落ち着いた口調で同居人の
神山 千紘にそう語る。霊感の強い正義には、噂のそれが霊的なものであるかくらいは分かる。
たまたま通りがかった旧市街で見たそれが、霊的な存在であることを正義は否定しない。けれどもそれは、今まで自分に視えていた霊とは少し性質の異なるものであるように、彼には思えて仕方がなかったのだ。
ある種確信を持って言う正義に、千紘はやや疑ってかかるような上ずった声で問いかける。
「じゃあ、あれは何だって言うんだよ」
正義は中空に答えを求めるように見上げながら、考え込む。
「うーん……誰かが変な能力を使ってるとか?」
例えば、そう。もれいびなんてどうだろう。
正義の憶測は、『面白そうだから』というそれだけの理由で、千紘によって広められた。けれども何だか『ありそう』な原因であり、それでいて真実ならば非常に困った問題であるのに違いはなかった。
その憶測を確信に変えたのは、
テオドロス・バルツァの一言であった。
「その憶測は間違いじゃないぜ。あれは、もれいびのいたずらに違いないだろうよ」
噂を統合すると件のもれいびは一人で動いているだろう。噂になっている人魂はろっこんの能力によって生み出されたものであり、少しならばそのもれいびの意思に従って動くことが出来ると思われる。またもれいびと人魂は必ず一緒に動いているわけではなさそうだ。
ともあれまずはマンションの中にいるだろうもれいびを探し出すことからだろう。
迷惑なもれいびの悪戯。少なからず被害の出ている幽霊騒ぎ。
いつまでも放っておくわけには、いかないのだ。
初めまして。夕月と申します。
今回の目的は幽霊騒ぎを解決することです。
グループでの行動を希望される場合はアクション内でGA【グループ名】の記載をお願いします。
◇状況
旧市街の外れにある誰も住んでいない小さなマンション。エントランスなどはなく、各部屋には直接行くことが出来ます。
今はそれほどしっかり管理されていないのか、各部屋の鍵はほとんど開いたままです。
幽霊騒ぎの犯人はマンション内のどこかの部屋に隠れているでしょう。
◇幽霊
どこかの部屋に時たま現れます。そんなに数は多くありません。
パンチなど物理的な攻撃は効果がありませんが、ろっこんの能力を用いればもしかしたら消せるかもしれません。
以上です。ご参加お待ちしております。