「紅葉もそろそろ終わりですかね~」
もみじとイチョウのオーナメントで彩られた店内で、小鳥カフェ&ホテル『TABE=TYA=DAME』の店主、
小鳥遊 風羽は外を眺めた。綺麗に紅葉した木々が見えるが、その下をゆっくり歩く前に葉が落ちそうな気配がする。
「紅葉狩りに行きそびれちゃいましたね~」
「風羽ちゃんは意外にめんどくさがりだからね。お休みの日はだらだらしてるし」
頭の上からボタンインコのぼたもちの声が聞こえてくる。風羽は鳥とキスをすると彼等とテレパシーで話せるのだが、朝起きたらまず店の鳥達とキスをする。その為、鳥と日常会話ができるのだ。
「もみじがりって、なあに?」
壁際に止まっている文鳥が小さく首を傾げる。
「お店に飾っている葉っぱの本物を見に行くことですよ~。そういえば、皆、本物を見たことないんですよね~」
「だって、風羽ちゃん、外に連れてってくれないもんね」
「僕達も外に行ってみたいよー」
鳥達が口々に言う。けれど、その望みを叶えるのは難しいことだ。
「でも、皆は羽がありますから、外に出ると迷子になってしまいます~」
「飛ばないよ!」
「飛ばないよ!」
「猫さんに食べられてしまったり~」
「食べられないよ!」
「食べられないよ!」
「籠に入ってでもいいのなら~」
「入るよ!」
「入るよ!」
「あっ!」
「あっ!」
鳥の中でも籠の好きな子と苦手な子がいて、今喋っているのは苦手な子達の方だった。
「じゃあ、皆で行きましょうか~」
「紅葉狩りに行くんですか? だったら、九夜山に行けば落ち葉で作る本格的な焼き芋イベントをやっているようですよ」
話を聞いていた、アルバイトの森宮 檎郎が近付いてくる。彼の隣には、みかん宇宙人とさくらねこ星人がいた。中の人などいない、ろっこんによって具現化された存在である。暴走さえしなければ、1体だけ出して仲良くできるようになった。みかん宇宙人もさくらねこ星人も、暴走した時の他の同胞達の記憶を持っている。
「焼き芋、食べたいミ!」
「紅葉も見たいに゛ゃ゛!」
「そうですね、じゃあ皆で行きましょうか~」
にこにこして、風羽はポケットに入れたぬいぐるみに話しかける。
「うちの黒姫も連れて行きますよ! 大丈夫です! 鳥さん達を食べないように言っておきますから!」
檎郎はガッツポーズを作る。ちなみに、黒姫というのは飼っている猫のことである。
そんなこんなで、皆で紅葉狩りに行くことになった。
11月の終わりに、九夜山に紅葉を見に行こうというシナリオです。
紅葉の下で焼き芋を食べたり、告白してみたり、展望台から景色を見たりと、秋の一日を楽しみましょう。
ガイドはとある観光客のとある前日譚に過ぎませんので、自由にアクションをかけていただけたらと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。